新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業がリモートワークを始めました。通勤時間の削減など利点は多いものの、コミュニケーション不足で部下の管理が難しいなどデメリットもありますよね。そこで、上司がリモートワークで部下を支援するための7つのポイントを組織改革コンサルタントの吉田裕児さんに聞きました。

※本稿は吉田裕児『部下が変わる本当の叱り方』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/whyframestudio)

■‐綮覆聾従を受け止めて安心安全な場を作る

リモートワークがはじまり、「部下が思ったように動いてくれない」とイライラしていませんか。

慣れないリモートワークをはじめたばかりだと、うまくいかないことばかりでフラストレーションが溜まります。しかし、現状を嘆いても部下を責めても何も変わりません。上司の仕事は目的・目標を達成するために部下を動かすことです。そのためには、まず部下が思ったように動いてくれない現状を受け止めます。そして、「部下を取り巻く環境がどうなっているか」「部下の心の状態がどうなっているか」をよく観察して、うまくいってないことをひとつひとつ直していきましょう。

もしかしたら、パソコンの操作がわからないのかもしれません。これは、ペットボトルの水を飲もうとしても飲めない幼い子供のようなものです。そんなときはオンラインで勉強会を開き、上司も部下も一緒になってマスターしていきましょう。

リモートワークになった場合でも、不安を取り除き安心させることが大切です。部下に「失敗OK、安心して取り組んでください」というサインを送りましょう。

一方上司は、リモートワークについて知ったかぶりをせずに、わからないことは素直に詳しい部下に聞いたり、オンラインでのコミュニケーションがよりうまくいくようなアイデアをメンバーから募集したりしてください。上司が問題を一生懸命に解決している姿に、部下は心を打たれ協力したくなります。

■朝礼と夕礼の時間を決めて実施する

もし、あなたが在宅勤務で仕事をしていたなら、どんな仕事のはじめ方をしますか。オフィスに集まって仕事をはじめることや終えることに慣れてしまった私たちは、リモートワークになると、どうしても仕事の始まりと終わりの時間が疎かになってしまいます。そこで、リモートワークでも会社にいるときと同じように、始業と終業のタイミングに合わせて朝礼と夕礼を実施します。

朝礼ではチームの情報を共有します。例えば、上司のあなたから「チームの目標」を発表します。そして目標を達成するために今週行うこと、今日行うことを決めていきましょう。
部下からは支援して欲しいことや困っていることなどを発表してもらい、誰が何をするのか決めていきます。

部下からも1週間の予定や今日の予定を発表してもらいますが、時間がないときにはチャット上にコメントしてもらいます。1週間と毎日の目標を見える化しておくことで、上司も部下も意思が統一できます。

決められた時間(15分がベスト)で終わらせ、問題がある場合は個別にミーティングを行い解決していきます。

夕礼では、本日の仕事の進捗を発表してもらい、1日やってみて処理できなかったことがあれば、上司が預かる課題なのか部下が実施する課題なのかを振り分けます。解決できない課題は、緊急でなければ翌日に処理します。朝礼と夕礼で、部下のタイムマネジメントの支援と仕事の明確化をしてあげましょう。

■チーム全員の意識を揃える

部下は、これから会社がどうなっていくのか不安になっている可能性があります。リモートワークでは、会社の状況がわからないので部下は不安になりがちです。上司のあなたは、できるだけ会社の状況やこれからの展望と部下にどうして欲しいのかを伝えてください。

例えば、朝礼で「新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートワークでの業務をしばらく続ける方針です。○○プロジェクトについては、予定通り進めるので準備や計画を進めてください。会社としては皆さんにできるだけのサポートをするつもりです。状況に応じて対応してもらうこともあります」と伝えて、メンバー全員の意識を統一します。こうすることで部下は安心することができます。

■せ纏の締め切りを設け緊張感を持たせる

仕事に期限がないことで、つい後回しにしてしまったことはないですか。人はX‐Day(期限)がないと目先の業務ばかり優先してしまいます。だから、どんな仕事にも期限を決めて取り組みましょう。

部下が自主的に期限を決めてくれればいいですが、もし、決められないようならば、上司のあなたからこの日ではどうかと問いかけ、最終的には部下に決めさせてください。ここで大事なことは、期限を決めて部下に緊張感を持たせることです。上司の強制で部下を縛ってはいけません。そのためには、もし期限を守れなかった場合でも、「ダメじゃないか!」と叱るのではなく、部下に決めさせてください。さらに、「なぜ?」ではなく、「何があったの?」と理由を掘り下げて問題を解決していきましょう。

X‐Day(期限)を決めることは、時間の目的地みたいなものです。間に合わなければ、その都度修正していきます。ただし、お客様に迷惑がかかる場合には、部下の能力に合わせて余裕をもって期限を設定してください。

■ジ斥佞反瓦離ャッチボールをする

オンラインの会話では、相手と自分のどちらが先に話せばいいのかわからなくなってしまいがちです。

そこで、まずは「上司が質問を投げかけて部下が答える」という順番を作ってみましょう。

上司ばかりが話していては、部下は話すことができません。部下が話しやすいように、「○○さん、そうだと思わない?」の質問言葉や、「そうだよねー」というような共感言葉を使ってみましょう。

他にも「話していいよ! 話してみて!」と、手を使ったジェスチャーで話すタイミングを伝えます。話している途中でも「聞いているよ! え、そうなんだ!」と頷きながら、共感や驚きなどをジェスチャーで表現します。オンラインでも、質問言葉や共感言葉、そしてジェスチャーを使って話しやすいようにして、部下の音声が途切れないようにしてあげましょう。

