走行距離は目安程度に、タイヤの状態と経過年数が重要

 皆さんの愛車のタイヤは、いつから履いているものですか? 新車の時からずっと履きっぱなしという人や、いつからだか思い出せないという人は、次のことをチェックしてみてください。

 まずタイヤの溝の深さは、1.6mm以上ありますか? 新品タイヤの溝は約8mm。それが浅くなってくると、スリップしたり反応が遅れたりする可能性が高くなり、危険です。また、溝が1.6mm以下になるとタイヤにはスリップサインというものが現れて、交換時期を教えてくれています。タイヤの側面に三角のマークがあって、それがさす場所のタイヤ表面にスリップサインがありますよという意味です。1.6mm以下のタイヤで走行することは道路交通法違反にもなりますので、注意が必要です。

 次に、タイヤはゴムでできているため、経年や使用状況によって劣化します。ひび割れや傷、白っぽくなっているなど、変わったところはありませんか? ひび割れや傷があった場合には、すみやかに交換しましょう。またタイヤには消費期限があって、メーカーは4〜5年を推奨しています。スタッドレスタイヤの場合は3年です。それは履き始めてから4〜5年ではなくて、製造年から数えるもの。製造年はタイヤに4ケタの数字で刻印されています。最初の2ケタが週、次の2ケタが年で、例えば「1120」なら、2020年の11週(3月上旬ころ)に製造されたタイヤだとわかります。これは購入する時にもチェックするべき。激安価格で販売されているタイヤは、この製造年が古い場合もあるからです。

 いかがでしょうか。皆さんのタイヤはまだ使用可能なタイヤでしたか? 一部では走行距離をタイヤ交換の目安とする場合もあるようですが、よく乗る人とたまにしか乗らない人、高速をよく走る人や降雪地域などの走行環境などによってもタイヤの劣化状態は変わってきますので、あくまで走行距離は目安の1つとして、上記のようなタイヤの状態と経過年数をしっかり見てほしいと思います。ただ、走行距離が3万kmを超えるとタイヤの状態は悪くなりやすいので、3万kmあたりになったら「そろそろかな」と気にしてあげるといいでしょう。

クルマや用途にあったサイズ、性能のタイヤを選ぶべし!

 さて、今度はタイヤを交換する時に重視すべきポイントです。タイヤにはたくさんの種類があって、よくわからないですよね。ビギナーさんなら、新車の時に履いていたタイヤと同じものに履き替えるのが間違いないのですが、それらの多くは価格が高めなので、もう少しリーズナブルに抑えたいなと思うかもしれません。そんな時に最低限、気をつけたいことは、タイヤの性能を落とさないことでしょう。私たちがいちばん怖いのは、事故。それを防ぐには、ブレーキで止まる性能と、滑りにくい性能がしっかり備わることが重要ですよね。とくに雨の日の性能は気になるところだと思います。そのためにチェックして欲しいのが、夏用タイヤに貼られている「ラベリング制度」です。

 これはもともと低燃費タイヤを見分けるためのものですが、そこに表示されている「ウエットグリップ性能」は雨天時の道路で停止する性能を評価したもので、a〜dまで4段階に分けられています。dだからと言って悪いタイヤということはありませんが、やっぱりaかbの評価のタイヤは安心感がありますよね。またもう1つ「転がり抵抗係数」の評価もAAA〜Cまであり、これがA以上で、かつウエットグリップ性能がa〜dに入っているタイヤは低燃費タイヤとして認められ、履き替えると燃費アップも期待できます。

 次に、タイヤの種類でチェックしたいのが、自分のクルマや用途に合うかどうかです。ここでは夏用タイヤに絞りますが、ここ数年でとくに増えているのが「ミニバン専用」「SUV専用」「軽自動車専用」といった、カテゴリーに特化したタイヤたちです。これらはやはり、それぞれのクルマに必要な性能を突き詰めているので、試してみる価値はあると思います。

 たとえばミニバンは背が高く車両重量が重いため、高速道路での横揺れやフラつき、カーブを曲がる時の沈み込みなどが気になるもの。ミニバン専用タイヤはそれらを補うような構造を研究したり、コンパウンドの配合を変えて硬さを工夫したりしています。ただ、多くのタイヤは前後左右どこに装着してもOKなので、摩耗の偏りを抑えるために装着位置を変える「ローテーション」という作業をすることが可能ですが、ミニバン専用タイヤはそれができません。どのタイヤの場合も、お店の販売員さんにそうしたメリット・デメリットを確認してから購入するといいですね。

 そして最後はサイズです。基本的には、サイズはむやみに変えたりせず、購入した時と同じものに履き替えることをオススメします。タイヤの側面に刻印されている「195/55R16」といった文字がそのタイヤのサイズを表しています。「195」はタイヤの幅。「55」はタイヤの厚み。「R」はラジアル構造(現在のタイヤはほとんどがこの構造です)。「16」はインチ数です。インチ数をアップすると見た目はカッコよくなりますが、むやみに変えると、運転した時のフィーリングや乗り心地が変わってしまったり、燃費が悪化してしまう場合があります。専門家に相談したほうがいいでしょう。

 タイヤは、クルマの部品で唯一、道路と接触している部分です。その面積はタイヤ1本でわずかハガキ1枚のサイズだと言われています。その小さな面積で、私たちの命を支えてくれているのです。それだけに、タイヤが劣化したまま走っていたり、ろくに考えもせずに安価なタイヤに交換してしまうと、万が一の時に後悔することになるかもしれません。マニアックな知識などなくても、失敗しないタイヤ選びはできますので、ぜひ安全で快適なカーライフを支えてくれるタイヤを選んでくださいね。