義務教育を受ける児童に1人1台端末を与え、学校に高速大容量の通信ネットワークを整備することで、公正に個別最適化され、 資質・ 能力を育成 できる教育環境を実現するため、文部科学省が推し進めている「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」。

当初は23年度中に1人1台端末を配備する計画だったが、新型コロナウイルスの影響で補正予算が計上され、プロジェクトを前倒しで進めている自治体や教育機関が多いのではないだろうか。

こうした中、本当に役に立つIT環境を整備するためにどうすべきか、SB C&S ICT事業本部 販売推進・技術本部 販売推進統括部 新規ソリューション推進部 部長 嶋崎善夫氏に話を聞いた。

授業形態に合わせて選ばれる「1人1台端末」

SB C&Sでは数年前から教育事業ICTの支援を手掛けているが、GIGAスクール構想の専門部隊ができたのは今年4月のことだ。「文教市場は子どもたちの教育課程に合わせてさまざまなコンピューターの導入が考えられますが、GIGAスクール構想を踏まえ、今後はさらに盛り上がりが見込まれることから、会社として新たな組織が形成されました」と、嶋崎氏は語る。

SB C&Sはメーカーではなく、ディストリビューターであるため、パートナーを通して、GIGAスクール構想の入札に参加している。ビジネスは始まったばかりだが、既に数万台規模の案件が決まっており、右肩上がりで伸びているという。

GIGAスクール構想では、1人1台端末として、iPad、Windows搭載のノートPC、Chrome OS搭載のノートPC「Chromebook」のいずれかを選択できる。小学校では画面をタッチする場面が多いことから、iPadが選ばれる傾向があり、また、中学校ではキーボードで文字入力する場面が多いことからノートPCが選ばれる傾向があるそうだ。「端末は、授業の設計に合わせて選ばれています」と、嶋崎氏は話す。

また、Googleも米国を皮切りに教育市場に注力を始めており、オフィスソフト、メール、ビデオ会議などを含むクラウドサービス「G Suite」で教育向けのサービスを展開しており、日本でもGoogleの思想が広がってきているという。

ソフトウェアに関しては、管理のしやすさもあって、クラウドサービスが多くなっているとのことだ。

SB C&Sが「1人1台端末」として提供するiPadのパッケージ。文部科学省の施策パッケージで1台当たり4.5万円の補助が出る

SB C&Sが「1人1台端末」として提供するWindowsノートPCのパッケージ

SB C&Sが「1人1台端末」として提供するChromebookのパッケージ

緻密な需給予測で確実に物品を確保

嶋崎氏は、GIGAスクール構想に関わるビジネスの特徴について、「GIGAスクール構想のプロジェクトでは、PCをはじめ、大量のモノを短期間で納品しなければなりません。新型コロナウイルスの影響でモノが不足しており、確保するのが難しくなっています」と話す。

必要な機器は端末だけではない。キーボード、マウス、画面保護フィルムなどのアクセサリーも必要となると、これらも何万個規模でそろえなければならない。

加えて、GIGAスクール構想の「1人1台端末」は独自の仕様となっているため、売れ残ったからといって、企業に販売することは難しい。充電保管庫なども、大量にPCを利用する学校ならではの備品であり、一般の企業ではそうそう利用しないだろう。よって、ディストリビューターとしては、必要なモノを確保すること以上に、売れ残りが出ないようにすることも重要というわけだ。

こうした中、SB C&Sでは月別やメーカー別など、きめ細かに需給予測を立てることで、モノを確実に手配しているそうだ。嶋崎氏は「これまでのビジネスの経験とノウハウも踏まえ、需給予測の正確さには自信があります。もし、不足しているモノがあるなら、何でも相談してください」と語る。

GIGAスクール構想においては、確実にモノを収めてくれるITベンダーを選ぶこともスケジュールを円滑に進める上でカギとなってくるようだ。いかんせん、早く納品をして、1日でも早く子供たちに円滑な授業を進めていく学校現場の想いに応えなければならない。

モバイル端末が抱えるセキュリティのリスクに備えて

嶋崎氏にGIGAスクール構想を進める上でのアドバイスを聞いたところ、「セキュリティは特に考慮していただきたいです」という答えが返ってきた。学校に限らず、モバイルデバイスを利用するようになると、紛失や盗難などのリスクが高まる。そこで必要となる仕組みとして、嶋崎氏はモバイルデバイス管理(Mobile Device Management:MDM)を挙げた。

MDMの主要機能としては、「端末の一括設定」「端末の管理」「端末の遠隔操作」「セキュリティ対策」「ソフトウェア管理」がある。こうした機能によって、モバイルデバイスが紛失や盗難に遭った時の情報漏洩を防ぐこと、端末管理の効率を上げることなどが実現される。

また、おススメのネットワーク機器について、嶋崎氏に聞いてみたところ、「保証があるメーカーの製品であれば、どれも問題ないと思いますよ」とのことだった。というのも、山口県の萩市の廃校でさまざまなメーカーの機器を用いて検証を行った結果、大きな問題は発生しなかったそうだ。

ともすれば、入札は価格ばかり目が行きがちだが、嶋崎氏は「価格だけでなく、『どんな授業をしたいのか』『その環境ではどんな授業ができるのか』といったことをよく検討して、円滑な授業を実現できる環境を構築していただきたいと思います」と話す。

加えて、令和4年度までに、ICT支援員が4校に1人程度配置されることになっているので、「ITの活用に関してはICT支援員のお力を借りて、先生方はITを活用した授業の設計や授業そのものに専念できる環境を整えることが、これからの新時代に求められる教育の在り方です」とも、嶋崎氏はアドバイスしていた。