7月10日から上限5000人の観客で試合を実施してきたJリーグは、8月1日以降、観客をスタジアムの収容人員の半分まで増やして試合を行う予定でいた。約5万人収容の味の素スタジアムなら2万5千人。約6万4千人収容の埼玉スタジアムなら3万2千人。約7万2千人収容の横浜国際日産スタジアムなら3万6千人まで入場可能としていた。

 報じられたのは6月9日。僕は翌日のこの欄で、それは難しいのではないかと直ちに反応した。スタジアム内の問題もさることながら、それ以上に観衆が利用する公共交通機関が密になることを心配した。利用する路線が限られているスタジアムは特に危ない。ラッシュアワーと重なれば3蜜は避けられない。なにより通勤で利用している人の迷惑になると記した。

 その計画を先延ばしにしたJリーグに対して、慎重すぎる判断だと批判する人はほぼいない。大抵の人が当然の判断として受け止めている。読みが甘かったのではないかと追及するつもりはないが、当初の楽観ぶりがいま露わになっている。 

 7月23日に開幕していたはずの東京五輪しかり。本日7月28日は、本来なら大会6日目だった。予報とは異なる冷夏だったのに惜しいことをしたーーと1年延期の判断を残念がる人はいない。1年延期が報じられたのは3月24日だが、森元首相をはじめ開催に前向きになっていた人は当時、かなりいた。1年延期を妥当な判断だとする人は思いのほか少なかった。その事実をいま振り返ると、不思議な気持ちになる。

 1年後の状況がどうなのか。なんとも言えないが、世論調査では、開催すべしより、さらなる延期か中止が望ましい、が多数を占める。学習効果が発揮されていると言うべきか。

 状況を冷静に受け止める人、事態はむしろ悪化するのではないかと予想する人は、Jリーグに対しても楽観的になれずにいるはずだ。

 8月末まで上限5000人は維持されるそうだが、その後はどうなるのか。感染する選手、スタッフがこの先、増える可能性が高いことを踏まえれば、無観客試合に逆戻りするべきだとの声が湧いてもおかしくない。同様に、今シーズンをどこまで消化できるか。先行きを案じる人が多数を占めても不思議はない。

 今季のJリーグは、通常のシーズンではない。格式が失われた状態にあると言っていい。16位以下になっても2部降格はない。優勝チームとアジアチャンピオンズリーグ出場枠を懸けた上位争いを除けば無風だ。極論すれば5位も18位も大差ない。そう割り切ることができる。

 選手の交代枠も5人だ。今季以降を見越した実験的なシーズンに当てるにはもってこいの環境だ。各クラブは成績と別のコンセプトを提示することができるか。今季の見どころはそこにある。

 スタートダッシュに失敗したクラブ(いずれも7試合を消化して勝ち点4)、清水エスパルス、鹿島アントラーズ(17位タイ)、湘南ベルマーレ(16位)などは、発想を切り替えていいのかもしれない。

 勝つサッカーといいサッカーは、ともすると別物として考えられるが、サッカー史において、悪いサッカーが時代をリードしたことは一度もない。長い目で見ると、勝つサッカーとよいサッカーは良好な関係にある。理想を追究すべし。歴史はそう語っている。そしていま、そのチャンスが巡ってきている。理想は追求しやすい状況にある。 いま、まさに理想的な状況にあるのが川崎フロンターレだ。チーム史上、一番よいサッカーをしているとは、個人的な印象になるが、それでいて首位を行く。また、成績こそ現在13位と振るわないが、ベガルタ仙台も悪くない印象だ。成績もさることながら、今季、重要なのは、いいサッカーを貫くことだ。それができれば成績は付いてくる。歴史はそう語っている。