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「“冷蔵庫に入れておいたから大丈夫”といった認識は、真夏においては特に危険な考えです。なぜなら、細菌は冷蔵庫程度の温度では死なないからです」

【写真あり】8月は特に危険! 食中毒の月別発生数や病原菌別にみた患者数をグラフでチェック

 と、語る宮城大学の金内誠教授。冷蔵庫の「中」設定では、温度は3〜6度とされているものが多いが、その環境でも増える菌も存在するという。

冷蔵庫の温度では食中毒は防げない!

「感染者数も多いカンピロバクター菌ですが、冷凍されることなく市場に出回っている国産鶏肉の多くがこの菌に汚染されているともいわれています。買った後に長時間外に出しておくと、菌は増殖しますし、冷蔵しても菌は死にません。また、生肉から感染する大腸菌や、卵の殻などに付着しがちなサルモネラ菌などは比較的低い温度で発育する雑菌で、環境次第では冷蔵庫内で菌が増える可能性もあります」(金内先生)

 生肉には食中毒菌が付着していることを前提で取り扱ったほうがよさそうだ。調理ずみの惣菜も、冷蔵庫に入れたからといって安心はできない。

「食品は加熱殺菌が重要ですが、加熱をした後でも温かいまま冷蔵庫に入れてしまうと、カレーなどの粘度が高い食品は中心部の温度がなかなか下がらず、温度ムラができるためウェルシュ菌が発生しやすくなります」(金内先生)

 食中毒でクリニックを訪れる人の傾向を総合内科の大河内昌弘先生に伺った。

「生魚や食べた肉に十分、火が通っていなかったことが原因で食中毒になってしまう人が多いですね。コロナの感染対策意識が特出して高まっていますが、食中毒もコロナと同じく、持病を持っている人や、高齢者がかかってしまうと死にもつながる恐ろしい感染症です。嘔吐(おうと)の症状がひどいと誤嚥(ごえん)性肺炎なども引き起こしますし、その後の合併症によって重症化する可能性もあります」(大河内先生)

 潜伏期間もさまざまだという食中毒だが、胃腸風邪などとの見分け方は。

「夏場は特に食べたものや、周りで同じような症状の人がいないかを確認します。同じ嘔吐・下痢でも、胃腸系の風邪と違って食中毒の場合は抗生物質の投与が効果的ですから、少しでもその疑いがあれば医師に相談することをおすすめします」(大河内先生)

 冷蔵庫保存の盲点を意識して、しっかり食中毒対策を!

冷蔵庫で食中毒菌を増やさないために

 外気温が高い真夏は、冷蔵庫の扉の開閉によって庫内の温度も変化する。

「開閉の頻度を少なくし、長時間あけておくことも避けましょう。食材の表面温度が上がると、結露ができ、細菌やカビ菌が発生しやすくなります。保冷用の冷蔵庫カーテンをつけるのもいいと思います」(金内先生)

 また、冷蔵庫用温度計を使ってみるのも手だという。

「冷気が循環していないと霜が付着し、湿気を好む菌が広がる可能性が。食材がぎっしり入ったときに奥側と手前側の温度が異なる場合がありますから、確認してみましょう。食材を探すなどして長時間、冷蔵庫を開けてしまう原因としても冷気の循環を妨げることでも、食材の詰め込みすぎはいろんな意味でマイナスでしかありません。7割程度を心がけましょう」(金内先生)

 また意外に見落としがちなのが野菜室。

「野菜は育てるときに肥料として動物の糞を使っているわけです。動物の糞は、O-157やカンピロバクターなどさまざまな菌を保有しています。野菜室の設定温度は冷蔵庫より高く、野菜に付着した土から雑菌が発生するおそれもあるので注意が必要です。食べるときによく洗うのはもちろん、菌を広げないために新聞や袋に入れて保存をしましょう」(金内先生)

 さらに冷蔵庫に入れておくだけでは安心できない食中毒の原因がもうひとつある。

「近年、アニサキスといった寄生虫による食中毒患者も増えています。流通システムの発達で、冷凍せずに家庭の食卓に並ぶ魚介類も増えました。冷凍すれば寄生虫も菌も死滅するのですが、鮮度はよくても寄生虫が死滅しないまま食べてしまうことに。魚の内臓に寄生していることが多いので、食べるときにはしっかり火を通す、細かく切るなどして十分に気をつけましょう」(大河内先生)

【冷蔵庫NGアクション】
 食中毒予防3原則は、食中毒菌を“つけない、増やさない、やっつける”こと。冷蔵庫では徹底した、つけない、増やさない対策が重要です!

