先日、再開されたJ1リーグ。NHKのBS1では、川崎フロンターレ対鹿島アントラーズ戦が中継された。NHKのBSを視聴できる世帯がどれほどなのか、よく知らないが、DAZNで視聴した人との比較では、どちらに軍配が挙がっただろうか、気になる。

 川崎対鹿島に限れば、DAZNはNHKBSに数で劣るだろう。しかし、DAZNはすべての試合を中継している。その他のチームの熱狂的なファンは、NHKBSの川崎対鹿島には目もくれず、DAZNでそれぞれの贔屓チームの戦いぶりに目を凝らしていたに違いない。

 だが、そうではないサッカーファンはいくらでもいる。DAZNの加入者は100万世帯に届いていないという。このうちサッカー観戦を目的で加入している人は半分いないだろう。3、4割だとすれば、視聴可能世帯はわずか30〜40万になる。

 サッカーには関心はあるけれど、DAZNには加入していない。NHKBSの中継は、けっして少数派ではないこうしたファンにとって実にありがたい存在になる。だがそのJリーグ中継の回数は、DAZNの開始とともに数を減らしている印象だ。地上波のNHK総合ではJリーグ中継をしばらく見ていない気がする。民放の場合はもっとお寒い状況だ。

 テレビよりネット。スポーツ観戦はここ何年かの間にそうした傾向に拍車が掛かっている。だが、その流れに乗れていない人の方が現状では多数を占める。好きなものは好きとばかり、DAZNに加入したファンは少数派に属する。これまでJリーグを普通に好きだった人が、お茶の間で見られなくなっているという現実。けっこう気になるのだ。

 さらに言うなら、テレビには偶然性がある。リモコンのスイッチを入れたら、たまたまサッカーをやっていて、気がつけば1試合まるごと見てしまった。それを機にファンになったーーというケースは少なくない。

 五輪はその典型で、新しい競技と出会ういい機会になる。何を隠そう小学生の時に見たメキシコ五輪で、日本のサッカーが銅メダルを獲得した試合を見て、急にサッカーがしたくなり、直ちにサッカーボールを買いに行った過去が、僕にはある。サッカーとの出会いは偶然の出会い形で訪れた。

 それがテレビ中継ではなくネット中継だったらどうだったか。ネット中継は、はじめから観戦する強い意志が必要になる。すでに好きになっている人のためにある世界だ。有料とならばなおさらである。気軽に入っていくことはできない。視聴のハードルは高い。偶然性は低くなる。したがって、新たなファンの獲得、普及発展には繋がりにくい。テレビに比べて。

 6月末に今季初めて開催された国内女子ゴルフツアー、アースモンダミンカップの中継は、初の試みとしてネット(YouTube)のみで行われた。視聴料は無料。月曜日に順延された最終日を除き、4チャンネルで構成されたこともあるが、視聴者数は677万余りに達したという。

 視聴者の満足度は高かったはずだ。1番から18番までの完全生中継。14番、15番からの4、5ホールを録画で見せるだけの民放の通常放送では絶対に味わえない、ゴルフという競技の奥の深さを見せつけられた。特定のホールだけを中継するチャンネルもあれば、インタビュー中心のチャンネルもある。選手も若手選手を中心に粒ぞろいでバラエティに富んでいる。

 最大の目玉は渋野日向子選手だが、彼女が予選で消えても、残念な感じにならないところに強みがある。日本のスポーツ界の中で、いま最も活気のある競技といっても言い過ぎではない。

 日本女子プロゴルフ協会は、今後ともネット中継の可能性を最大限、探っていくという。しかし、こう言ってはなんだが、渋野日向子選手が優勝を飾った昨季の全英女子オープンは、テレビ中継だった。その熱戦の模様をたまたま見ることになった人は、ものすごく多くいた。同様に、それをきっかけに渋野ファンになった人も、ものすごくいた。ゴルフをやってみたくなった子供、あるいは子供にさせたくなった大人も同様に多くいたと思われる。現在の渋野選手の姿に、テレビの潜在能力を見る気がする。その波及効果で、いまの女子ゴルフ界が盛り上がっていることも事実なのだ。

 その競技に特段興味がない人を、こちらに向かせてしまう力がテレビにはある。スポーツの普及発展に欠かせないツールだと思うが、問題はいまの若い世代の人が、テレビを見なくなってきていることだ。テレビを持っていない人もいる。スマホがあれば、それで十分という若者たちは、好奇心の幅をどのような手段で広げようとしているのか。

 小学生の子供が、急にサッカーボールを欲しくなるような、衝撃的な出会いがあるようには思えない。 開催できるか否か、雲行きが日に日に怪しくなっている東京五輪だが、開催する大義があるとすれば、スポーツの普及発展だ。マイナーと言われる競技ほどネットではなく、NHKの地上波で流して欲しいと考える。スポーツ愛好家のための大会にしてはダメだと思う。そしてそれは現在のJリーグについても言える。こうした不健康な時代だからこそ、新たなファンを開拓したい。ネット(DAZN)とテレビが、バランスのいい関係を築くことを期待したい。