かつてカール・マルクスは、「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」と書いている。「#世界を変えたハック」を編集部がツイッター上で募集したとき、模範演技として「手洗い」をぼくが挙げたことは去年もここで書いている。でも、今年はそこにまた、新たな意味が加わった。

「新しい“ノーマル”なんてもはやない。分岐する現実をハックせよ:「CREATIVE HACK AWARD 2020」募集開始!」の写真・リンク付きの記事はこちら

 

もちろん、産褥熱で次々と亡くなる母親を「手洗い」によって救ったゼンメルヴァイスの「世界を変えたハック」のあとで、パンデミック下に「マスク」の着用という簡単なライフハックによって多くの人命が救われたかもしれない事実を笑うことなど、まだぼくたちにはできない。

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それよりも、凄まじいハックだったと言わざるを得ないのは、わずかな遺伝情報(コード)を書き換え分岐を繰り返すことで、人間中心の文明社会を、そして人類のマインドそのものを永遠にひっくり返して見せたCOVID-19のほうだ。

でも、ぼくたちが求めているハックはこれじゃなかったはずだ。そうではなく、もはや一瞬のうちに過去の遺物となった行動規範(コード)を速やかに書き換え、現実というフレームそのものを再定義するクリエイティヴによって、世界を分岐させていくやり方だ。

昨年のグランプリ作品「バズの囁き/Whispers from Buzz」(GengoRaw[石橋友也、新倉健人、吉田竜二、二口航平、吉田智哉])は、SNS上に飛び交うトレンドワードという人類の集合的意識を、AIがリアルタイムに処理し、詩として紡ぎ出す。いまならさしずめ、「ニューノーマル」という言葉が人々の詩情を掻き立てるのかもしれない。

でもそれは、もはやノーマル(常態)などあり得ないという現実を無視し、どこかに安全地帯を見つけようとする人間の欲望の囁きにすぎない。世界は(あるいは「自然は」と言い換えてもいいだろう)文字通りコードを次々と書き換え分岐を繰り返していくのだから。

いまや、リアルが想像力を追い越してしまった。もう一度、あるいは何度でも、創造力がリアルをハックするときだ。クリエイティヴとは安全地帯の対極にある。新しい“ノーマル”なんてもはやどこにもない。さあ、分岐する現実をハックせよ。

「CREATIVE HACK AWARD 2020」概要
【募集期間】 2020年7月16日(木)- 9月25日(金)
【最終審査会】 2020年12月上旬予定(場所:都内近郊)
【募集作品】 「ハック」をかたちにしたもの(もしくは、 そのアイデア)
【テーマ】  自由
【表現形式】 自由
【応募方法】 アワード特設サイト( https://hack.wired.jp/ )より
【応募条件】 「なにを、 なぜ、 いかにハックしたか」を明記すること
【応募資格】 年齢・性別・国籍不問/社会人、 学生不問/グループ可
* 法人としての応募は不可。 クライアントワークとしての作品は不可
* 既に発表された作品でも、 他のクライアント主催のアワード受賞歴がない作品は応募可能
* 作品はひとり(1グループ)5作品まで応募可能
* キャンペーン、 広告、 CMなど、 第三者のプロモーション目的で制作発表された作品は応募不可

【審査基準】 意外性 「そうきたか!」と思わせる視点=「なにを」の面白さ
       社会性 「問い」の鋭さ・広がり・深さ=「なぜ」の深度
       表現性  アイデアをまとめ上げる力=「いかに」の妥当性
【賞・副賞】 グランプリ(1組)、 準グランプリ(1組)、 特別賞(3組)、
       パブリック賞(1組)、 ソニー賞(1組)、 ワコム賞(1組)
【協賛企業】 ソニー株式会社  株式会社ワコム