※写真はイメージです。

写真拡大

◆「会社に裏切られた気分です」
 新型コロナウイルス感染拡大を受け、雇用調整助成金の制度拡充や休業支援金の制度創設が行われている。しかし大企業で働く非正規労働者はこのような補償から漏れてしまっているのが現状だ。

 全国に飲食店やホテルを展開する企業のある店舗で働く50代の男性は、アルバイトとして週に5〜6日、一日10〜12時間働いてきた。毎月30万円以上の月収を得て生活費に充てていたという。

 しかし新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月25日にはアルバイトを出勤させないよう、会社が各店舗に通知した。男性は休業手当を支払ってほしいと訴えたが、会社はそれを拒否している。

「これまで会社のためにと思い、人手の足りない店舗にヘルプに行くこともありました。働き方改革で労働時間が削減された後も、多い時だと月に220時間くらい働いていました。それなのに、休業手当を払ってもらえず、会社には裏切られた気分です。正社員には払っているのに、アルバイトには払わないというのはおかしいのではないでしょうか」

◆中小企業への支援策は拡充されたが…

 勤め先から休業手当を受け取れない人に対する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」(休業支援金・給付金)が新たに創設された。月33万円を上限に休業前の平均賃金の8割を国が負担するものだ。

 しかし対象は、資本金5000万円以下、常時雇用する労働者の数が50人以下(飲食店を含む小売業)の中小企業の従業員に限られている。男性が働く飲食チェーンは、資本金5億円以上、従業員数およそ1500人のため、男性はこの給付金を受け取ることができない。
 
◆シフト労働者は休業手当を支払ってもらえない?

 労働基準法では、会社側の都合で労働者を休業させた場合、平均賃金の6割以上を支払わなければならないと定めている。それなのに、なぜ休業手当の支払いを拒否することができるのだろうか。

 首都圏青年ユニオンの原田仁希執行委員長によると、会社側は「アルバイトは毎月シフトを組んで働いている。まだシフトが決まっていなかったため、休業に当たらない」と主張しているという。

「企業が休業手当の支払いを拒む背景には、雇用調整助成金の問題があります。大企業でも、飲食業の場合はコロナウイルスの感染拡大でかなりのダメージを受けています。雇用調整助成金が最大で75%しか出ないため、会社側の負担が大きくなってしまうのです」

 企業が従業員に「休業手当」を支払うときには、国がその一部を負担する雇用調整助成金という制度がある。厚生労働省は6月12日、助成額の上限を1日8330円から15000円に引き上げた。さらに中小企業への助成率を最大で100%まで拡充した。

 一方、大企業では、助成率が最大75%に留まっている。そのため負担を嫌う企業が、休業手当の支払いを逃れようとすることがあるのだ。原田委員長は、「コロナウイルスの影響を受けている飲食店・観光といった業種については、助成率を100%にするといった対策が必要」と指摘する。

◆商業施設が休業 会社には責任がない?

 デパートや商業施設自体が休業してしまったため、休業手当を支払う必要はないと主張する企業もある。

 ビル管理・清掃・警備を請け負う企業は、航空会社から業務委託を受け、空港のラウンジを運営していた。しかしコロナウイルスの感染拡大でラウンジが閉鎖。およそ300人の非正規労働者が仕事を失うこととなった。

 週に3〜4日、一日6〜7時間働いていたというアルバイトの男性(20代)は、「およそ9万円の収入を家計や学費に充てていました。ラウンジが閉鎖になり、非常に困っています。再開の見込みが立たないので、仕方なくスーパーで働き始めました」と話す。

 同社は、ラウンジの閉鎖は航空会社が決めたことであり、アルバイトに給与を補償する責任はないとしている。

「(※編集部注:アルバイトの休業は航空会社が)ラウンジの営業を令和2年4月11日から『当面の間』休止することを決定され、その旨、当社に通知されたことによるものです。

 そのため、当社は、今般の休業は『使用者の責に帰すべき事由による休業』(労働基準法第26条)、すなわち、当社に休業手当の支払義務が生じる休業には該当しないものと認識しております」

 ユニオンは雇用調整助成金を活用して休業手当を支払うよう、企業側と交渉を続ける意向だ。

<取材・文/HBO編集部>