◆アイビスSDで穴党記者が推す「穴馬4頭」

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 夏の新潟開催が今年もやって来ました。そして、その開幕を飾る日本で唯一の直線競馬の重賞、GIIIアイビスサマーダッシュ(新潟・芝1000m)が7月26日に行なわれます。

 JRAでは、新潟だけにしかない直線の芝1000m。いわゆる「千直」というレースは、僕にとっても、特別に思い入れのある条件のひとつです。

 カルストンライトオとのコンビで、アイビスSDも2度勝たせてもらっていますし、コース改修によって、千直レースができるようになり、その最初のレースに勝ったのも、僕だったんです。おかげで、現役時代は「千直巧者」と言われたりもしました。

 このコースは、とにかくテンの速さとスピードが重要。しかしながら、いくら真っ直ぐの1000mといっても、最初から最後まで全速力で駆け抜けることはできません。単純なレースに見えて、実はペース配分や(他馬との)駆け引きなど、騎手が立てる作戦面も非常に重要な要素となっています。

 今年のアイビスSDは、ひとつの区切りとなる20回目。ファンの多い重賞ゆえ、無観客開催なのは残念ですが、千直のレースはカメラワークが独特で、画面で見ていても大いに楽しめます。今回は地元のファンの方々にも、映像で楽しんでもらえれば、と思っています。

 また、毎年のことではありますが、個人的な関心事となるのは、アイビスSDで千直のレコードが更新されるかどうか、ということです。

 現在のレコードは、僕がカルストンライトオとのコンビで最初にアイビスSDを勝った2002年。タイムは53秒7。千直が始まって2年目のことでしたが、いまだに破られることなく、レコード記録として残っています。

 このレコードが更新される可能性が一番高いのは、やはり馬場のいい夏開催で、その開幕週。それも、最もメンバーがそろうアイビスSDだと踏んでいます。カルストンライトオと僕の名前がいつまでも残り続けることはうれしいのですが、千直の重賞が始まって、もう20年。そろそろ53秒7の壁を打ち破る馬が出てきてもいいんじゃないかな、と思っています。

 さて、今年の注目馬は何と言っても、ライオンボス(牡5歳)でしょう。現役屈指の「千直巧者」と言えますからね。

 昨年のアイビスSDの覇者であり、ここまで千直は5戦4勝、2着1回。その反面、コーナーのある芝1200m戦はほぼ馬群に沈んでおり、千直の”スペシャリスト”っぽさをなおさら感じさせます。

 ライオンボスの魅力は、何より千直向きのスピードがあること。そして、どのレースでもスタートを決めて、小細工なしに自慢の先行力で前に行き、外ラチまで寄せてそのまま押し切るという、千直のセオリーを体現した競馬っぷりに惹かれます。

 千直は、負担重量が増えれば増えるほど、普通のレース以上に大きなハンデを伴うのですが、ライオンボスは斤量58kgを背負った昨秋のルミエールオータムダッシュ(2着)や、斤量57.5kgを背負った前走の韋駄天S(1着。5月24日)でも崩れていません。やはり、千直の適性が他とは違います。

 今回は、近走の中では軽い斤量57kg。韋駄天Sで戦った馬たちとの斤量差は縮まりますから、優位性は一段と増します。

 昨年のアイビスSDは、風の影響もあったようで前半のペースが上がらず、勝ち時計は55秒1にとどまりましたが、ライオンボスの持ち時計は53秒9。今年、レコードを更新する可能性は十分にあると見ています。

 7枠13番と枠順もまずまず。雨でグチャグチャの不良馬場になって……といった極端な状況にならない限り、今年も軸として信頼の置ける存在だと思っています。

 このライオンボスに次ぐ、2番手グループの争いが今年は激しくなりそうな予感がします。馬券検討においては、ライオンボスに迫るのはどの馬か? それを見極めることが、重要なポイントになるのではないでしょうか。

 ライオンボスが”千直のボス”に君臨するようになって1年と少々。その間、昨年の韋駄天SとアイビスSDは、カッパツハッチ(牝5歳)がいずれもライオンボスの2着に入線。昨秋のルミエールADは、レジーナフォルテ(牝6歳)が斤量と枠順の差を生かして、ライオンボスにクビ差先着して勝利を飾りました。そして今春の韋駄天Sでは、ジョーカナチャン(牝5歳)がライオンボスにアタマ差の2着と奮闘しました。

 また、今回は2年前のアイビスSDでワンツーを決めた森田直行厩舎のダイメイプリンセス(牝7歳)とラブカンプー(牝5歳)も参戦。ダイメイプリンセスは前走の韋駄天Sで久々に3着と好走し、ラブカンプーも前走のGIII CBC賞(7月5日/阪神・芝1200m)を勝って、長期不振から奇跡の復活を果たしました。2頭とも上り調子で侮れません。

 ざっと名前を挙げたこれら5頭は、すべて牝馬。やはり千直では、斤量の軽い牝馬を無視することはできません。

 ただ、収得賞金が高いダイメイプリンセスとラブカンプーは斤量56kgと、他馬より重くなるため、やや不利になることは否めません。CBC賞でインパクトのある勝ち方をしたラブカンプーは、藤田菜七子騎手に乗り替わって、必要以上に注目を集めてしまいそうなのも、少し気がかりです。


アイビスSDでの奮闘が期待されるジョーカナチャン

 残った3頭の中では、韋駄天Sでライオンボスと張り合えるだけのテンのスピードを見せたジョーカナチャンに食指が動きます。今年のアイビスSDの「ヒモ穴馬」には、同馬を指名したいと思います。

 韋駄天Sでは、ジョーカナチャンが斤量53kg、ライオンボスが斤量57.5kg。さらに、ジョーカナチャンは有利な外枠を引いたことも後押しとなり、最後までライオンボスに外ラチ沿いを明け渡すことなく、先頭で併走。アタマ差の2着に踏ん張りました。

 そこから今回は、ジョーカナチャンが斤量54kg、ライオンボスが斤量57kg。斤量差が縮まって、韋駄天Sの時のようにずっと並んで走っていると、早めに競り落とされてしまうかもしれませんが、時計のかかり方次第ではライオンボスに食い下がることはできるでしょう。

 韋駄天SとアイビスSDにおいて、同じ2頭がワンツーを決めるとなると、昨年のライオンボスとカッパツハッチと一緒。だいたい、春の新潟最終週に行なわれる韋駄天Sと、夏の新潟開幕週に行なわれるアイビスSDとの間で、千直の勢力図が変わることはありません。2つのレースが似たような決着になるのは、当然と言えば、当然のことかもしれません。 今年は、ジョーカナチャンの奮起に期待したいです。