韓国・大田で開催されたスクリーンゴルフの大会でショットを打つ選手(2020年7月24日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP

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【AFP=時事】大会最終ホールのグリーン上でハ・キウォン(Ha Ki-won)は、慎重にスタンスを取ってアドレスした――。優しく放たれたボールが前に転がり、目の前でカップの縁を回って音を立てながら吸い込まれると、拳を突き上げた。優勝したハは、賞金2000万ウォン(約177万円)の小切手を手に入れた。

 しかし、ボールはカップの中ではなくカーペットの上に置かれたままだ。これは韓国で開催されたプロのスクリーンゴルフ大会。主催者によると、この形のツアーは世界で唯一だという。

 38歳のハにスクリーンゴルフは競技で生きていく道を与えた。17歳で初めてクラブを手にしたハは、韓国プロゴルフ協会(KPGA)のツアーで2部まではたどり着いたが、トーナメントプレーヤーにはなれずじまいだった。

 しかし、スクリーンゴルフではこれまで5勝を記録。2017年からは実際のゴルフの道を諦め、スクリーンゴルフだけに専念してきたハは、「今は巨大スクリーンの前の方が落ち着く」と話す。

 大会では実際のコースと同様、選手は複数のグループに分かれ同時進行でラウンドを消化し、交互にショットを放つ。しかし屋外のコースのように次のライに向かって歩くのではなく、選手は横5.8メートル、縦3メートルのスクリーンの前に立ち、次の一打を打つ。

 床と天井に設置されたセンサーがインパクト後のボールの軌道をたどり、その行き先をバーチャルコース上に投影する。

 国内で1300以上の施設を保有する同国最大のスクリーンゴルフ運営会社のゴルフゾン(GOLFZON)は、2012年にツアーを創設。年間7大会を行い、11月に開かれる最終戦の優勝賞金は1億5000万ウォン(約1300万円)となっている。

 韓国中部・大田(Daejeon)で今月開催された大会には130人が参加し、うち8人はKPGAツアーの1部でプレーするプロ選手だった。

■人気の理由は?

 スクリーンゴルフの人気を後押ししているのはその利用のしやすさだという。

 韓国は女子の世界ランキング上位20位に8人が名を連ねるなど、ゴルフ強豪国として力を誇り、国内では見るスポーツとして定着している。しかし、国土の65パーセントが山地の人口5200万人の韓国では、ゴルフコースに使用される土地は貴重で、クラブ会員の門戸は非常に狭く、コース使用料は高額になる。

 スクリーンゴルフはその受け皿となっている。ゴルフゾンの施設では昨年約6000万ラウンドが行われ、2020年上半期の売り上げは10パーセント増だという。

 ゴルフゾンの代表は、技術の進歩が「本物のゴルフとスクリーンゴルフの差を小さくしている」とし、KPGAツアーの1部でプレーする選手の関心は「上昇傾向にある」と明かした。

 女子プロ選手の関心は男子プロ選手よりも薄いという。韓国では女子の方が男子より金銭面で恵まれ、より賞金が高額な大会が多かったり、より多くのスポンサーを見込めたりする。

 また、スクリーンゴルフの大会のファン自体も増えており、今月の大会は新型コロナウイルスの感染予防のため無観客で行われたが、最大200人が観戦に訪れるという。

 大田の会場には27ものブースが設けられ、臨場感を高めるために特別な効果音を出すスピーカーが設置されている。良いショットには拍手が起き、女性の黄色い声援も上がる。

 バンカーに入った場合は、砂からボールを出す感じを疑似的につくりだすため、選手は次の一打を毛足の長い専用マットから打たなければならない。

 しかし8歳でゴルフを始め、現在KPGAツアーの2部でプレーする24歳のキム・ダフン(Kim Da-hun)は、バーチャルとリアルにはまだ差があると話す。「実際のコースでは手のほんのささいな感覚や風の動きがプレーに影響する。だがここではショットの角度やスピードでほとんどが決まる」

【翻訳編集】AFPBB News

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