(写真=Feodora/stock.adobe.com)

写真拡大

新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞は、ベンチャー企業にも多大な影響を及ぼしている。ここ数年、“資金調達バブル”とまでいわれた国内ベンチャー市場は、コロナ禍を機に優位逆転の状況になっている。ウィズコロナ、そしてアフターコロナに向けて資金調達をしていく上でベンチャー経営者が意識すべきことに「競争力」が挙げられる。

■「資金調達バブル」の終焉は本当か

ここ数年で、「ベンチャー投資バブル」と呼ばれるほどに資金調達額が膨れ上がった国内ベンチャー市場だが、昨年あたりから少しずつ慎重姿勢が見られるようになった。現在、これにトドメを刺すようにコロナ不況のあおりを受けている。

英米の衛星通信ベンチャー「OneWeb」が倒産したというショッキングなニュースは記憶に新しい。「シリコンバレー最強の男」とも称されたソフトバンクグループ・孫氏の出資先が破綻するという残酷な現実に、国内でも不穏な空気が広まった。日増しに深刻化する経済情勢を鑑みると、かつて経営側が優位であった“資金調達バブル”は、今まさにはじけようとしているのかもしれない。

■冷え込むベンチャー投資?経営不安に拍車

コロナショックにより、ベンチャー企業への投資に慎重な姿勢を見せるVC(ベンチャーキャピタル)の経営者も少なくない。収束の目処が立たない現状への不安も、その要因の一端と考えられる。特に、「資金調達」と「事業継続」について関心が高まっている点は見逃せない。

● ●資金調達は「従来に比べると難しくなる」

VCによる見通しはさまざまだが、既存の投資がうまくいっていないことや世界的なスタートアップ投資の冷え込みから、投資家のモチベーションが下がっていることは明らかだ。そのことを踏まえると、現状は非常に厳しいものだといえるだろう。

実際に4月時点での日本経済新聞社の調べでは、VC30社に新興勢の資金調達環境の見通しを聞いたところ、全社が「従来に比べて難しくなる」と答えたという。特に新規調達のハードルが上がっているとみられ、経営者にとってはこれまでの経験則で資金調達をしていくのは厳しい状況といえそうだ。

● ●事業継続に不安を抱える経営者も

同社の調べでは、国内の未上場スタートアップの中でも企業価値の上位約60社のうち、4割が「事業継続に不安を抱える」と答えている。事業の継続が難しくなった理由で最も多かったのは「営業活動の停止や頻度の減少」で、想定していた収入が期待できないことから、2割の企業は半年内の運転資金すら懸念が拭えず、危機感を持っている様子だ。

投資先行での赤字も多いベンチャーでは売上減を明確に示しにくく、助成金などの活用は難しい。これらにVCからの新規投資の凍結などが相まって、資金繰りに行き詰っている経営者も少なくないという。

■本当は「投資の好機」?積極的に投資継続するVCも

一方で、「こんな時だからこそ、ベンチャーを助けたい」そんな頼もしいVCもあるということを伝えておきたい。成長産業支援事業を推進するフォースタートアップス社が提示している「STARTUP DB(スタートアップデータベース)」では、前年同時期に比べて資金調達額が減っているのは電子決済などの大型調達が前年にあったことから生まれた差異であるという。また、同調査では4月時点でスタートアップにおける資金調達金額に大きな増減はないと結論づけている点は特筆すべきことだ。

加えて、この状況を適正価格での投資好機とみて新たな出資先を目論んでいる投資家もいる。前述の日本経済新聞社のVC30社を対象とした調査でも、従来と比較すれば厳しくなるとはいえ、影響を考慮しつつも「積極的な投資方針を採る」と答えたVCが8割を占めている。これには、株価を下げる企業が増える予想から「投資に割安感がある」ことを理由として挙げている。

このほか、日本ベンチャーキャピタル協会がスタートアップの支援を求める要望を政府に提出するなど、業界団体からも支援の動きがあり、どうも逆風ばかりではないようだ。

■コロナ禍でどう資金調達すべきか

「出歩けない状況でどう資金調達をしたら…」と頭を抱えている経営者もいるだろう。現在、スタートアップとVCをオンラインでつないでくれる便利なサービスが登場している。

● ●オンライン完結型など新たな資金調達の形が登場

マネーフォワードシンカ社では、VCとスタートアップ企業のオンライン面談のマッチングを開始している。不況下におけるスタートアップ支援に賛同するVC20社以上が参画しており、オンラインで資金繰りに関する相談を受け付けるという。

また、独立系ベンチャーキャピタル ANRIではオンライン完結型の投資をスタート。3月に同社が開始した即決投資プログラム「ソクダン」を通じてすでに投資実行に至ったケースもあるという。このほか、株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」の活用なども注目されている。

従来の型に縛られず、積極的にオンライン資金調達の流れに乗っていきたいところだ。

● ●これまでにない「競争力」が問われるように

コロナ不況により、VCは既存投資先の対応に追われていることは確かだ。これまで成長企業に積極投資をしていたVCも、リスクを避け手堅く安全なところに投資するようになる可能性も否定できない。

一方で、これまでバリュエーションが高くて投資のできなかった企業に適正な価格で出資できるようになると見込み、意欲的な姿勢をみせるVCもある。既存の投資家からすれば、 “割安”になることは面白くない話だが、出資先の事業が途絶えるよりはマシといったところだろうか。

これらを踏まえると、今後ベンチャー経営者は、オンライン投資の普及とともに、複雑な駆け引きにも手堅く、賢く、魅力を打ち出していくことが求められそうだ。

■VC・経営者双方の真価が問われる今

コロナ禍による影響には賛否あるが、医療ベンチャーが注目を集めているように、これからはより高い技術のあるテクノロジーへの投資が活発化するとの見方もある。このような業界動向からも目を離さず、経営者はこれまでの経験則が通じないという前提をもつことが必要だ。窮地であるからこそ存在感を示すVCの期待に、相応に応えられる企業が今後勝ち残っていくだろう。

経営者の実力がふるいにかけられるようになったことで、一層経営手腕が問われる今。アフターコロナに向けて手堅くキャッシュを掴むために、スタートアップならではの「逆風をプラスに変える挑戦」に期待したい。

文・木村茉衣