NG1.奥までぎっしり食材を入れている
 さまざまな食材が雑多にギュッと詰め込まれていると、開閉の回数も増え、冷蔵庫を開けたまま食材を探す時間もかかる。また、背面に冷風口が設置されている(メーカーによる)ので、奥まで食材が詰まっていると、冷風がうまく循環せず庫内の温度が上昇し、菌が増える可能性が。
→OK! 食材は手前によせ、7割収納を心がけて

NG2.ドアポケットに卵を入れている
 開閉することによっていちばん温度変化が高いドアポケット。温度変化により殻が結露した場合、殻の“気孔”がふさがり雑菌が増殖してしまうおそれが。さらに、振動によって卵の殻が割れてしまった場合、微量でも殻にサルモネラ菌が付着していたら、菌がヒビから内部に入り込み増殖してしまうことも。
→OK! ほかの食品と接触を避けて庫内に収納

NG3.収納グッズを多用する
 冷蔵庫が整理されて便利な収納グッズも、入れっぱなしになってしまうと食べかすや液だれが付着したままとなり菌が繁殖しやすい環境に。
→OK! 収納グッズをまるごと定期的に洗う癖をつけよう

NG4.調味料の液だれ放置
 ドアポケットや庫内の棚板にこびりついたままの液だれは、放置して時間がたつと、雑菌の温床に。ほかの食材に付着して菌を広げる原因にも。
→OK! 庫内は隅々まで清潔に!

NG5.カレーを鍋ごと保存する
 カレーなど粘度の高い食べ物を大きい入れ物のまま冷蔵庫に入れると中心部が冷めにくい。その間、雑菌が増えやすくなってしまうばかりか、温かいままの鍋の場合は庫内の温度も上がってしまい、ほかの食材にも影響が。
→OK! 保存袋に移し流水などで冷やしたあと、なるべく平らになるよう保存を

菌を“増やさない”コツ

 冷蔵庫内で菌を増やさない、広げないためには清潔に保つことと、7割収納が大前提だ。

 そこで、きれいを持続する習慣を冷蔵庫収納の達人、東いづみさんに聞いた。

「冷蔵庫奥にはモノを入れないこと、定位置を決めることが、きれいで、なおかつ7割収納をかなえる秘訣だと思います。モノが重なると、死角が生まれ、入っていたことを忘れてしまったり、また取り出す時間もかかります。よく使うものは定位置を決めてしまえば買いすぎを防げますし、冷蔵庫の開閉時間も減らせます」(東さん)

 また、掃除も面倒なカゴ類などの収納グッズは、やはり避けたほうがいいとのこと。

「特に入れっぱなしは避けましょう。お惣菜や野菜を入れるタッパーなどは、食材を出したあとに、そのつど洗うので、清潔に使えます。冷蔵庫の中身が少ないと、サッとすぐにふきそうじができますから、清潔な状態がキープしやすくなります」(東さん)

 また、食中毒にかからないためには細菌に打ち勝つ身体づくりも大切になってくる。

「感染型といわれる菌は、身体の中でも増えますが、腸で善玉菌ががんばってくれれば食中毒の症状も軽くなります。ですから、ヨーグルトやオリゴ糖、食物繊維を多くとって腸内環境を整え、免疫力を上げておくことは食中毒予防の観点からいっても有効な対策です。食欲がないときは、ダイレクトに栄養素が吸収でき、オリゴ糖も食物繊維も豊富な甘酒がおすすめです」(金内先生)

気をつけたい! 食中毒菌いろいろ

 食中毒のほとんどが微生物によるもので、その9割を占めている。経年的に見てみると、サルモネラ菌や病原性大腸菌(O-157)などは減少している一方で、肉の生食によるカンピロバクターや、カレー食中毒の原因菌でもあるウェルシュ菌などの患者数が多い傾向に。増殖速度が速い腸炎ビブリオや、真空パック内でも増殖するウェルシュ菌は残り物が入った鍋やお弁当などでも増殖するため、この季節は特に注意が必要です。

《PROFILE》
金内誠さん ◎宮城大学 食産業学群教授。博士(生物環境調節学)。発酵・醸造技術を用いた商品開発および高品質製造に関する研究を行っている。

大河内昌弘さん ◎おおこうち内科クリニック理事長・院長。総合内科専門医として糖尿病、消化器、内分泌代謝などその専門は幅広く、患者の全身を診ることをモットーとする。