【磯部孝】供給過多の「アパレルマスク」、ついに明暗が分かれてきた…! マスク不足解消後に起きていること

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「期待外れ」だったユニクロのマスク

早いもので今年も後半戦に突入した。全世界にとってもこの1年は「コロナウィルス」との付き合いが始まった年として永く記憶に残るに違いない。

コロナ禍によって余儀なく経験させられたものは多いが、その中で今回は全国民が半ば装着を義務つけられた「マスク」について取り上げてみたい。

このマスクを巡って、アパレル企業の対応に“格差”が生じた。例えば、ユニクロは『エアリズムマスク』を6月19日に発売したが、先んじていた企業が4月頃には発売出来ていたことを思えば、ずいぶん遅い対応だった。

同社は元々、マスクを作る予定はなく、4月の決算説明会でも柳井会長は「マスクより服で貢献する」と述べていた。それが顧客の声に応える形で実現し、メディアで取り上げられ発売日には長蛇の列を作って発売初日に完売。

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しかし、そうした顧客の期待とは裏腹に「期待外れ」とも取れるコメントもネット上ではあがっていた。『エアリズム』とネーミングしておきながら、夏仕様にはなっていなかったからだ。

このユニクロの例でも分かる通り、アパレル企業の中で、今回のマスク供給の対応については、

(1)先んじて対応できた企業

(2)出遅れながらも対応した企業

(3)全く対応しなかった企業

と、3つに分類できよう。一体この差は何かというと、アパレル企業にとってマスクそのものが異業種だったことが第一に挙げられる。

そして前回のSARS(2003年)終息時に、大量の売れ残りマスクを抱えこんでしまった経験があるところにとっては、慎重に見極めた企業も中にはあったようだ。

「マスク不足」に始まったコロナ禍

改めて今回のコロナ禍と、それに伴う国内のマスクの供給状況について、今一度振り返りたい。

2月初旬頃からコンビニや接客を伴う飲食店などでマスクの着用が始まり、マスクが店頭から消え始めた。イタリアを始めとしたヨーロッパ等でロックダウンも始まって、オリンピックの聖地ギリシャで行われた聖火点灯式もコロナに配慮しながら異例の形で日本にやって来た。

「東京オリンピック延期」の正式発表があったのは、3月の三連休明けの24日、その翌日の夜に小池都知事による「外出自粛要請」が発表。政府は4月7日に先行7都府県、16日に全国に向けて「緊急事態宣言」発令して日本型都市封鎖というべき形となった。

初めは「マスク不足」が深刻化した。

日本国内におけるマスク供給量は別表の通り、年間約64億枚が流通している。その内49億枚が輸入によるもので国内自給率は約2割。輸入の大半は中国が占めていることから、中国国内の需要を優先せざる負えない事情も働いて初期の「マスク不足」は、なかなか解消されなかった。

この「マスク不足」は、着用習慣のない欧州でも問題となって、英国のバーバリーや仏国のセントジェームスといった老舗企業が、既存の生地や生産ラインを活用していち早く生産対応した。

日本ではまず、政府が動いた。3月6日には「マスク転売禁止」を閣議決定し、政府への納入を目的に異業種のシャープが生産に踏み切ったのは話題にもなった。そして4月1日に1住所2枚ずつ配布する、通称「アベノマスク」まで生ままれることになった。

自分仕様の「マイマスク」の登場

4月に入って一部の国内ブランドや小売チェーン店などが、オンラインを中心に繰り返し使える布マスクを販売し始めた。先の「マスク不足」による手配疲れや、「手に入らないと困る」という恐怖感も手伝って、この自分仕様の「マイマスク」の確保に動いたことから、良く売れた。

また、外出自粛要請によって在宅時間が増えたことから100円均一ショップで売っている材料を使った、お手製マスクも登場した。この「手作りマスクを作ってみました」動画は、人気の高いもので再生回数は200万回を超え、「マイマスク」としての使用の他に、親しい人へマスクをプレゼントする動きも広がった。

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その後、「緊急事態宣言」の発令を受けて、アパレル企業は店舗休業を余儀なくされた。外出の機会が減ればファッション性のある洋服の需要は落ち込むことは安易に予想される。

4月、5月のファッションテーマは、各社そろって「お家時間を快適に過ごせる服」へと変わった。売れ筋も商品もTシャツ、ショートパンツといったリラクシング衣料が例年以上に動いた。

そうした中でマスクの存在意義も変わった。今までマスクというと風邪をひいた時や花粉飛散のピーク期に一時的に装着する物でしかなかった。それが今回のコロナ禍を期に、毎日必ず装着しなければならない必需品になったことは大きい。

もはやマスクは、シャツやジャケットと同じように、毎日使わなければならない商品となった。だからこそマスクとファッションとの親和性は俄然上がってくるのだ。

ファッション性が求められる時代へ

ここで話を整理してみたい。アパレル企業のマスクへの対応の「格差」とはいったい何だったのか。次の三点に要約してみた。すなわち、

(1)初期段階のマスク不足に向けて社会インフラとして取り組もうとする姿勢

(2)コロナ禍自体がいつまで続くかの予見

(3)異業種へ取り組もうとする新規開発意欲

だ。以上の三要素が、旺盛か、あるいは乏しいのかによって、アパレル企業のマスク対応の違いが現れたのだと思う。

先んじた企業はしっかりと夏機能の備わったマスクを供給出来ているし、冒頭で取り上げたユニクロのように、対応の遅れた企業はネーミングばかりで、着け心地の良くない粗悪なマスクを供給してしまっている有様だ。

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これから過度なマスク不足は生じることは無いだろうから、マスクへのこだわりも変わってこよう。これからは快適な装着感は必須でファッション性にも注目が集まってくると予測する。

もちろん今まで通りに使い捨てマスクを無頓着に利用し続ける層は大多数だろう。ただ、オシャレ心や個性をアピールしたいと感じる人達にとっては、新しいギミックが増えたといった感覚に近いのかも知れない。

新常態のエチケットとして、無理矢理装着するだけではなく、場所やその日のファッションに合った「マイマスク」選びが出来れば、マスク装着自体に楽しみを見出せていけるはずだ。