台湾・台北で開催された反逃亡犯条例デモから1年を記念する展覧会(2020年7月3日撮影)。(c)Sam Yeh / AFP

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【AFP=時事】香港で施行された「香港国家安全維持法」が今、台湾の人々を震撼(しんかん)させている。中国政府の次の狙いは、民主主義体制をとる台湾ではないかとの懸念が広まっているのだ。

 1949年、毛沢東(Mao Zedong)率いる中国共産党との内戦で敗れた中国国民党は台湾に逃れた。以来、中国政府は必要なら武力行使も辞さない構えで、中台の統一を目指している。

 台北市にある国立台湾大学(National Taiwan University)の学生、シルビア・チャン(Sylvia Chang)さん(18)は「今回の法律で中国がもっと嫌いになった」と言う。「中国は(返還後)50年間は香港を変えないと約束していたのに、ますます高圧的になっている。今日の香港が、明日の台湾にならないかと不安だ」と語った。

 中国は長年、アメとムチを織り交ぜて台湾に接してきた。アメには、台湾に市民的自由と一定の自治を認める香港同様の「一国二制度」モデルを適用するという約束も含まれている。

 しかし台湾の二大政党はいずれも、この申し出をだいぶ前に拒否している。

 今回の香港国家安全法の施行は、多くの台湾人がわずかに持っていたかもしれない中国政府に対する信頼を、打ち消した。今ではSNSのプロフィルを根拠に起訴されかねないと考え、香港を経由することすら不安に思う人もいる。

 台北・淡江大学(Tamkang University)の政治評論家アレクサンダー・ファン(Alexander Huang)氏は香港国家安全法について、「中国の印象を非常に悪くし、香港の人々との距離はいっそう広がっている。台湾の人々との距離については言うまでもない」とAFPに語った。

 台湾のソーシャルメディアは、香港の民主化運動を支持するメッセージで埋め尽くされている。中には台湾の独立を主張する投稿や、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)や新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)での中国当局による人権侵害を指摘する内容もある。

 ソーシャルメディアで香港民主派寄りのメッセージを頻繁にシェアしていたという雑誌編集者のウェンディ・ペン(Wendy Peng)さん(26)は、今後は香港を訪れることを避けるだろうと語った。

「国家安全法で、中国がどこまでやるか分からない。今でも底が見えず、ひょっとしたら底などないのかもしれない。台湾が次の標的になる可能性はあると思う」

 ペンさんの不安には根拠がある。

 中国政府は、香港に初めて治安関連の出先機関「国家安全維持公署」を開設すると同時に、普遍的管轄権を新法に盛り込んだ。第38条は、治安上の犯罪は犯罪地や容疑者の国籍を問わず適用されるとしている。

 香港警察当局はすでに香港、台湾、チベット、ウイグルの独立を支持することは違法だと明言している。

 大学職員のパトリック・ウー(Patrick Wu)さん(31)は、今後は香港で飛行機を乗り換えることすら避けるだろうと語った。

「この法律はいわば中国が好きなように定義し、解釈する一網打尽法だ」「ソーシャルメディアに残した『いいね!』やメッセージによって起訴されるかもしれない」

【翻訳編集】AFPBB News

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