マジョルカでの活躍が認められ、オファーが殺到している久保。(C) Getty Images

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 久保建英の周辺が日増しに騒がしさを増している。昨シーズンのマジョルカに続いて所属するレアル・マドリーは再びレンタルに出す意向を固めており、あまたのクラブが名乗りを上げているのだ。

 マジョルカでは、ビセンテ・モレーノ監督が守備重視のスタイルを採っていた。チームの特徴に合致した戦術だったが、その分、全体が引き気味になり、攻撃の厚みはどうしても不足しがちだった。久保はその中でフィジカルの強さ、献身性、メンタルタフネスといった能力を高めていったが、持ち前の攻撃力を存分に発揮したとは言い難かった。

 その点、現在候補に挙がっているセビージャ、バレンシア、ビジャレアル、ベティスといったチームは、いずれもマジョルカよりもポテンシャルが高く、久保にとってもより攻撃に専念しやすいチームといえる。ただ逆に言えば、定位置争いもそれだけ熾烈になるわけであり、その点も踏まえてわたしが移籍先に推したいのが、ビジャレアルとバレンシアの2クラブだ。
 
 いずれも来シーズン、ビジャレアルがウナイ・エメリ、バレンシアがハビ・ガルシアと新監督の下でリスタートを切る。また前者は4−2−3−1、後者は4−4−2をメインに採用するシステムにこそ違いはあるが、両者とも攻守の比重やポジショニングのバランスを重んじながら戦い方を調整する卓越した戦術家でもある。

 いずれのシステムにおいても久保の主戦場は逆足の右サイドになりそうだが、様々な局面でのプレーを経験することでテクニック、フィジカル、戦術眼といった要素をさらに磨くことができるはずだ。

 久保の理想の移籍先としてレアル・ソシエダやベティスのようなポゼッションを重視するスタイルを採用するチームを挙げる向きが少なくないが、必ずしもその点にこだわる必要はないと考える。むしろ多様な戦い方をするチームのほうが得るところも多いはずなのだ。

 ビジャレアルとバレンシアの二者択一となると、フェラン・トーレスのマンチェスター・シティへの移籍発表が秒読み段階に入り、サイドが手薄になるバレンシアに軍配が上がる。一方、ビジャレアルは、右サイドもこなすエースのジェラール・モレーノ、今シーズン終盤に活躍を見せたサムエル・チュクウェゼらが定位置争いのライバルになるだろう。ただバレンシアの不安材料として、迷走を繰り返しているフロントの存在は無視できない。

 同じスペインのクラブではセルタも面白い。今シーズン、不振を極めたが、本来はとりわけ攻撃陣に実力者が揃う好チーム。しかも久保とポジションとプレースタイルがダブる部分があるブライス・メンデスが今シーズン、伸び悩みを見せた。中盤のラフィーニャ、前線のイアゴ・アスパスと優れたパートナーにも事欠かず、持ち味を発揮できる舞台は整っている。
 スペイン国外のクラブでは、早い段階から興味を示していると伝えられるミランは、ステーファノ・ピオーリ監督の下でチームが生まれ変わり、ヨーロッパリーグに出場するという利点もある。ただスペインとイタリアは文化が似ているといっても住む国と主戦場とするリーグが変わることは事実で、その点をどう評価するかだろう。

 プレースタイルの相性を考えればアヤックスも魅力的なオプションだ。攻撃的なサッカーは伝統として根付いており、さらに攻撃の要だったハキム・ジイェフがチェルシーに移籍し、久保は格好の後釜になりうる。ただエールディビジの競争力はラ・リーガやセリエAと比べて見劣りし、その点がこの19歳の成長を考慮するうえで小さくないハンデになる。
 
 ラ・リーガでは他にレアル・ソシエダ、セビージャ、ベティスといったクラブが候補に挙がっている。ベティスにはこちらも新監督のマヌエル・ペジェグリーニが強く獲得をプッシュしていると伝えられているが、ナビル・フェキルの存在が良くも悪くもチーム戦術を左右しており、久保の活躍の幅を狭めてしまうかもしれないのがマイナス材料。レアル・ソシエダとセビージャはベティス以上にポジション争いが熾烈だ。

 いずれにせよ、マドリーが重要視すべきは、出場機会を確保できるかどうかと能力を発揮できる環境が整っているかどうかの2点。ここまで争奪戦が過熱しているのは、それだけ市場の評価が急上昇していることの何よりの証だ。

 マジョルカがそうだったように、久保がプロのフットボーラーとして次なるステップを踏むことができるチームを選ぶのを期待したい。

文●アドリアン・ブランコ(戦術アナリスト)
翻訳●下村正幸

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