スマホの普及で人々の生活が大きく変った

 走行中、車内での「ながらスマホ」は厳禁。法改正によって、違反に対する罰則も強化された。一方で、例えば最新のBMWは、スマホをデジタルキーとして使い、乗降車時のロック・アンロックが可能だ。

 こうなってくると、クルマとスマホはこれからどんな関係になっていくのか? なんだかちょっと、分かりにくい印象がある。

 そもそも、スマホとクルマの関係が深まったのは、いつからだろうか? アップルのiPhoneや、グーグルのアンドロイドフォンなど、通称スマートフォンが登場したのが2000年代の半ばだ。日本で、いわゆるガラケーからスマホへの買い替える人が増えたのは2000年代後半から2010年代初頭である。

 2010年代半ばになると、日本や欧米だけではなく、中国、南米、東南アジアなどの経済新興国、さらにはアフリカの経済途上国でも、家庭の固定電話ではなくスマホを持つ人が一気に増加していった。そうしたなかで、世の中ではスマホとクルマを結びつけようという考えが生まれた。きっかけを作ったのは、アップルだった。

ただのインフォテインメントから時代は自動駐車などへ

 2013年に、アップルは年次ミーティングのなかで「iOS イン・ザ・カー」というコンセプトを発表した。iPhoneを、iPodのようにUSBで車載器とつなげると、カーナビなどで使う画面がアップル専用に入れ替わる。カーナビ、SNS、音楽、電話番号ど、スマホ内蔵のデータがそのまま車内で使えるシステムだ。これが、のちの「カープレイ」である。

 アップルの動きに慌てたグーグルは、「アンドロイドオート」を始めた。こうした分野は、インフォメーションとエンターテインメントを融合して、インフォテインメントと呼ばれる。

 自動車メーカー各社はそれまで、インフォテインメントの主流はカーナビで、基本的には最終組立工場のライン装着ではなく、ディーラーオプションとして販売してきた。また、メーカー独自の車内アプリも開発してきた。それが、アップルとグーグルというスマホの二大勢力によって事実上、車載画面を占有される機会が生まれてしまったことに、自動車メーカーは大きな衝撃を受けた。

 とはいえユーザーの立場からすれば、日常生活で使っているパーソナル情報端末機であるスマホの延長上で、車載システムがコントロールできることはありがたいはず。また、日本に比べ組み込み型の車載カーナビの普及が遅れていた欧米では、カープレイとアンドロイドオートは若い世代を中心に一気に普及した。

 こうした流れを受けて、トヨタが新型カローラを皮切りに始めたのが、ディスプレイオーディオだ。一部の日本ユーザーから不評という声があるようだが、世界的には今後、トヨタのディスプレイオーディオ型が各メーカーの主流になりそうだ。

 また、メルセデス・ベンツで量産が始まった自動駐車システムでは、スマホによってクルマを呼び出すなど、スマホがクルマの動きに対するコントローラーになっている。スマホとクルマ、今後ますます関係が深まりそうだ。