ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

◆中京記念で狙える馬は?>>

 本格的な夏競馬に突入して、今週ではや3週目。そして、例年より長い開催となった阪神とともに、福島、函館の開催が同時に最終週を迎えます。

 函館では、土曜日にGIII函館2歳S(7月18日/芝1200m)、日曜日にGIII函館記念(7月19日/芝2000m)と、2つの重賞が組まれています。そのうち、ここで取り上げる函館記念は、クレッシェントラヴが制した先週のGIII七夕賞(福島・芝2000m)に続く、『サマー2000シリーズ(※)』の対象レースとなります。
※夏競馬を盛り上げるために行なわれている重賞のシリーズ戦。6月〜9月に開催される指定重賞での成績をポイント化し、その総合得点を競うもの。芝のスプリント戦(1000m〜1200m)を対象にしたものが『サマースプリントシリーズ』、芝1600m戦を対象にしたものが『サマーマイルシリーズ』、芝2000m戦を対象にしたものが『サマー2000シリーズ』。そして、それらすべてのレースを対象にしたものが『サマージョッキーズシリーズ』。

 以前は、函館記念からGII札幌記念(札幌・芝2000m)に向かう形が、北海道シリーズのセオリーだったように思います。しかし近年は、函館記念組と、札幌記念から始動する一流馬とのレベル差が大きくなっているからか、過去4年の函館記念の勝ち馬は札幌記念には出走していません。

 そして今年も、有力馬に挙げられている馬のうち、レイエンダ(牡5歳)やトーラスジェミニ(牡4歳)は、春競馬からコンスタントに使われてきていますから、今回結果を出したとしても、札幌記念には向かわず、秋の大舞台に備えたり、多少間隔を開けてGIII新潟記念(9月6日/新潟・芝2000m)に向かったりするかもしれませんね。

 さて、それら有力2頭のうち、今回のレースでまず注目したいのは、ステップレースのオープン特別・巴賞(7月5日/函館・芝1800m)を勝ち上がってきたトーラスジェミニです。

 2走前のGIIIエプソムC(6月14日/東京・芝1800m)では、出走18頭中、最低の18番人気で3着に粘り込み。3連単で飛び出した400万馬券の片棒を担ぎました。その後、巴賞でも逃げて1馬身半差の完勝。エプソムCが道悪と展開に恵まれてのフロックではないことを証明しました。

 全5勝のうち、初勝利以外はすべて逃げ切り勝ち。どれも、ある程度時計と上がりがかかるようなレースでした。函館コースは前走が初めてでしたが、洋芝と小回りコースはこの馬に合っていたのではないでしょうか。今回も先手を取れれば、期待できる存在だと思います。

 鞍上は、木幡育也騎手。同馬との相性がよく、オープン入り後はずっとコンビを組んでいます。木幡育騎手は藤沢和雄厩舎の所属で、今回の函館記念には藤沢厩舎の馬が3頭出走しますが、小桧山悟厩舎の管理馬であるトーラスジェミとのコンビで参戦します。

 今年で4年目の木幡育騎手。競馬学校の同期生には、すでにブレイクしている横山武史騎手などがいて、彼らと比べるとやや後れを取っている感がありますが、最近はトーラスジェミニ以外にも、上のクラスで勝負できるお手馬が増えてきています。巴賞をしっかりと勝たせた勢いで、函館記念でも結果を残して、さらなる飛躍を遂げてもらいたいですね。

 木幡育騎手と似て、と言うと語弊があるかもしれませんが、トーラスジェミニもその血統や出所などから、決して注目度は高くありませんでしたが、着実に成長を重ねてここまで出世してきました。勝ったレースは、ほとんどが人気薄。3勝目を挙げた時の単勝は、141.8倍でした。

 そういう意味では、このコンビが重賞で有力視されていること自体、すごいことかもしれません。その評価に恥じない結果を残してくれることを期待しています。

 一方、血統や出所などを含めて、トーラスジェミニとは真逆とも言える道を歩んできたのが、レイエンダ。デビュー当時から注目され、重賞戦線でも常に人気の一角に挙げられてきました。しかも、主戦はクリストフ・ルメール騎手。この函館記念でも鞍上を務め、人気になることは必至です。

 ただ、今回は少し疑ってみてもいいかもしれません。

 というのも、古馬になってから、その成績にムラがあるからです。前走のエプソムCでも、得意と言われていた道悪競馬で10着と惨敗を喫しました。

 今回は、デビュー3連勝を飾った時以来となる函館・芝2000m。関係者はその実績を買って函館入りを決めたのかもしれませんが、その当時からは丸2年が経っています。さらに、折り合いを考えて、マイル戦を中心に使ってきた現状を踏まえると、2000m戦というのはどうなのか、疑問があります。

 トーラスジェミニとレイエンダ――。これまでの立ち位置がまったく違う2頭が、”重賞で人気を争う”というのは非常に興味深いところ。個人的には、現役時代にトーラスジェミニのようなタイプの馬に乗る機会が多かったな、という思いもあって、どうしてもトーラスジェミニと木幡育騎手に肩入れしてしまいますね。

 ほかでは、堀宣行厩舎のカウディーリョ(牡4歳)が面白そう。レイエンダと同じ良血馬ですが、同馬のほうが、函館の滞在競馬がいいほうに出そうな印象があります。

 堀厩舎の管理馬と言えば、先週の七夕賞でジナンボー(9着)が1番人気を裏切る形になりました。それでも、翌週の同じ『サマー2000シリーズ』にも有力馬を送り込めるのが、一流厩舎の層の厚さでしょう。

 カウディーリョは、輸送でのイレ込みと馬体減がきつい馬で、2走前の3勝クラス・関門橋S(2月9日/小倉・芝2000m)も、小倉に早くから滞在して体調を整えたことが、勝利につながりました。昨年の夏も札幌滞在で勝利を挙げていますし、前走より状態面もアップしているはずですから、なおさら楽しみです。

 ちなみに、カウディーリョはデビューから、1着→着外→1着→着外……という結果が続いています。たまたま使うレースが、競馬場への輸送がないところ、あるところ、という順番になっているからかもしれませんが、不思議と着順が綺麗に並んでいるとか、2着や3着がまったくない馬というのは、昔から結構いるんですよね。

 前回4着という流れからすると、今回は輸送がない函館で1着ということになりますが、はたしてどうなるでしょうか。


函館記念でも激走が期待されるプレシャスブルー

 人気どころではない馬では、前走のGIII新潟大賞典(5月10日/新潟・芝2000m)でも、14番人気で3着に入って大穴をあけたプレシャスブルー(牡6歳)が気になります。今回は、同馬を「ヒモ穴馬」に取り上げたいと思います。

 明け6歳の初戦で、やっとオープン入りを果たした馬ですが、もともと最後は確実に脚が使える馬で、相手なりに差を詰めることができていました。その意味では、オープンに上がって2戦で、戦えるメドが立ったことも納得できます。

 あまり馬場が悪くなりすぎると、武器となる末脚が使えなくなってしまいますが、本当の意味でのスピード決着よりは、ある程度タフな馬場のほうが向いている印象があります。最終週の函館コースというのは、ベストに近い舞台なのではないでしょうか。 鞍上は、今年9勝とまだ調子が上がっていない石川裕紀人騎手。しかしながら、春のクラシックでは、所属する相沢郁厩舎の管理馬ブラックホールとのコンビで奮闘していました。ここで浮上のきっかけをつかんで、来週からの札幌開催に向けて勢いをつけてほしいですね。