◆夫と表面上はうまく行っていたけれど

「ヘンな言い方ですが、夫は仕事も順調で、それなりに出世もしていきました。結婚して4年後には家を買ったし、何もかもうまくいっていた。ただ、どこか夫とは心が行き交わない。

 夫はいついかなるときも頭の中は仕事でいっぱいなんです。家に帰ってきても、子どもと遊んでいても、実は仕事のことを考えている。

 私が、夫にそのことを言えればいいんだけど、私は私で自分に自信がなくて、とにかく『私なんていてもいいの?』という気持ちが抜けないわけです、どんなに子どもを産もうが、その根っこの部分が消せない。

 夫とは表面上、うまくいっていたけど、たぶん夫は私の中にある自分でも『めんどうくさい』と思う面を、どこかうっとうしく思っていたんじゃないでしょうか」

 自分でも、自分の性格を持て余し、ときにつきあいきれないと思っていたと、レイコさんは笑う。だが、そんな彼女が3年前、ある男性に会って驚くほど変わっていった。

◆彼との出会いで最初から惹かれた

 レイコさんが、9歳年上のショウイチさんと出会ったのはネット上だった。仕事に関係した、あるコミュニティのオフ会で初めて顔を合わせた。

「たくさん人が来ていたんですが、彼とはネット上でやりとりをしていたので、顔がわからないのに、あ、この人だと思ったんです。彼のほうもすぐにわかったって。最初から惹かれ合うものがあったんだと思います」

 その日は携帯の電話番号を交換しただけで別れた。だがレイコさんは、翌日すぐ、ショウイチさんに連絡をとっている。非常に積極的だ。

「私、モテたこともないし女として自信もない。それなのにそのときは、どうしても彼に会わなければいけないような気持ちに駆られたんです。電話すると彼はすぐ私だとわかって、その日に会うことになりました」

 お互いに、その日、結ばれることがわかっていたような段取りだった。あとから知ったのだがショウイチさんは非常に多忙な人で、その日に時間がとれることなどめったにない。レイコさんも、その日はたまたま夫が早く帰って子どもたちのめんどうをみてくれると言ったので彼に会うことができたのだ。

 ふたりは会ってすぐホテルへ直行した。ひとときもムダにできないような気持ちだった。抱き合ったあとは帰らなくてはいけない時間が来るまで、話し続けた。夫があまりおしゃべりなタチではないので、レイコさんは久しぶりに「会話をする」楽しさを味わった。

「たった1回でもいいと思いました。夫以外の他の男性と関係をもてば、夫への視点も変わるかもしれない。そんな期待もあった。だけど実際には、ショウイチさんに会う前より惹かれてしまった。だからこの先、どうしたらいいんだろうと帰宅途中で考えていました。

 だけどショウイチさんのほうは、帰り道で、私とのつきあいは長くなるだろうと思っていたそうです」

◆向き合って話してくれる彼

 そして関係は、ショウイチさんの思ったとおり、続いていく。最初は戸惑っていたレイコさんも、だんだん「身も心も」ショウイチさんになじんでいった。

「私、それまでセックスなんていいものだと思ったことがなかったんです。男性との関係においても、やはり父のことがあるからでしょうね、大声を出す人は苦手で、基本的に男性が怖かった。

 夫はまじめだけど、ときどき大きな声を出すことがあるんです。仕事でせっぱ詰まっているときなんだと思うんですが、それが私は怖くてたまらなかった。夫自身、すぐ気づいて『ごめん』と言うんだけど。

 ショウイチさんは話し方も穏やかで、言葉数が多い。私が拗(す)ねたりいじけたりすると、きちんと向き合って話してくれる。ショウイチさんと話すと、私はいつも心の中がすっきりするんです」