(写真=xiaosan/stock.adobe.com)

写真拡大

新型コロナウイルスの影響で大きく変化が起こった業界の一つに物流業界が挙げられる。在宅勤務や外出自粛の影響で、家庭におけるネットショッピングなどの利用が大きく伸び、物流量も大幅に増加傾向だ。インターネットの普及で取扱量が増え続けていた物流業界だが、新型コロナウイルスでどう変化したのだろうか。本記事では、物流業界の現状とこれからについて見ていきたい。

■新型コロナウイルスが物流業界に与えた影響

まずは、新型コロナウイルスが物流業界に与えた影響から見ていこう。最も大きな影響は、物流量の増加だ。個人の消費(小売り)について見てみると、新型コロナウイルスの影響で企業は在宅勤務、個人では外出自粛が要請された。自宅にいることが多くなったため、家での消費、いわゆる巣ごもり消費が増加した。

また、外での買い物を自粛する人も多く、ネットショップでの購入が増加。比例して物流業界の仕事量も大幅に増加している。店の消費(卸売り)で見てみると、2020年2月28日の全国小中高一斉臨時休業およびSNSでのデマなどが起因となり、トイレットペーパーや食料品などの買い占めが起こった。店側は在庫確保のために仕入を増やす必要性があり、結果として卸売りについても物流業界の仕事量は大幅に増加している。

物流業界では、仕事の増加による従業員の繁忙という問題が続出。それ以外にもマスク不足などによる作業員の安全確保の問題や、休校で子どもが家にいるためドライバーが仕事に行けないなどといった問題も発生している。

■新型コロナウイルスによる物流業界の課題

そもそも物流業界には、以前から人手不足と高齢化の問題があった。反して、オンラインショッピングの普及により物流量は増え続けていた。これに追い打ちをかけるかのような今回のコロナショック。従来からの人手不足という課題が、さらに顕著となった。

問題解決のためには新しい人材を確保する必要があるが、物流業界には「仕事がきつく仕事量が多い」という負のイメージを持っている人が少なくない。「ワーク・ライフ・バランスをとることができない業種」という先入観を持つ人がいるため、新しい人材の確保が難しく、それが物流業界で働く人の高齢化につながっている。また、小口配送の増加によるドライバーの負担も問題だ。

加えて、再配達にかかる負担も大きい。国土交通省が年2回行っている「宅配便の再配達率サンプル調査」によると、2019年4月期の全国の再配達率は16%だった。これは配達物6個に1個(約16.7%)以上が再配達になっている計算である。

ブラック業界の汚名を返上するべく、労働環境の改善や物流の効率化を目指し「ホワイト物流推進運動」を展開していた物流業界だが、コロナショックによりホワイト物流への道はまた一歩遠のいたようだ。

■これからの物流業界はどうなる?

ここまでは、新型コロナウイルスが物流業界に大きな負担増という形で影響を与えていることを見てきた。では、新型コロナウイルスが終息した後はどうなるのであろうか。

新型コロナウイルスがもたらした行動変容は、新型コロナウイルスが終息しても続く可能性が高い。例えば、今回のことで企業にテレワークの重要性が認知されたため、テレワークができる環境づくりがこれまで以上に進むことが予想される。

また、2021年7月に延期された東京オリンピックが日程どおりに開催されれば、東京には開催準備のために今まで以上の配送量の増加も見込まれるだろう。こうした予想に対し、物流業界もただ手をこまねいているわけではない。企業や政府もさまざまな対策や施策を講じている。企業側の対策としては、ITの活用やオートメーション化などによって作業効率化を図り需要増への対応を進めているところもある。

また、政府は物流生産性向上の推進に向け、荷主や物流事業者などの事業者間の連携・協働の取り組みを行っている。標準化による物流の生産性向上事例集などの公表にも積極的だ。さらにドローンを使った物流のビジネスモデル化や自治体、事業者、NPOが連携した物流ネットワークの構築なども政府の事業として検討および実施されている。

一方、新聞やニュースなどで宅配ドライバーの過酷な状況が取り上げられ、消費者にもその大変さが認知されるようになった。個人宅への宅配BOX設置が増加したり、再配達時間の制限に消費者が協力したりするなど、ドライバー負担への理解が進んでいる。ここまで見てきた通り、これからの物流業界は在宅勤務などの行動変容や東京オリンピックに向けた需要の増加により、さらに市場が拡大していくだろう。

それに伴う政府や企業のさまざまな取り組みや個人の理解が進むことによって、より良い物流のシステムができあがる可能性も高い。これらの対策がうまくいけば、そう遠くない将来にドライバーや作業員の負担を軽減しながら、増加する物流量に対応できるようになるのではないだろうか。

文・THE OWNER編集部