新たな”財源”を発掘して…

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カメラは増加、制限速度も引き下げ

 文在寅政権が発足してから、交通違反が増加したと複数の韓国マスコミが報じた。文政権発足前の2016年に800万件余だった速度違反の摘発数は、17年に1200万件弱に急増。その後も増え続けている。長引く景気の低迷で、倒産や廃業が相次ぎ、失業者も増加した。結果として国の税収が減り、その穴を埋めるために交通違反の取り締まりを強化しているようなのだ。

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 実際、速度違反の反則金累計は、2016年は3775億ウォン(1ウォン=0.088円)だった。それが文在寅大統領が誕生した17年は5334億ウォンと、1年で41%も増加したのだ。

 むろん全体の反則金も増加傾向にある。2016年まで年間5000億ウォン台で推移していたが、17年は8000億ウォン台に急騰。18年、19年と右肩上がりで、今年は9000億ウォンに達すると見込まれている。

新たな”財源”を発掘して…

 来年には「交通反則金1兆ウォン時代」に突入しそうな勢いなのだ。

 交通取り締りカメラは、文政権が発足した17年は7000台ほど。それが18年には約8000台、19年は9000台弱とハイペースで増加。交通警察が現場で摘発した速度違反も、18年の22万件から19年は24万件に達している。

 カメラの増加に加えて、今年1月には制限速度の引き下げにも着手した。市街地の主要道路は、制限速度が時速60キロから50キロになり、中央線がない道路は30キロに。スクールゾーンも時速30キロに引き下げたが、歩道がない道路は大統領就任パレード並みの時速20キロ以下へ。スクールゾーンを通過する車両には笑顔で手を振らなければならない、冗談抜きで。

制限速度を変更中

違法駐車の反則金は一定期間内に払うと早期割引が適用

 主要道路で自動車事故が起こると、すぐにレッカー車が到着する。韓国は交通事故が茶飯事で、事故車を牽引するレッカー車は主要道路の随所で事故が起きるのを待ち構えている。日本では事故が起きたら安全に留意しながら交通に支障がない位置に移動するが、韓国はその場にとどまることが義務付けられている。渋滞が発生する事故現場は目に留まりやすく、レッカー車は通報しなくてもやってくる。

警察は違法駐車を取り締まらない

 レッカー車の運転手は事故状況を見て自走できるとわかったら待機場所に戻り、事故車が自走できないと判断したら、検証が終わるまで事故現場近くで待ち続ける。

 レッカー車に続いて到着するのは保険会社。韓国の自動車保険はサムスン火災が50〜60%のシェアをもっており、事故の当事者双方がサムスン火災の自動車保険加入者というケースは珍しくない。

 過失割合に相当する修理費は賠償保険が充てられ、相手の過失を超過する修理費は車両保険で担保される。双方がサムスン火災に加入しているケースだと、保険金の支払窓口が同じになるため検証は速やかに終了する。

 人身事故は、後から到着する警察を待つが、物損事故は警察を待たずに解散する。

事故が多いのは免許証の有効期限10年にも関係が

 日本は保険金を支払う都度、事故証明が必要で、物損事故でも警察に届けるが、韓国は警察が物損事故にまで関与すると仕事は膨大になりすぎて、人員を増やさなければならない。自動車同士の物損事故は警察が関与する前に決着するケースが一般的なのだ。

 警察が取り締まる違反項目に駐車違反はない。違法駐車の取り締まりは道路を管理する自治体の職掌である。パトロール中の警察車両が違法駐車を発見したらマイクで移動を呼びかけることはあっても取り締まることはない。

免許証の有効期限は10年、更新時講習などは行われない

 未納はないのだろうか。軍用車両は反則金の未納率が87%、1億7200万ウォンに達するが、一般車両の未納はさほど多くはないらしい。違反した運転者が特定できないとき、警察や自治体は車両の所有者に反則金を請求する。特に運転者の特定が難しい違法駐車は、はじめから所有者に反則金を請求する。リース会社やレンタカー会社は、毎月送付される反則金の請求書に悩まされている。

更新時講習は行われない

 違法駐車の反則金は一定期間内に払うと早期割引が適用され、さらに罰則も免除される。早割期限を過ぎると規定の金額になり、罰則も付加される。さらに放置すると反則金は増えていく。事故を防止するというより、税収外収益の確保に力点が置かれている。

 交通事故や違反が多い最大の要因に免許制度がある。はじめて免許を取得する人は自動車学校で学んだあと、運転免許試験場に出向いて受験する。ここまでは日本と変わらない。

 しかし、免許証の有効期限は10年と長く、また更新時講習などは行われない。免許取得後に交通法規が改正になっても知る機会はない。

 さらに留学などの海外居住経験者や外国人など、海外で運転免許を取得した人は無試験で免許を取得できるが、韓国の交通法規を学ぶ機会はまったくない。

 更新時講習はないが、道路交通法はたびたび改正されており、免許取得から時間が経った運転者のルールはまさに十人十色である。その陥穽を突いて、最新交通ルールを盾として、取り締まりに躍起になっているのが文政権というわけだ。

スピード違反と信号違反についで多い違反はUターンと車線変更

 スピード違反と信号違反についで多い違反はUターンと車線変更だ。

 大通りから小さい路地へは左折侵入ができない交差点が多く、左折車両は交差点を通り過ぎて、Uターンレーンがある交差点から戻ることになる。

 先頭の車両から順に転回するのが基本だが、実際はレーンの先頭車がUターンを開始すると各車両が一斉に転回を開始する。一度で回りきれずに、バックをする車両もある。すべての車が無秩序に転回するのだから、事故が起きるのは当然だ。

 交差点の車線変更における違反は道路表示に起因する。日本の道路は、どの車線がどの方向に向かうためのものかが頭上の標識に書いてあるので、運転者は早い段階から目的地に合わせて車線を選ぶ。

 韓国の表示は道路上に書かれてあり、どの車線がどの方向に向かうためのものか、交差点に進入するまでわからない。交差点に入って車線が違うことを知った運転手は強引な割り込みを試みる。

 渋滞によるストレスも事故を誘発する。韓国はカーナビが発達しており、なかでもアイナビというブランドの人気が高い。すべてのアイナビ利用者はナビゲーションに従って同じ道路に集中し、渋滞が多発する。渋滞のストレスを抱えた運転手が強引に割り込み、事故につながる。

 韓国の自動車交通は戦後、米国に倣って右側通行を採用した後、60年代以降は日本を指標としてきた。自動車産業や交通法規は日本を参考にし、多くは日本を模倣したが、一般車両のナンバープレートを日本とは真逆の緑地に白文字にするなど、一部は日本と異なるルールを採用した。

 安全についても日本式を避けたということになるだろうか。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月30日 掲載