茶専門店の倒産が2019年に12件判明、過去最多を更新した

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 お茶本来が持つ味や香りを説明できる「お茶の専門店」で倒産が増加している。帝国データバンクの調べでは、日本茶をはじめリーフ茶を取り扱う茶専門店の倒産が2019年に12件判明した。この水準は16年以降4年連続で増加し、過去最多の件数となった。

 近年は「抹茶ブーム」も手伝い、スイーツや菓子などに抹茶が使用される機会も増えるなど、その魅力が見直されてきた“茶葉”。それでも専門店が倒産する背景には、個人消費の「茶葉離れ」や販売チャネルの変化などが進行。需要が戻らないなかで、高い品質や伝統、お茶に対する知識の豊富さといった、専門店が得意としてきた強みが生かせない経営環境にある。
 専門店が主に取り扱うリーフ茶の消費量は、近年減少傾向が続いている。リーフ茶とは、急須に入れて飲むお茶のこと。総務省によれば、2018年における一世帯当たりの緑茶消費量は798gで、1993年の1335gに比べ約6割程度の水準に留まるなど、リーフ茶全体では需要の低迷が長く続いている。大きな要因はお茶の「あり方」が変化したことだ。実際に全国清涼飲料連合会の調査では、2018年の緑茶飲料の生産量は296万klに拡大。3年連続で過去最高を更新している。

 代わって緑茶飲料の需要拡大を後押ししたのは、近年急速に普及が進んだ「ペットボトル入り(PET)緑茶」の存在が大きい。ノンカロリーかつ手軽な飲料として親しまれるPET緑茶は、安価で手軽に飲むことが最大の利点。幅広い世代に飲用され、喉の渇きや食事の場のみならず、会議などフォーマルな場でも用いられるなど、活躍の場所を選ばない点も魅力だ。

 最近では緑茶など定番商品のほか、17年頃から火が付いたほうじ茶人気の拡大、日本茶を採用したミルクティーなどの派生ジャンル、特定保健用品(トクホ)対応のPET緑茶など多種多様な種類も登場。PET緑茶にとって追い風となる状態が続いている。

 対するリーフ茶では、PET緑茶など既製品に比べ、消費者に接する機会が少なくなった点が最大の弱みだ。大手ネットニュースのしらべぇ編集部が昨年、全国約1700人を対象に実施した調査 によると、「急須でお茶を入れて飲む人の割合」は全体で約3割にとどまった。年代・性別でも大きく差があり、女性では60代で約6割が急須でお茶を飲む一方で、30代では約3割、20代では約2割にとどまっている。男性でも60代は約半数、30代からは3割を下回る水準。職業別でも差があり、会社経営者が約5割となった一方、学生は2割にも満たなかった。

 消費は比較的年配者を中心とした消費に偏る一方、若年層や一般家庭での「急須離れ」が大きく表れている。

お茶の流通経路も変化、 購入先は専門店から量販店にシフト

 お茶そのものの流通の変化もある。総務省の「全国消費実態調査」では、1979年における消費者の緑茶購入先は、専門店が6割超を占めるなど高いシェアを有していた。しかし、以降は専門店の占める割合が年を追うごとに縮小を続け、2009年以降は3割を下回るなど低迷ぶりが顕著に見られる。お茶を買うために「専門店に出向く」という購買行動がなくなり、専門店にとっては新たな販売機会を見つける事も難しい。

 一方、専門店に代わる購入先として台頭したのが量販店。特にスーパーの占める割合は年々増加傾向で推移し、2014年には34.4%と全購入先のうち最も高い水準となった。通販による購入も近年急拡大の傾向にある。そもそも、近年は同じリーフ茶でもティーバッグ型や粉末型など、手軽さを売りにした量販加工品が主力なため、日常的にお茶を買うにあたり高度な知識などが必要ない。中元や歳暮、冠婚葬祭の略式化が進み、進物用や贈答品用の緑茶ニーズも先細りしており、あえて専門店へ行く必要性が無くなった点も大きい。

 お茶の個人消費が多様化したことと流通の変化。二つの大きな変化が専門店の経営を大きく揺さぶり、市場退出が増加した大きな要因となっている。

「お茶本来の魅力」を消費者に訴求できるかが、 専門店復活のカギとなるか

 逆風が続くなか、専門店も新たな顧客層の開拓に向け、様々な取り組みを本格化させている。京都府にある老舗茶店では、これまで積極的ではなかった他社とのコラボ企画にも乗り出し、次世代の専門店としての在り方を模索する。 別の専門店では、新たな試みとして日本茶カフェをオープンし、茶葉に親しんでもらうための仕掛けを進めている。 インターネットを活用した海外への販路拡大や、SNS・ブログなどを通じ、若年層へのPRを強化する専門店もある。 いずれの取り組みも、お茶が持つ本来の魅力を将来の顧客に訴求し、新たな需要の獲得に繋げようとする点が共通している。 これまで専門店に足を運ぶ機会のなかった消費者に対し、「スローフード」にも似た茶葉の魅力をいかに訴求し、認知度を高めることができるか。茶専門店の復権をめぐるキーワードとして期待されそうだ。