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新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな業界に深刻なダメージを与えた。食品業界も無縁ではないが、コロナ禍が逆に追い風なっている企業もある。神戸物産やグリコ、カゴメ、日清食品などだ。

■コロナ禍と経済

アジア開発銀行は5月、新型コロナウイルスによる世界経済の損失が最大で8兆8,000億ドル(約960兆円)に上る可能性があると発表した。4月の試算では損失額は4兆ドル(約440兆円)規模とされていたが、倍以上に推測額が増えた形だ。

多分に漏れず、日本経済に対してもコロナ禍は大きな影響を与え、アジア開発銀行によれば3,200億〜4,900億ドル(約35兆円〜53兆円)の影響が出る可能性があるという。

民間調査会社の東京商工リサーチの調査によれば、負債額1,000万円以上の新型コロナウイルス関連の倒産件数は6月5日時点で219件に上っている。同社が把握できていない件数を含めれば、件数はさらに多いと考えるのが自然だろう。

食品業界においても倒産企業は多く出ており、同調査における6月5日時点の食品製造業の倒産件数は17件となっている。

■コロナ禍が追い風となっている食品業界の企業

食品業界もコロナ禍の影響を受けているが、逆にコロナ禍が追い風となっている企業もある。

新型コロナウイルスの感染拡大は人々の生活スタイルを変えた。在宅勤務の増加によって内食(うちしょく)需要は高まり、免疫力を高めようとする健康志向の人も増加した。このようなことが追い風となり、売上が伸びた企業や株価が上がった企業もあるというわけだ。

● ●神戸物産:内食需要が伸び、売上増につながる

「業務スーパー」を全国展開している神戸物産の2020年4月度の売上高は、前年同月比34.8%増の331億5,900万円だった。今年上期を単独でみると、同社の売上高の伸びは1月から顕著だったが、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した3月以降の売上は、特に伸びが著しい。

低価格で食材を販売する業務スーパーで買い物をする客の中には、居酒屋やレストランの業者もいるが、なるべく食費を抑えようという思いで来店する一般消費者も多い。特にコロナ禍により収入減となった家庭にとって、業務スーパーは強い味方となった。

4月度の売上増について、神戸物産も内食需要が伸びたことを理由の一つに挙げており、まさに同社はコロナ禍が追い風になった企業の1社であると言える。

● ●グリコ:「巣ごもり需要」の高まりが追い風に

菓子大手の江崎グリコの株価が5月12日に急騰し、年初来高値をつけた。

コロナウイルスの影響でいま多くの上場企業が今年度の業績予想を下方修正しているが、江崎グリコはこの日の前日の決算発表において、2020年通期決算(2020年1〜12月)の業績予想を前回発表のまま据え置いた。このことで、株式投資家からの期待感が高まった。

神戸物産と状況は似ており、「巣ごもり需要」の高まりが、江崎グリコの売上を今後支えていくとみられる。緊急事態宣言は全国で解除されたものの、多くの人がケーキ店やレストランへの来店を控え気味だ。しかし、消費者の「甘い物」など「食」への欲求は無くなるわけではない。

● ●カゴメ:野菜ジュースの売上が好調

大手食品メーカーのカゴメは4月末、2020年1〜3月期の連結決算を発表した。売上収益が前年同期比2.6%増の408億6,300万円となり、純利益は実に42%増の16億1,100万円だ。健康志向の高まりによって、野菜ジュースの売上が増えたことなどが業績の伸びを支えたと思われる。自宅での食事で使うケチャップなどの加工食品の販売も、着実に売上に貢献した。

新型コロナウイルスの感染ウイルスの感染症対策としては、自身が健康で免疫力が高い状態を維持することも挙げられる。これらのことがカゴメには追い風となった。

● ●日清食品ホールディングス:カップ麺の販売が好調

外出しなくても手軽に食べることができ、しかも保存がきく…、そのような食品の代表格と言えば「カップ麺」だ。

カップ麺の販売で大手の日清食品ホールディングスの2020年3月期の通期決算(2019年4月〜2020年3月)は、最終四半期(1〜3月)にカップ麺の販売が好調だったこともあり、最終利益は過去最高の293億1,600万円となった。国内のほか、海外でもカップ麺の売上が好調だったという。

来年3月までを決算期とする今年度の業績は、売上・営業利益・純利益ともに前期比で増加すると予想しており、強気だ。

■業界内で明暗、飲食業界でも

もちろん、食品業界の全ての企業がこのような状況にあるわけではなく、明暗が分かれている形だ。飲食業界でも、デリバリーやテイクアウトで好調な企業もある一方、居酒屋などは大ダメージを受けている。新型コロナウイルスよる予断を許さない状況はまだまだ続くが、業績が厳しい企業も国の支援制度などを最大限活用し、何とかいまを耐え抜いてほしい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)