ウクライナと聞いてIT立国をイメージする人は少ないでしょう。むしろ、ITとはかけ離れた違うイメージを持つ人のほうが多いかもしれません。しかしながら、ウクライナはIT分野でかなり強いのです。

例えば、世界のITアウトソースに関する国際団体であるIAOPの調査によると、ITアウトソーシングカンパニーの世界トップ100にウクライナの企業が18社も入っているそうです(2018年調査)。

ウクライナが世界中からITのアウトソーシングを受けているということは、世界中のITのニーズや最新の技術が集まってくるということを意味します。こうしたITのニーズや技術のハブのような存在であるウクライナに目を付けた、マイクロソフト、IBM、Samsungなどの企業が現地の開発会社と共同でR&Dプロジェクトを運営しています。

実は、アウトソーシングサービスの様な受託系の技術と、世界的なITベンダーで使われている技術の活用法というかアーキテクトの考え方はかなり違います。受託開発はお客さまのニーズに合わせてシステムを開発するノウハウがありますが、メーカーは市場をリードする次世代の開発を行うことが多いので、将来のニーズを見越した、ある程度汎用的な用途を限定したシステムのアーキテクトが必要なのです。

ある程度汎用的な用途を限定したという表現がやや難しくなってしまいましたが、ITメーカーの製品やサービスはある程度用途を決めて作られますが、その範囲で、多くのお客さまが利用できるような汎用性も併せ持つ必要があるということです。ウクライナにはお客さまのニーズと最新技術に関する要件が世界中から集まってきているうえ、世界的なメーカーのR&Dプロジェクトを共同で行うことで、先進的なアーキテクトの考え方も根づきやすい恵まれた状況にあります。

さて、このようなウクライナですが、外国人エンジニア派遣に力を入れています。今回、世界中にネットワークを持つヒューマンリソシアの協力を得て、 ウクライナでソフトウェアエンジニアとして働いているSergei氏に話をうかがいました。

ウクライナでソフトウェアエンジニアとして働いているSergei氏

--Sergeiさん、簡単に自己紹介をお願いします--

Sergei氏: 私は大学で応用数学を専攻したのち、PHP、Java、C++、JavaScript、MySQLなどの技術を生かして、Web開発やソフトウェア設計、チームリーダーなどを経験しました。IT開発者として、世界中のクライアントから依頼を頂き、仕事をしてきました。

--この連載コラムのコーナーでは毎回、現地のITエンジニアの給与についてお聞きしているのですが、ウクライナのITエンジニアの給与について教えていただけますでしょうか?世界のITを支えるといっても過言ではないウクライナのITエンジニアですので、魅力的な条件だとは思いますが……--

Sergei氏: まぁそうですね。実際、トップマネージャーや経営者でなくても、ITスペシャリストとして働くことで、国内の他の職種より高い収入を期待できます。政府の統計によると、ウクライナの平均月給は約450USドルですが、ほとんどのITスペシャリストは月に1000USドル以上を稼ぎ、専門分野や経験によっては、月3000〜5000USドル稼ぐ人もいます。

--すごいですね。稼げる方は平均給与の10倍近く収入を得るのですね。日本のITエンジニアの平均年収が400万円弱ですので、その10倍というと4000万円なので、大手企業の役員クラスでないと稼げない金額感になります--

Sergei氏: プログラマーは、時に複雑でトリッキーなトラブルや問題を解決します。そのため、IT分野になじみがない人から、魔術師のように見られたりします。」

ウクライナは西部にカルパチア山脈があり、南部は黒海があり、自然が豊かだ

--日本でも凄腕のエンジニアをウィザードと呼ぶことがあるので、それと同じですね--

Sergei氏: まさにこれが、プログラマーやITスペシャリストが、多くの尊敬を集めている所以かもしれません。おそらく、このコラムをお読みの皆さんの想像を超える以上のプログラマーが、海外の企業と仕事をしていますよ。」

--素晴らしいです。ちなみにウクライナのITエンジニアに人気な言語は何でしょうか?--

Sergei氏: サーバーサイドのプログラミング言語に関しては、大企業のシステムでは、いまだにJavaが多く使われていますが、PHP、そしてPythonやNode.jsも人気です。

モバイル開発分野では、Android分野ではJavaがほぼ唯一のプログラミング言語と言えるでしょう。iOS分野では、少し違っているかもしれませんね。デスクトップアプリケーション開発では、伝統的にC++、C#、時にはJavaが使用されるケースが多いですね。

--日本の状況とほぼ同じように思えますね。ちなみに、Sergeiさんは今どのような仕事をされているのでしょうか?--

Sergei氏: 現在は、ITスペシャリストの採用を行っている、それなりに大きな会社の仕事をしています。Webプロジェクトの改修とトラブル解消、そして新しい開発なども行っています。さらには、スクラッチなどの新しいWebプロジェクト、分析やシステム設計、ツールの選定、フレーム設計、システム開発なども行っています。今まで使用した経験がないツールや技術を学ぶのも楽しいです。常にチャレンジングなタスクがあり、それ故に、仕事に飽きることはありません。

--聞いているだけでワクワクしますね。ちなみに、日本人のプログラマーがウクライナに移住して働くことは可能でしょうか?--

Sergei氏: 正直なところ、日本人のプログラマーと仕事をしたことがないのでわかりませんが……先ほどお話した通り、IT産業で(どの国であっても)生き残り、成功するには、常に、日々新しいことを学び続ける準備ができている人が成功すると思います。そして、成功するプログラマーは、いわゆる「X lines of code」、つまりただ単に「いくつかのコードを書く」のではなく、クライアントの課題を解決できるプログラマーではないでしょうか。

--はい、確かにその通りですね。仕事をする以上、技術力でお客さまの課題を解決することで対価を頂けると思うので、そうあるべきと思います。最後に、ウクライナで好きなところを教えてください--

Sergei氏: 私が住んでいる場所は海の近くで、それが気に入っています。夏にはよく海に行きます。日本の皆さんのイメージとは違うかもしれませんが、気候も温暖です。私にとって、夏はもう少し涼しく有ればよいのですが。ヨーロッパの国々は近いので、旅行しやすいです。

Sergei氏は海の近くに住んでおり、夏には海で泳いでいるとのことだ

--素晴らしいところですね。日本の皆さんでも興味がある方は一度訪れてみてはいかがでしょうか?それでは今日はこの辺で--

著者プロフィール

○吉政忠志

業界を代表するトップベンチャー企業でマーケティング責任者を歴任。30代前半で同年代国内トップクラスの年収を獲得し、伝説的な給与所得者と呼ばれるようになる。現在は、吉政創成株式会社 代表取締役、プライム・ストラテジー株式会社 取締役、一般社団法人PHP技術者認定機構 代表理事、一般社団法人Rails技術者認定試験運営委員会、BOSS-CON JAPAN 理事長、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 代表理事を兼任。