米航空宇宙局(NASA)の火星探査ミッション「マーズ2020」で使用される遠隔操作ローバー(探査車)を描いたイラスト(2020年7月20日入手)。(c)Handout / NASA/JPL-CALTECH / AFP

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【AFP=時事】火星に古代生命が存在したのかどうかの答えは、かつて火星を流れていた水が鍵を握っているとみられているが、火星の地表に残る多くの渓谷は川ではなく、氷河によって削られた跡だとする研究結果が3日、発表された。

 7月中旬以降、アラブ首長国連邦(UAE)、中国、米国が立て続けに火星探査機を打ち上げる中、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に掲載されたカナダと米国の科学者らによる論文は、今や不毛の地である火星がかつては温暖湿潤な気候で豊富に水が存在し、その水によって地表が削られて景観ができたとする定説に疑問を投げ掛けている。

 研究チームは1万か所以上の火星の渓谷について調べ、地球上の氷河の下で融水により削られた水路と比較研究した。論文の筆頭著者であるカナダ・ブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)のアンナ・グラウ・ガロフレ(Anna Grau Galofre)氏は「火星の渓谷が発見されて以降40年間における推定では、かつて火星を流れていた川が侵食し、これらの渓谷ができたとされていた」と指摘する。

 ただ、渓谷の地形は非常に多様性に富んでおり、「多くのプロセスがその形成に寄与していることが示唆される」という。

 研究チームは今回、カナダ北極圏にあるデボン島(Devon Island)の氷河の下にある水路と、火星の渓谷に類似点があることを発見した。デボン島は「地球上の火星」とも評される荒涼とした環境で知られ、米航空宇宙局(NASA)のトレーニングにも使用されている。

 論文によると、火星の渓谷の一部はおよそ38億年前に氷床下の融水によって形成された可能性があり、当時地球は今よりずっと寒冷だったと予測する気候モデリングとも一致するという。

 共著者のマーク・イェリネック(Mark Jellinek)氏は「地表の水による侵食に関する特有のパターンと一致する渓谷ネットワークはごく一部であることを研究結果は示しており、従来の見解とは非常に対照的だ」と述べている。

 またネイチャー・ジオサイエンスは、火星誕生から10億年間の気候について理解することが、生命体が生息可能だったかどうかを判断する上で重要だと指摘している。

 さらに、氷点下の気温が実は古代生物の生命維持に大変好都合だった可能性もあるという。ブリティッシュコロンビア大学は「かつて存在した火星の磁場は数十億年前に消滅しており、氷床は磁場のない状況の日射から保護するシェルターとなっていたと同時に、その下にある水を守り、維持させるのに大きく寄与していたのだろう」と主張している。

【翻訳編集】AFPBB News

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