「私の家政夫ナギサさん」2話 多部未華子を見守る大森南朋=「おばさんデカ」における蛭子能収説

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ナギサさん、自信喪失(自信もって!)

「私の家政夫ナギサさん」(TBS系 毎週火曜よる10時〜)の視聴率は初回14.2%、第2回が12.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調。なにより見やすい。とっても気楽に見られるうえ、働くひとり暮らしにとって共感することがたくさん詰まっているドラマなんである。

製薬会社のMR(営業担当)として有能なメイ(多部未華子)は、仕事は充実している分プライベートは虚しい。部屋は散らかりっぱなしで恋人もいない。そんな彼女を心配した妹・ユイ(趣里)が家政夫・鴫野ナギサ(大森南朋)を呼んでくれた。

ナギサは男性ながら非常に繊細な仕事ぶりでメイの部屋はたちまちキレイに。お金さえ出せば、家事をやってくれて、煩わしい人間関係を抜きで仕事と独身生活を満喫できる合理的な家政夫システム。そのうえ、仕事に失敗して落ち込んで帰った夜は、慰めて、朝まで手を握っていてくれる。ビバ・ナギサさん! 

第2回は、朝、きれいになった部屋に母・美登里(草刈民代)がやってきて、ナギサさんが隠れていると(母には家政夫を雇っていることを内緒にしている)、美登里は部屋の片付け具合を「70点」と厳しく採点。ナギサさんは自信喪失してしまう。

意外と自己評価が低いのかナギサさん。優秀で予約が取れないながら、「おじさん」であることも気にしているようで、彼は彼で悩みがありそうだが、第2回ではまだ深堀りはされない。メインはまだまだメイの問題のほう。“男の子に負けない仕事ができる女性になる”という呪いの次は“やればできる”という呪いにもかかっていた。メイは世の女性のかかった呪いを一身に受けている。

男性女性に限らず、視聴者のニーズに応えてくれる展開

メイは、ライバル会社であるアーノルド製薬の営業・田所(瀬戸康史)に契約をとられてイラッとしていたら、なんとその田所がマンションの隣に住んでいたことを知る。

隣人であることを知られたくなくてマスクして顔を隠して帰宅するという注意を払っていたにもかかわらず、あるとき、後輩・瀬川(眞栄田郷敦)が、情報交換を兼ねてと田所との飲み会をセッティング。でも、その合コンみたいな飲み会のあと、二人きりで飲んだことで、田所とメイはなんとなく意気投合していく。少なくとも田所はメイに気がありそうだが……。

メイと田所がカウンターに並んで連絡先交換するところなんてすごくいいフンイキで、ふつーの恋愛ドラマみたいだった。これはこれで良し。1話はナギサさんに慰められ、2話では田所と会話を楽しむ。そう、家ではホッとしたいし、外では仕事の話も含めてなにかこう前向きな会話を楽しみたい。男性女性に限らず、そういうニーズに応えてくれる展開である。

メイの会社の人たちはハラスメントとか争いが皆無で、みんな協力的。メイはけっこう恵まれている。それでも、メイは「やればできる」の呪いに苦しんでいる。

ナギサさん=「おばさんデカ」の蛭子能収説

お試し期間を過ぎたナギサさんが、メイのジャケットのボタンを拾って届けに再びやって来た際、ボタン付けしながら、仕事のヒントになるアドバイスもしてくれる。その時間になんとなく満たされたものを感じるメイ。

1話のレビューで、ナギサさんはビューネくんの進化系と書いたが、歴史はさらにさかのぼり、ナギサさんとは、家政婦ドラマの金字塔「家政婦は見た!」(テレビ朝日系 1983年〜2008年)の市原悦子のもうひとつの代表作「おばさんデカ」(フジテレビ)における蛭子能収的なものかもしれない。

詳しく説明すると、「おばさんデカ」は市原悦子が刑事としてバリバリ働いていて、蛭子能収は家で小説を書きながら家事をやっていて、妻の仕事に助言するのである。そう、男が家事して女が働くドラマは1994年からもうあった。いつだって女性はそういうものを求めている。だから“夫”からしがらみを取り除いた“家政夫”にアップデートした「私の家政夫ナギサさん」が好まれるのは必然なのである。


さらに、「ナギサさん」の妙味は、登場人物が求めているのが、恋人とか夫や妻という存在ではなく、「お母さん」であること。メイと田所も「母」について語り合う。メイがいま、ナギサさんに対してメイが感じているのもどうやら「母」なのである。そしてナギサさんがなりたいと思っている存在も「お母さん」。でも、中年男性という彼の生物学的なカテゴライズが、「お母さん」になることを阻んでいる。

今後ドラマはメイ、ナギサ、田所の三角関係に…? と思いきや

ラストは、ドタバタのなかに、メイが彼に対して「おじさん」という意識を拭えないでいることを描く。メイ、ナギサ、田所の三角関係展開かと思っていたら、そうでもないのかも……。どこに向かうかまだわからないところが面白い。

第2話では、部屋がすっきり片付いても玄関にビニ傘が何本も置かれていることや、片付けてもあっという間に部屋が散らかってしまうリアリティーにも心が掴まれた。ドラマの途中でスポンサーのダスキンによる家事代行サービス「メリーメイド」のCMが流れて、興味津々。これ、CM効果絶大だと思う。
(木俣冬)

番組情報

TBS 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
毎週火曜よる10:00〜10:54
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/WATANAGI_tbs/