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子連れ再婚を経て、しあわせな家庭を手に入れた人もいる。しかし、パートナーの連れ子とうまくいかず、別居や離婚に至ることもある。その場合に問題となるのが、婚姻費用や養育費などだ。

●どんな事情があっても、婚姻費用は支払うべき?

弁護士ドットコムにも、子持ちの女性と結婚したという男性が「婚姻費用(生活費)を払いたくありません」と相談を寄せている。

相談者は、妻の連れ子である息子と折り合いが悪くなり、別居を始めた。相談者によると、息子はお金や物を盗むなど、素行が悪かったという。息子とは養子縁組をしているが、別居後は学費や生活費を支払っていないとのことだ。

妻は相談者に対し、婚姻費用を請求しているという。しかし、相談者は「いかなる理由があったとしても婚姻費用は支払わなければならないのでしょうか」と聞いている。

この相談者の疑問に、鈴木淳也弁護士は、次のように説明する。

「婚姻費用とは、夫婦間で分担する家族の生活費のことをいいます。生活費の支払義務は扶養義務に基づいて生じます。

夫婦・親子間の扶養義務については『生活保持義務』[扶養される人(たとえば子)が扶養する人(たとえば親)と同じ程度の生活を維持できるようにする義務]と呼ばれています。

相談者の場合、配偶者の連れ子とは血のつながりはありませんが、養子縁組を行うと法律上の親子関係が生まれますので、養親として扶養義務が法律上生じることになります。

現在、相談者は配偶者およびその子と別居中ということですが、別居している親は子を監護している親よりも扶養義務が軽減されるということはありません。また、別居中も夫婦間の扶養義務は存在します。

ただし、不倫をして家を出て行った場合のような『有責配偶者』からの婚姻費用の請求については、子の生活費に関わる部分しか認められなくなります。

今回のケースでは、子どもの素行が悪いという事情があります。しかし、有責配偶者からの婚姻費用の請求ではありませんし、妻子に対する婚姻費用の支払義務は免れないでしょう」

●離婚後も養子に養育費を支払い続けないとダメ?

相談者は妻子と縁を切りたいと思っている。しかし、妻と離婚をすれば、養子縁組をした息子との縁も切れるというわけではないようだ。鈴木弁護士は「離婚はあくまでも『配偶者との法的関係』を断つものです」と語る。

「離婚すれば、扶養義務の対象は子どもだけになります。養子との法律上の親子関係をなくすためには『離縁』をおこなう必要があります。離縁をすれば、養育費の支払義務はなくなります」

では、離縁をするためには、どのようにすればよいのだろうか。

「方法としては、(1)協議による場合と(2)裁判所を使う場合の2つがあります。協議がまとまれば、離縁届を役所に提出することで離縁することができます。

一方、協議がまとまらない場合は、離婚の際と同様にまずは調停を申し立てることになります。調停での話し合いがまとまらなければ、離縁訴訟を起こすことになります。

ただし、訴訟で離縁が認められるには、法律上定められた離縁理由が必要です。実務上では、複数定められている理由の中でも『縁組を継続しがたい重大な事由がある』(民法814条1項3号)ことを理由に裁判上の離縁が認められるケースが多いです。

今回のケースでは、離縁の話し合いがまとまればもちろんのこと、裁判までいったとしても養子の素行が悪すぎるということから、離縁が認められる可能性はあるでしょう」

●養子縁組をするとどうなる?注意も必要

実際に子連れ再婚し、よい関係性を築き上げている家族もいる。しかし、今回のケースのようにパートナーの連れ子と関係がうまくいかず、別居や離婚に至ってしまう場合もある。養子縁組を検討するうえで、どのような点に注意すべきだろうか。   「養子縁組をおこなった場合、養子に対する扶養義務が生じます。また、相続の際は養子も法定相続人になります。

良好な関係を築いている間は問題ありませんが、今回のように関係が悪化して離縁することになった場合、話し合いがまとまらない限り、すんなり離縁はできません。そういったことも頭の片隅に入れておいた方がよいでしょう」

【取材協力弁護士】
鈴木 淳也(すずき・じゅんや)弁護士
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。
事務所名:鈴木淳也総合法律事務所
事務所URL:https://law-sj.com/