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新型コロナは、最も大きな打撃を受けている産業の一つである自動車産業にとっても、大きな転機となっている。生産の一時停止・延滞、需要の減少、サプライチェーンの断絶など数々の試練を乗りこえ、その先に見えるのはどのような未来なのか。

国内・国外の大手メーカーの現状と対応策、中国の自動車市場がすでに回復基調にある背景などから、今後の自動車業界の展望や復興や成長に必要な要素を考察してみよう。

■苦戦を強いられる国内・海外メーカー

「世界最大の自動車工場」である中国のロックダウンや工場閉鎖により、生産ラインが一時停止したではなく、消費者の購買意欲減退で売上が著しく落ち込んだ。
このような状況を受け、3月下旬の時点までに上場自動車関連企業23社が業績予想を下方修正した。

コックス・オートモーティブや自動車製造業者および貿易業者協会(SMMT)などの3月下旬のデータによると、米国では新車販売台数が前年比約35%減、英国では約44%減、イタリアでは85%減、スペインでは69%減となっている。日本でも28.6%減であったことが、日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の4月の統計から明らかになった。

国際市場調査企業IHSマーククイット(Markit)は世界の2020年の自動車販売数は前年比22%減少し、米国ではリーマンショックの影響で売上が減少した2010年以来、最低水準である26.6%まで落ち込むと予想している。

■断絶状態のサプライチェーン 回復に要する期間は?

部品の生産から販売までサプライチェーンも、世界規模で断絶状態にある。パンデミックの震源地となった中国の湖北省が、中国の主要な自動車生産工場の1つであったことや、自動車産業の80%以上が中国をサプライチェーンの一部に組み込んでいることも、自動車産業にとって痛恨の一撃となっている。

湖北省以外の地域の自動車部品サプライヤーの90%以上が、2月下旬には生産を再開している。しかし、中国自動車工業協会(CAAM)の報告によると、「世界規模でのサプライチェーンの修復には少なくとも3ヵ月〜半年を要する」との見方が強い。

コロナショックは雇用市場にも、大きな影響をおよぼしている。大型民間航空機向けエンジン製造の世界三大大手でもあるロールスロイスは、航空産業と自動車産業の両方で大打撃を受け、最大8,000人の大リストラを余儀なくされているという。

■復興に向けた動きと戦略 コロナ消費刺激策

各メーカーは広告の増加やサービス・支払いオプションなど、消費者の購買意欲を高めると同時に、安心して購入に踏み切れるよう特別措置を講じている。

例えば、フォードは4月以降に購入した車の支払いを最長半年先に伸ばせる「ピース・オブ・マインド」、ヒュンダイは顧客が失業により支払いが困難になった場合、支払いを延期できる保証を提供している。

また米市場調査企業カンター(Kantar )のデータによると、3月23日〜29日にわたり30秒間のTVコマーシャルが全体で8%減ったのに対し、自動車コマーシャルは13%増加した。

■次世代自動車の開発・販売が転機となる?

ロックダウンによる交通量の急減により、CO₂排出量の低下など温暖化対策に貢献しているという報告から、今後クリーンエネルギー自動車(CEV)への注目がさらに高まるものと予想される。

世界最大の電気自動車(EV)市場である中国は、コロナ不況対策の一環として、EV充電インフラに15億ドルを投じ、20万台のEV充電器を設置する計画を発表した。また、英国やドイツ、オランダ、ノルウェーなど、欧州では今後5〜20年の間にガソリンおよびディーゼルの新車販売廃止を決定した国が多い。

このような潮流を考慮して長期的観点から見ると、次世代自動車の開発・販売が、完全復興への転機となる可能性が考えられる。

■中国市場が急回復中の理由とは?

他国より一足先に生産を再開した中国の自動車市場は、すでに回復基調にある。中国自動車産業協会(CAAM)のデータによると、4月の月間自動車販売は207万台に達し、前年比4.4%増と22か月ぶりの増加を記録した。特に商用車の販売は31.6%増と過去最高の534,000台、大型トラックの売上高は61.0%増の191,000台と大幅に伸びた。

この事実は、消費者の自動車に対する購買意欲に、パンデミックの影響がそれほどおよんでいないことを示唆している。フランスの市場調査企業キャップジェミニ(Capgemini)が世界11ヵ国における、コロナによる購入意欲への影響を調査したところ、回答者1万1,000人中35%が「年内の自動車購入を検討している」と答え、特に中国とインドではそれぞれ約6割が購買意欲を示した。

自動車購入に積極的な消費者の存在が、自動車産業にとって今後の大きな期待材料となる一方で、政府による強力な支援対策も、自動車産業の未来を左右する。中国政府は前述のEV充電インフラのほか、EV減税・補助金制度の延長、排出ガス規制の緩和など、自動車販売を後押しする対策を導入している。

■新しい生活様式に向けた需要の変化への対応

アフターコロナの社会は、人の暮らし方という概念自体が大きく変容を遂げていく可能性が高い。メーカー側は、コロナの広範囲かつ長期的影響を踏まえ、消費者の生活環境や思考、需要の変化などに迅速に対応するなど、「新しい社会にマッチした車づくり」への強い意識が必須となるのではないだろうか。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)