米SAS Director of Cloud & Platform Product Management Marty Tomasi氏

SAS Instituteは今年6月、オンラインイベント「SAS GLOBAL FORUM」において、マイクロソフトとの提携を発表した。基調講演で、両社の幹部は「アナリティクスの民主化」を提携の狙いの1つに掲げたが、なぜ提携相手がMicrosoftなのか? 今回の提携がどのようなインパクトを市場に与えるのか? SASでクラウド&プラットフォーム プロダクトマネジメント ディレクターを務めるMarty に聞いた。

--Microsoftとの提携の背景とその理由について教えてほしい--

Tomasi氏: Microsoftとは、クラウドのアナリティクスとAIの分野において長期的かつ戦略的提携を結んだ。これにより、Microsoftのパブリッククラウド「Azure」がSASの推奨クラウドとなり、SASの顧客のクラウドへの移行にあたって共同で最善の体験とバリューを提供する。

提携の下、われわれのソリューションと「Dynamics 365」や「Microsoft 365」などMicrosoftのクラウドサービスの統合を進め、「SAS Viya」とAzureでも深いレベルの統合を進める。共同で市場戦略も展開する。顧客は、アナリティクスのワークロードを簡単にクラウドに動かすことが可能になる。

そして、提携の背景には、クラウドの流れがある。特にオンプレミスの顧客は、新型コロナウイルス感染症の影響で大きな課題に面している。複数のベンダーと提携を模索していたが、Microsoftと意気投合して提携に至った。

中でも、ローコード・ノーコードプラットフォームの「Power Platform」の可能性は時間をかけて追求している部分だ。Power PlatformはSASの顧客にとってパワフルなツールで、迅速にアプリケーションを構築してロールアウトすることができる。その過程で、われわれはアナリティクスモデルを活用して支援したいと考えている。予測メンテナンス、顧客チャーン、詐欺検出など、SASがよく知られているモデルを、Power Platformでアプリを構築している人にも提供したい。

--なぜMicrosoftなのか? Microsoftとは一部で競合関係にあるが--

Tomasi氏: さまざまなクラウドプロバイダーの中で、文化がフィットするのがMicrosoftだった。Microsoftはエンタープライズ技術を提供する企業であり、自身もデジタルトランスフォーメーション(DX)を経験している。SASおよびわれわれの顧客のデジタル化に共感を持ってくれるプロバイダーだ。

(MicrosoftのCEOである)Satya Nadella氏は、技術で問題解決を図ることを重視しており、これにSASのアナリティクスが加わることになる。この提携は素晴らしい土台となる。

2社ともに、アナリティクスとAIを使ってすべての人がもっとサービスや機能を構築し、より良い意思決定ができると信じている。MicrosoftとSASの組み合わせにより、DXを加速できる。

また、「Azure Machine Learning」と「SAS Model Studio」など、確かに一部の製品は競合していると言える。最終的に、これらは道具の1つと考えている。SASのツールになじんでいる顧客はSASを選び、Microsoftのツールに慣れているユーザーはMicrosoftの技術を選ぶだろう。将来的には、顧客のメリットのためにツールセットを統合していく。

--SASもこれまでホスティングサービスやクラウドを提供してきた。SASだけではクラウドへの移行を支援できなかったということか?--

Tomasi氏: クラウドへの移行において、顧客は信頼を必要としており、SASの技術とソフトウェアに対する信頼はある。Microsoftはクラウド企業に転身しており、Microsoftの経験と共感が顧客には大きな意味を持つと考える。

Microsoftはクラウドの分野で、サイジングやサービスの拡張性などについてノウハウと知見を積んでおり、われわれはアナリティクスの専門知識を持つ。この2つにより、顧客のクラウドへの移行ペースを加速できる。

提携により、SASが提供するホスティングとマネージドサービスはAzureをベースとする。Azureには60以上のリージョンがあり、セキュリティ、機密順守などの機能は高度でパワフルだ。同じものを同じレベルで提供することはわれわれにとってコストがかかる。提携により、顧客はより良いサービスとコストの両方のメリットを得られる。

--SASはオンプレミス時代にアナリティクス技術として誕生したが、SASにとってクラウドは何を意味するのか? カルチャーにどのような影響を与えているのか?--

Tomasi氏: クラウドはスピードと安全性を意味する。メリットは明らかだ。

われわれも変化を遂げており、12〜18カ月のソフトウェアサイクルから、2020年後半に提供予定の「Viya 4」では毎月新機能を届ける。顧客はこれまでよりも頻繁にアップデートを受けられる。

当初から、われわれのソフトウェアはさまざまなOSで動く移植性を実現してきた。オープンソースの動きが大きくなった時は、顧客のオープンソースへの態度を理解するのに多少の時間がかかった。それまではCTOが技術を決めてそれをプッシュしてきたが、現在は開発者がWebから新しい技術を見つけてそれを使い始めるというボトムアップに変わっている。

SASはこれに適応する必要があり、ソフトウェアがどのように運用されるのかに対してオープンになる必要がある。そこで、Viya 4ではAPI機能を拡張する。これにより、顧客が望むならSASの機能を直接ビジネスプロセスに統合することもできる。

--2社の提携がアナリティクス市場に与える影響をどう見ている?--

Tomasi氏: 短期的な影響として、クラウドへの移行が加速するだろう。これまでデータストレージ、Webアプリなどがクラウドに移行した。これと同じように、SASとMicrosoftの提携により、アナリティクスのワークロードも簡単に動かすことができるようになる。

「データグラビティ」という言葉があるように、データが動くとさまざまなものが引っ張られる。今後企業はデータドリブンであるだけでなく、モデルがもたらす意思決定ドリブンになる。IoTでよく「デジタルツイン」と言われるが、ビジネスでも問題解決のためのプロセスをデジタルツインのように複製してモデルを適用し、ワークフローを最適化するようになる。

SASとMicrosoftの提携を受け、競合する提携が出てきたとしてもおかしくはない。