パターンは豊富で「安倍謝罪像」は”コラボ型”に属する

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最初に作られたのは2011年12月

 韓国江原道平昌にある民間植物園が一躍”時の場所”となった。安倍晋三首相を象徴する人物が慰安婦少女像の前でひざまずき、頭を下げて謝罪する……いわゆる「安倍謝罪像」が8月の除幕を待つというニュースが流れたからだ。韓国で最初に慰安婦像が作られてから今年で9年、国内外全てを含めると230を超す慰安婦像が存在するという。日本政府の要請を無視し、”量産”される像。様々なモチーフを得て中には伊藤博文を暗殺して韓国では義士扱いの安重根とのコラボ型まで存在する。変形し、世界に拡散される実態をリポート。

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【写真】各地の慰安婦像…

 7月25日、韓国メディアは韓国自生植物園に設置されたという「安倍謝罪像」除幕の知らせを伝えた。タイトルは「永遠の贖罪」だ。

パターンは豊富で「安倍謝罪像」は”コラボ型”に属する

 私費を投じてこの造形物を作った金昌烈(キム・チャンリョル)韓国自生植物園の園長は当初、「贖罪を知らない日本が作品とともに頭を下げて贖罪して初めて、私たちが許しを考えられるということを形象化した造形物」とし、「安倍首相は、植民支配と慰安婦問題に対する謝罪を回避したという正反対行動をしていることをアピールし、反省を求める作品」と取材に回答していた。

 しかし論争が起こると「植物園の造形物で政治的目的はない」「安倍首相でない男性の姿を形象化したもの」と”翻意”。除幕式開催を取り消したのだった。

 慰安婦像が初めて建てられたのは2011年12月。正義記憶連帯(旧・韓国挺身隊問題対策協議会)が反日デモ「水曜集会」1000回を記念し、ソウル鍾路区の日本大使館前に設置した。

大賢文化公園のものは蝶のモチーフで

 この慰安婦像は金運成・金曙ギョン(キムウンソン・キムソギョン)の作家夫婦が製作(現在2人は正義連の役員)。チマチョゴリを着て短いおかっぱ頭の少女が、手を握り椅子に座った姿で日本大使館を見つめている。この高さ約130センチほどの慰安婦像は、日本でもっとも有名なものだろう。

蝶・鳥・国旗など変形バージョン

 その後、少女像設立のための国民募金運動が起こり、釜山の日本総領事館をはじめ、全国と米国各地、カナダ、オーストラリア、中国など、海外にも少女像が設置されていく。

慶尚南道昌原のものは平和の鳥と共に

 この3月に明らかになった「平和の碑国内建立現況」によると、韓国に少女像は131体、日本大使館前の少女像と同じ姿の少女像は67体だ。残りの少女像64体は、それぞれ異なる顔、身振り、手振りをしている。対外的に公開されているわけではない学校の中などまで含めれば230以上とも言われる。

 2017年にKBSが公開した「少女像地図」では、全国に平和の少女像が67カ所と集計されている。その後3年間で約2倍以上増えたことになる(海外も含めればそれ以上)。

 少女像に最も多く使われるモチーフは蝶。ソウル西大門区の梨花女子大学・大賢文化公園の少女像は背中に青い蝶の羽をつけている。ソウル衿川区・衿川区役所広場の少女像は、手のひらや肩、脇腹に蝶々がつく。

サンフランシスコの像は3人プラス1人と凝っている

 鳥と太極旗(韓国の国旗)を組み入れたところもある。ソウルにある戦争と女性人権博物館、九老区の九老駅北部広場、城東区(ソンドング)往十里広場の少女像はそれぞれ、鳥と太極旗をつけていた。

 伊藤博文を暗殺した、韓国で抗日の象徴と位置づけられる安重根とともに展示された少女像もある。京畿道富川市の安重根公園に建てられた少女像は、安重根の銅像に向かって後ろ姿を見せているようにも映るスタイルだ。

 分断国家であることを考慮し、南北軍事境界線付近の京畿道坡州市の臨津閣には双子の少女像が設置された。「統一すれば、北朝鮮に駆けつける準備をする」という意味が込められている。

DMZの公園にある坡州臨津閣

 昨年8月14日には、ソウル中心部に実物大3体の少女像と1体の大人の像が設置され、大きな関心を集めた。少女像は、身長160センチの韓国・中国・フィリピンの少女3人が、手を取り合って正面を見つめる姿を形象化している。そしてこの3人に正対するのが大人の慰安婦のシンボル(金学順(キム・ハクスン)という構図だ。

芸術なのか? 果たして民主主義なのか?

 それぞれ作家は異なり、像の持つ意味も異なる。ただ、日本に「謝罪と賠償」を求める信念は一貫して共通している。こういう信念のもとに作られた像は芸術なのか?

 それだけでなく、韓国の市民社会は自発的な募金を通じて少女像建立を推進しており、政界もまた建てられた少女像を保護するための「条例改正」と「特別法改正」などの動きを見せている。日本は少女像の撤去を要求してきたが、韓国社会はこれを受け入れるどころか、少女像建立に積極的な姿勢をとっているわけだ。設置に関して先に法を犯していながら後で法・条例を改正させる力技……これが果たして民主主義なのだろうか?

 かねて、日本政府は韓国政府に対し、在韓日本大使館前の少女像の撤去を要請していた。「大使館の保護」などを規定したウィーン条約22条2項を引用し「国家は外国公館の安寧を乱すか、品位の損傷を防止するため適切な措置を取らなければならない」と強調したのだ。

 安倍首相はまた、「2015年、朴槿恵大統領との間で交わした慰安婦問題に関する最終的かつ不可逆的な合意について、日韓両国が互いに確認した」として、「釜山とソウルの慰安婦少女像を撤去しなければならない」ことを明確に示している。

 このような日本政府の継続的な抗議にもかかわらず、それを軽視して嘲笑うかのように、韓国では従来の少女像だけでなく、変種した姿の少女像が随所で確認されている。

 菅義偉官房長官も7月28日、論議を呼んだ「安倍首相の謝罪像」について、「まず事実かどうかは確認していないが、そういうことは国際儀礼上許されないと思う」と述べ、「事実なら、韓日関係に決定的な影響を及ぼすことになるだろう」と強調した。

神格化され、信仰を生み出した

 日本での少女像撤去の声が高まり、撤去の動きがある度に、韓国では改めて、「謝罪と賠償」を要求する声が大きくなる。少女像建立のための資金を集め、関連製品を販売するなど、少女像を自発的に全国へ広げていくのだ。

 少女像を神格化し、国内だけでは飽き足らず、海外各地にまで広げてきた。その際には、像に蝶、花、鳩、太極旗のほか、さまざまなモチーフを取り込んで、より多くの注目を集めようとしたのだった。

 このような動きは、韓国社会において少女像に対する一種の「信仰」を生み出し、外交的欠礼または日韓関係の悪化を触発する危険な要素を生じさせたのは間違いない。

「少女像撤去」を主張する安倍首相自らを登場させ、慰安婦少女像の前にひざまずいて謝罪させたのも、「信者」からすれば自然な成り行きだったのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月30日 掲載