婚活中です。まだお相手がいませんが、34歳という年齢を考えて卵子凍結しておいた方がいいかなと思っているのですが、どうでしょうか。アドバイスお願いします」(34歳・派遣・Kさん)というご相談です。認定不妊カウンセラーの笛吹和代さんにうかがいました。

「社会的卵子凍結」とは?

相談者さんは現在34歳で婚活中ということなので、結婚されるのは早くて35歳と仮定しましょう。35歳という年齢は妊娠率が低下していく歳なので、今のうちに卵子凍結しておくことは、将来の妊娠にとってとても有用だと思います。

実は今回のコロナ禍で、このような未婚の方の卵子凍結に関する相談が増えました。おそらく、収束時期が見えないこと、妊娠に伴うリスクが高まってしまったこと、里帰り出産が難しくなったことなどから、妊娠・出産を先送りにしようと考える人のニュースなどを見聞きしたからではないかと思います。将来への「安心」というか「おまもり」が欲しくなったのかもしれません。テレワークや外出自粛制限などで、将来のことを考える時間ができた人も多かったのではないでしょうか。

まず、卵子凍結には2通りあることからご説明します。

ひとつは「社会的卵子凍結」といいます。今、結婚相手はいないけれど、将来、卵子が採れなくなった時の場合に備えて卵子を残しておきたいという卵子凍結です。

もうひとつは医学的適応による卵子凍結です。現在はがん患者にしか認められていませんが、抗がん剤治療や放射線治療などを受けることで、医学的にみて卵巣機能が低下する場合に備えた卵子凍結です。こちらは医学的な見地からすでに市民権を得ており、医学的適応による卵子凍結を行なっているクリニックはいくつもあります。

一方、社会的卵子凍結は比較的最近、普及しだしたもので、扱っているクリニックもまだ多くありません。

いずれにしても卵子凍結は保険適用されず、費用は自費になります。クリニックによって差がありますが、1回あたり50〜70万円ぐらいはかかります。Kさんの場合は、社会的卵子凍結にあたりますが、まず資金をしっかり確保する必要があります。

凍結した卵子すべてが生きるわけではない

はじめに知っておいていただきたいのは、凍結した卵子が必ずしもすべて受精卵に結びつくわけではないということです。

まず卵子を解凍する際、100%無事に解凍されるという保証はありません。数パーセントではありますが、解凍時に壊れてしまうおそれがあります。高額な費用がかかる卵子凍結です、こうしたリスクを理解し、納得した上で行なってください。

次に、結婚されたとしてお相手の精子との相性があります。また、顕微授精できたとして、それがうまく育ち、着床するかどうかはまた別の問題です。その時の子宮の状態によって、うまく着床できない可能性もなくはありません。

このように「卵子凍結したからもう安心」というわけではないことを、忘れないでください。

卵子凍結はひとつの選択肢。

■プロフィール

妊活の賢人 笛吹和代

働く女性の健康と妊活・不妊に関する学びの場「女性の身体塾」を主宰する「Woman Lifestage Support」代表。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。臨床検査技師でもある。化粧品メーカーの開発部に勤務中、29歳で結婚。30代で不妊治療を経て出産。治療のために退職した経験から、現在は不妊や妊活に悩む女性のための講座やカウンセリングを行なっている。