イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の新最高指導者アミル・モハメド・アブドル・ラーマン・マウリ・サルビ容疑者。米国務省提供(2020年1月21日入手)。(c)AFP PHOTO /HO/ US State Departments Counter-Terrorism Rewards Program

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【AFP=時事】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の新たな最高指導者、アミル・モハメド・アブドル・ラーマン・マウリ・サルビ(Amir Mohammed Abdul Rahman al-Mawli al-Salbi)容疑者は、「教授」と「破壊者」という相反する名で呼ばれており、極めて残忍だといううわさだ。だが、それ以外の人物像についてはほとんど謎に包まれたままだ。

 ISは昨年10月、前最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者が米軍特殊部隊の急襲作戦によって死亡した後、マウリ容疑者を後継者に指名した。

 米国務省は直ちにマウリ容疑者を「特定国際テロリスト(Specially Designated Global Terrorist)」に指定。同容疑者の拘束につながる情報提供に対して1000万ドル(約10億6000万円)の懸賞金を払うと発表した。

 誰もが同意すると思われるのは、マウリ容疑者が残忍な性格だという点だ。

 仏パリ政治学院(Sciences-Po)の過激派分析専門家ジャンピエール・フィリウ(Jean-Pierre Filiu)氏によると、マウリ容疑者は「(イラクの)少数民族ヤジディ(Yazidi)に対する虐殺、追放、性奴隷化などを通じた原理主義的な粛清作戦で大きな役割を果たしたこと」で、最もよく知られているという。

 マウリ容疑者はおそらく1976年に、イラクのモスル(Mosul)から約70キロ離れたタルアファル(Tal Afar)の町で生まれたとされる。ISの中で高位まで上り詰めた非アラブ系としては珍しい、トルクメン人の家系の出身だ。

 国連(UN)は1月の報告書で、「ISが地方部から全面的な支持を集めることができる最高指導者は、クライシュ(Quraysh)族のハシム家(Hashemite)直系の子孫」であり、民族的出自を考えるとマウリ容疑者は「そうしたより正統な『首長』を見つけるまでの一時的な選択」ではないかと推測した。

 国際シンクタンク「反過激主義プロジェクト(Counter Extremism Project)」によると、マウリ容疑者はサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権時代、イラク軍の将校だったが、2003年の米国によるイラク侵攻とフセイン大統領逮捕の後、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に合流した。

■IS内での信頼獲得が課題

 2004年に米軍に拘束され、イラク南部に米軍が設置していた収容施設キャンプ・ブッカ(Camp Bucca)でバグダディ容疑者と知り合った。

 釈放された後もマウリ容疑者は、2010年にアルカイダのイラク支部の指揮権を握ったバグダディ容疑者と行動を共にし、さらにアルカイダを離脱し「イラクのイスラム国(Islamic State of Iraq、ISI)」を創設する。この組織が後に「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant、ISIL)」や「イラク・シリアのイスラム国(Islamic State in Iraq and Syria、ISIS)」の別称を持つISとなる。

 CEPによると2014年、マウリ容疑者は「アルカイダを離れる前に」バグダディ容疑者をモスルに迎え入れ、「過激派の使命への忠誠と全面的な支援を誓い、ISISが迅速にモスルを掌握できるよう支援を提供した」。

 CEPが作成したプロフィルによると、マウリ容疑者は「すぐにこの反政府組織の幹部の中で自らの地位を確立し、『教授』や『破壊者』といった愛称で呼ばれるようになった」という。

 米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のセス・ジョーンズ(Seth Jones)氏はAFPの取材に対し、「現場では今も彼に対する不満がある。どのような組織運営を行っていくのか、指導者としてどのくらい有能なのか、カリフ制国家の再構築にどの程度成功できるのか、人を鼓舞する力がどれほどあるのか、今も疑問視されている」と述べた。

 さらに、「カリフ制国家の再建に成功し、米軍が撤退し、ISが他国を利用することができれば、出自に対する懸念は減るだろうが、それは長い道のりになるだろう」と続けた。

 ISの勢力は弱まっており、2015年のパリ同時襲撃事件のような大規模攻撃が起こる可能性は今のところ低い。だが、規模や破壊度では劣るが、欧米への象徴的な攻撃が起こる可能性を当局は排除すべきではないと、ジョーンズ氏は警告している。

【翻訳編集】AFPBB News

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