西武ベストナインは超豪華。悩みは清原和博の扱い>>

 埼玉西武ライオンズの2軍が本拠地とする西武第二球場が、昨秋から続く改修工事を終え、7月14日には"こけら落とし"となる読売ジャイアンツとのイースタン・リーグ公式戦が行なわれた。


7月14日に試合を行なった、西武の松井稼頭央2軍監督と、巨人の阿部慎之助2軍監督(写真/西武ライオンズ提供)

「CAR3219(カーミニーク)フィールド」として生まれ変わったスタジアムには、立ち見を含め300人が観戦できるスタンドや、LEDディスプレイを使用した大型ビジョンが新たに設けられ、より快適に試合が楽しめるようになった。指揮官として2年目のシーズンを迎えた松井稼頭央2軍監督も、「(球場が)ついに完成したんだと実感が湧きました。立派な施設に生まれ変わり、うれしい気持ちでいっぱいです」と、その喜びを語った。

 今回の改修工事では2軍球場だけではなく、屋根つきのブルペンやサブグラウンドといった練習施設も併せて整備された。より野球に打ち込みやすくなった練習環境は、リーグ3連覇と12年ぶりの日本一を目指す西武にとって大きな追い風になるだろう。

 昨年、パ・リーグ連覇を果たした西武だが、チーム防御率は2年連続リーグワースト(2018年......防御率4.24、2019年......防御率4.35)。この2年間、クライマックスシリーズで涙を飲んできたチームが、さらなる高みを目指すためには投手力の強化が必須と言える。

 松井監督は、「今の2軍にも魅力的な投手が多い。ただ、長いイニングを投げられるようにするには、きちんと段階を踏んでいかないといけません。さまざまな経験を積んでもらって、しっかり主力として活躍できるような土台作りをしていきたいです」と若手投手たちに期待を寄せた。

 一方の野手陣は、昨年までに4度の最多安打のタイトルを獲得した秋山翔吾が、メジャーリーグのシンシナティ・レッズに移籍。その穴埋めが、今シーズンの最優先課題でもある。

「正直、秋山の穴を埋めるのは簡単なことではありません。チームとしては厳しい状況かもしれませんが、若手選手にとってはまたとないチャンスでもあります。秋山と比べるのではなく、『新しいライオンズ』を作っていくつもりで頑張ってほしいです」

 そう若手選手の飛躍に期待を寄せる松井監督に、特に注目している外野手について尋ねると、「監督としては、ひとりでも多くの選手に活躍してほしい。みんなに期待しているし、誰と特定はできません」としながらも、主にファームの3番を任されている高木渉に話が及ぶと、その魅力を語った。


2軍で好調を維持している高木渉 photo by Sankei Visual

 高木は2017年の育成ドラフト1位で入団し、翌年11月に支配下登録。今シーズンはここまで、2軍で23試合に出場し、打率.269、7本塁打と好調を維持している。

「非常に伸びてきている選手です。しっかりとバットが振れていますし、打撃だけではなく守備にも力を入れていて、走攻守がレベルアップしてきていますね。彼は野球に取り組む姿勢や意識がすばらしく、試合に出たいという強い思いを感じます」

「ファームで一緒に過ごした選手が1軍で活躍してくれるのは、僕たちにとっても嬉しい」という松井監督。今シーズンは、打者転向2年目ながらオープン戦で活躍した川越誠司や、7月11日にプロ初本塁打を放った鈴木将平など、2軍で実力をつけた選手たちが1軍でも存在感を放っている。

 スタメンでの出場が増えている高卒4年目の鈴木については、「彼もやはり野球に取り組む姿勢がすばらしい。時間がある時に、自ら室内練習場に来て練習することも多いですし、同年代の若手選手にもいい刺激を与えていると思います」と称賛した。

 一方、オープン戦で活躍したものの、シーズンでは思うような結果が出せずにいる川越に対しては、次のようにエールを贈る。

「オープン戦であれだけのスイングをすれば相手も研究してきます。厳しい配球になるのも当然です。配球などを含めて、より相手のことを知る必要がありますし、今以上に考えながら野球に取り組まないといけない。でも、それは相手に実力を認めてもらえているということ。『打たされる』ような消極的なスイングはせず、どんどん自分らしさを出していってほしいです」

 松井監督が語る「自分らしさ」という言葉に、他球団から恐れられる"山賊打線"の神髄が垣間見える。

「選手の個性を大事にしたいと思っています。型にはめるのではなく、大切なのは体全体を使ってバットを振ること。ボールに当てることを意識しすぎてバットを小さく振るのに慣れてしまうと、そこから大きな振りに変えるのは難しくなる。だからどの選手に対しても、まずはバットを振り切る練習から始めるように伝えています」

 個性を伸ばす松井監督の指導によって、才能を開花させつつある若手選手たち。「川越や鈴木の頑張りが刺激になり、いい競争を生んでいる」と、チームに好循環が生まれているようだ。

 ここ数年、菊池雄星、炭谷銀仁耦、浅村栄斗、秋山翔吾といった主力選手の移籍が相次いだ西武。それでもリーグ連覇を果たすことができたのは、"背中"で語るベテラン選手たちの存在も大きいと松井監督は話す。

「中村(剛也)や栗山(巧)といった選手たちも、試合後に練習を行なうことがあるなど常に向上を目指しています。僕の現役時代もそうでしたが、そういった一流選手の姿を見ることで若手選手も育っていく。レギュラーの選手たちに追いつき、追い越していくためには、必死で練習しないといけないということを、若手選手たちも自然と理解することができているんだと思います」

 西武ファンも球場に足を運び、チームの未来を担う選手たちのプレーを生で見たいところだろうが、「CAR3219(カーミニーク)フィールド」で行なわれる今シーズンの公式戦は無観客での開催が決まった。しかし松井監督のもとで、若獅子たちは大きな成長を遂げるに違いない。

 来年3月には、1軍の本拠地であるメットライフドームも改修工事が完了する予定だ。来シーズン、そこで躍動する新たな力が見られることを楽しみにしている。