これは、部下と「言葉と心のキャッチボールをする」イメージです。「言葉と心のキャッチボール」はオンラインだけでなく、直接会ったときも大切なので忘れないでください。部下の笑顔が100倍になります。

また、部下の沈黙を恐れないでください。沈黙は考えている時間です。部下が発言しようとするまで待ってください。もし、これは長いなと感じたときは、「○○さん、どう?」と優しく問いかけます。ミーティングの際、オンラインでは全員の顔が見えていますので、何か言いたげな表情や手が挙がりそうな仕草を察知して「○○さん、どうですか?」と指名してあげることも必要です。上司は沈黙を恐れず、部下に考えさせ、タイミングを見て発表させることが重要です。

■1日1回、不定期なコンタクトを

人は誰かから見られていないと怠惰になり、誰かと一緒にいないと不安になる傾向があります。リモートワークは、まさしくこの状態です。

朝礼や夕礼で始業と終業の時間管理はできますが、その中身については部下の自己管理に任せることになります。部下を信じることが前提ですが、怠惰にならないように上司から不定期なコンタクトをとるようにしましょう。いつくるかわからない上司からのコンタクトは、部下に緊張感を持たせます。この緊張感が怠惰になるのを防いでくれます。

ただ、コンタクトの内容は部下を責めるためのものではありません。メールで済みそうなことでも、オンラインで対話します。ブレイクタイムも兼ねて、上司から雑談をしながら部下の在宅勤務の環境や生活状況などを話してみましょう。緊張感ばかりでは心が折れてしまいます。

部屋の環境や食事のことなども聞いて、できるだけいい環境にすることや健康的な毎日が送れるようにアドバイスしてください。

人はつながりの生き物です。話をしないと「上司は何を考えているのだろうか? 自分はこれでいいのか?」と疑心暗鬼になってしまいます。あくまでも部下の話を聞くことが前提で、上司のあなたも「自分はこんなものが食べたい」とか、「こんな映画がよかったよ」など、プライベートの話をして部下の話を引きだしてあげましょう。

気になるなら1日1回ではなく、回数を増やして部下の心のサポートをしてください。「時間の長さではなく声かけの回数」が大事です。

■「不定期コンタクト」の注意点3つ

ひとつ目は、知り合いのO社長が教えてくれた話ですが、部下の「集中タイム」には不定期なコンタクトはしないことです。「集中タイム」とは、時間を決めてその時間は仕事に集中できるように誰も連絡をしない時間です。誰からも連絡がこないという安心感と開放感で集中力が高まり部下の生産性は高まります。

2つ目は、部下が5人以上いる場合は、上司にとってもコンタクトの時間が負担になってしまうことです。この場合は、サブリーダーを決めてコンタクトを任せましょう。ひとグループは3〜4人程度として、サブリーダーから部下の相談に乗ってあげるようにしてください。上司のあなたはサブリーダーの相談に乗ってあげればいいわけです。

3つ目は、部下が異性の場合、プライベートの話をするとセクハラに発展する可能性があることです。オンライン画面を仮想背景にして本人だけが映るようにし、部屋のことや身体的なことは話題にしないようにしましょう。

■部下の1日をリセットさせる

何か問題を抱えたまま仕事が終わらず悶々とした状態で、果たしてゆっくり休むことができるでしょうか。

吉田裕児『部下が変わる本当の叱り方』(明日香出版社)

夕方、部下の仕事が終わらなかったり問題が発生したりしたとき、そのままにしておくと部下は悩んだままプライベートの時間に入ります。すると安心して休むことができません。そして、これが続くと心の病になってしまいます。

では、どうすればいいのか。例えば、みんなの前では言いづらいことを吐きださせるように、夕礼後に個別のミーティングを設けます。普段なら職場で上司に気軽に相談できることもリモートワークでは遠慮がちになります。

上司のあなたは、部下からあがってくる悩みを聞き、一緒に考えます。このときは「私たちは、どうしたらいいだろう?」「今回の場合、AとBのどっちがいいと思う?」の問いかけで考えさせます。そして、上司のあなたが最終的に部下のやることを決めて、「これでどうかな」と同意をとります。

一方、部下同士のトラブルなど、部下の手に負えない問題は、「それは私が預かる」と伝え、部下の問題から上司の問題へ変えてあげましょう。

最後に「お疲れさま」の一言を言って、部下が気持ちに区切りをつけられるようにします。これなら部下も安心してゆっくり休むことができます。

この7つのポイントさえ押さえておけば、リモートワークは目的・目標を達成する新しい働き方になります。最初は問題が発生するかもしれませんが、その問題を解決したとき、最強のチームが誕生し、上司のあなたは器をさらに広げ、信頼される慕われ上司となるでしょう。

----------
吉田 裕児(よしだ・ゆうじ)
組織改革コンサルタント
「人の可能性を最大化させ、日本を再び世界のリーダーにする」という未来実現のために、全国の企業に対し「会社の未来を担う次世代リーダーを育成する」ための活動を行う。また、一部上場企業で35年間、3000人以上の作業員やスタッフを指導した経験やエピソードをもとに、強い組織をつくるためのメソッドを、研修や書籍、自身のブログなどで発信している。
----------

(組織改革コンサルタント 吉田 裕児)