洪水警報時にはパチンコ屋に避難せよ!? 車の垂直避難に適する場所とは

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クルマの「垂直避難」ってどんな避難方法なの?

 近年、突然の大雨などにより河川の氾濫が発生した結果、各地で洪水・土砂災害などの被害が生じています。2020年7月4日未明には、熊本県南部を流れる球磨川が氾濫したことが大きな話題になりました。大雨による道路の冠水が予想されるとき、クルマはどこに避難させれば良いのでしょうか。

大雨・洪水警報が発令された場合にはどこに避難するのが最適なのか

 2019年の秋には、台風15号や台風19号に代表される大型台風が日本各地に甚大な被害をもたらし、首都圏でも大きな川が氾濫し、避難が間に合わなかったクルマが浸水や冠水する被害が発生しています。

【画像】水が吹き出したマンホールはキケン!クルマに避難する場合の対策法(17枚)

 都市部などのマンションに併設されている地下駐車場や低地にある駐車場にクルマを止めている場合は、川の氾濫など大きな災害に至らなくても冠水、浸水してしまう可能性も十分にあります。

 JAFのユーザーテストでは、「車庫が周囲より低い位置にある場合は、高い位置に一時的に移動させるなど、安全を確保しておきましょう。すでに大雨が降っているようなときは必ず安全を確保したうえで駐車場や車庫の様子を確認しましょう」と警告していますが、この高い位置を見つけるのは大変です。

 そこで推進したいのがショッピングモールやスーパーマーケット、パチンコ店など商業施設の立体駐車場にまだ雨が比較的弱いタイミングで(移動に危険がないレベルの雨量)クルマを移動させることです。

 あまり知られていませんが、自然災害の発生が多い地域を中心に、水害が予測されるような場合、全国のパチンコ店の駐車場が台風洪水を避けるための一時避難場所として開放されます。

 神奈川県内神奈川県遊技場協同組合の災害時帰宅支援ステーション協力店舗一覧には400店舗が登録され、「災害時帰宅支援ステーション」として神奈川県と支援に関する協定が結ばれており、トイレの利用や災害備蓄の飲料水や食料、Wi-Fiや電源が無償で提供されます。

 なお、すべての店舗に立体駐車場があるとは限らないのでクルマの一時避難が可能かどうかは事前に確認しておくことをお勧めします。全国300店舗のパチンコホールを運営するマルハンはどのような対応でしょうか。

 本社経営企画部広報課の担当者は次のように話します。

「災害リスクが高い地域にある店舗は都道府県が窓口になって災害支援をおこなっています。また、協定などを結んでいない地域でも現場の店舗に依頼があれば迅速に対応しています。

 貸し出し用の充電器もたくさんあるほか、飲料自販機は災害モードにして無料で利用が可能になります。備蓄の食料品が切れてしまったら景品の食料品やお菓子を提供することも可能です。

 夜間や早朝など従業員が不在の時間帯などでは十分な対応ができない場合もありますが、災害からの一時的な避難の目的であれば立体駐車場を使って頂いて構いません」

スーパーやショッピングモールも駐車場を開放

 2019年10月の台風19号襲来の際、筆者(加藤久美子)はクルマ2台を近所にあるオーケーストア(首都圏1都3県に展開するディスカウントスーパー)の立体駐車場に避難させました。家のすぐ裏にある鶴見川の支流が警戒水域を超えており、クルマが冠水するかもしれないという状況だったのです。

 その際、最寄り駅近くにあるスーパーの立体駐車場は店舗自体が営業していないことで駐車所も閉鎖されていましたが、一か所だけオーケーストア川和町店の駐車場が入庫可能でした。

 店舗自体は台風で休業していたので、念のため精算機に掲示された管理会社に聞いてみたら、「水害から避難するクルマのためにゲートを開放しています。お使いいただいて結構です」との神対応でした。

 また、こちらは一般利用も可能な時間駐車場を兼ねているため、停電になってゲートが開かなくなるとクルマが出られなくなる危険がある、という理由からもゲートを開放していたそうです。

 駐車場に入ってみると、2階・3階はほぼ満車。屋上は台風で飛んで来るかもしれない飛来物を避けるためか数台のみ駐車していました。

 オーケーストア以外にも色々調べてみると大規模な水害発生が予想される地域では、洪水や高潮からクルマと住民を守るための避難場所として、商業施設などと協定を結んでいる自治体が少なくないことが分かりました。

 例えば東京都葛飾区の場合、公共施設以外にイトーヨーカドー四つ木店とアリオ亀有については「民間施設とも協定を締結し、水害発生時には駐車場を一時避難場所として使用できるものとしている」と紹介しています。

 その理由として「これらの施設は浸水域内の施設であるが、浸水しない高さにある駐車場などを活用しており、アリオ亀有は約2000台、イトーヨーカドー四つ木店は約400台の駐車が可能である」としています。

 また、栃木県佐野市では2019年10月の台風19号で堤防が決壊し多くのクルマが水没したこともあり、2020年6月に大型商業施設「佐野プレミアム・アウトレット」と施設などの提供に関する災害協定を結びました。近隣で洪水災害の恐れがある場合、施設の立体駐車場(最大3300台)を一時避難場所として市民に開放されます。

地域によっては民間企業と行政が災害支援協定を結んでいるところもある

 パチンコ店やスーパー、ショッピングモールの駐車場など、立体駐車場のある施設では多くが大規模水害の発生時にはクルマの一時避難場所として機能しそうですが、すべてがそうとは限りませんので、各市町村の災害対策関係の部署に確認するか、もしくはそれらの商業施設などにあらかじめ確認することが確実と思われます。

 なかには自治体と災害支援協定を結んでいなくても、避難場所として開放される場合もあります。

 そして、大切なことは雨風がそれほど強くないときに避難させることです。昨今は天気予報の精度も高まっており、記録的な大雨になる予報も1日から2日前までには出されることが多いので、まだそれほど大変な雨になっていないタイミングで、大切な愛車を垂直避難できる安全な場所に移動させておくことをお勧めします。

 また、災害時は「火事場泥棒」が多く発生する危険もあります。施錠はもちろん、出来うる限りの対策をとっておきましょう。