どっちも爆売れ!? トヨタ「RAV4」と「ハリアー」 異なるキャラでも人気なワケとは

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RAV4とハリアー 似て非なる2台の共通点とは

 現在、日本のSUV市場をけん引している存在のトヨタ「RAV4」と2020年6月に発売された新型「ハリアー」は、同じプラットフォームを使いながら異なるキャラクターを打ち出しています。しかし、どちらも人気を博すSUVとなっていますが、なぜデザインやキャラクターが異なるのにも関わらず、この2台は人気なのでしょうか。

兄弟車でも性格は正反対!? ハリアー&RAV4が人気なワケとは

 RAV4は現行で5代目となり、2018年のニューヨークショーで世界初公開されましたが、実はこのとき、チーフエンジニアの佐伯禎一氏は意味深に「RAV4は“シリーズ”で戦います!!」とコメントを残していました。

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 その答えが2019年に登場した北米専売の3列シートSUV「ハイランダー」、そして2020年6月17日に日本で発売された都市型SUVのハリアーです。

 実はこの2台も佐伯氏がチーフエンジニアを担当しています。3台のモデルを一人が担当するのはトヨタでも珍しいケースですが、その理由を聞くと、「役割」、「味づくり」、そして「愛車」と、まさにトヨタのクルマ作りへの挑戦が色濃く表れていました。

 各々のモデルにどのようなコンセプトを掲げているのでしょうか。佐伯氏は次に説明しています。

「RAV4は『SUVって楽しいよね!!』という世界感を今の世の中で再定義したモデルです。乗用車ベースのクロスオーバーSUVは初代が登場した頃はニッチな存在でしたが、現在はメインストリームです。

 しかし、そんな人気とは裏腹にクロスオーバーSUVの良さや楽しさが薄れてきたのも事実でしょう。そこで新型RAV4は、『SUVって何だったのだろうか?』という疑問から、『原点回帰』を目指したモデルを目指しました」

 力強いエクステリア、シンプルながら質の高いインテリア、軽快で力強いパワートレイン、オンオフ問わず意のままの走りを誰でも気負いなく体感できる走行性能など、まさに現代のマルチパフォーマンスカーといってもいいキャラクターが備わっています。

 昨今、3列シートのSUVの人気が高まっていますが、RAV4には設定されていないのはなぜでしょうか。

「RAV4のサイズで3列シートだと中途半端になってしまうからです。過去にヴァンガード(2代目RAV4をベースにした3列シートモデル)を出しましたが、残念ながら販売では成功とはいえませんでした。あのとき思ったのは『色々欲張ってはダメ』ということです」(佐伯氏)

 つまり、3列シートを設定するならば、どの席もシッカリ使えなければ意味がないということです。そこで生まれたのがハイランダーです。RAV4よりひと回り大きいボディサイズを採用していますが、日本は取り回しを含めて厳しいため、残念ながら北米専売となっています。

 では、新型ハリアーはどのようなコンセプトを掲げたのでしょうか。

「RAV4はSUVの『直球勝負』を目指したのに対し、ハリアーは『SUVをちょっと否定してみよう』でした。つまり、SUVが持つ『力強さ』、『悪路走破性』ではなく、『美しさ』、『心に訴える』というような数値にこだわらないクルマづくりを重要視しました」(佐伯氏)

 それはクーペフォルムの流麗なエクステリア、レクサス顔負けの仕立ての良いインテリア、RAV4と同じコンポーネントを用いながらも、「軽快でキビキビ」なRAV4に対し、「重厚でシットリ」とキャラクターがまったく異なる乗り味などにも表れています。

 この辺りはトヨタのマスタードライバー・成瀬弘氏を受け継ぐ「匠」の力も大きいといいます。成瀬氏は古くから「味つくり」の重要性を説いていましたが、それがTNGAという武器を手に入れたことで開花したように感じます。

 同じ素材を用いながら、トヨタ車としての共通項を損なわずにRAV4とハリアーでどのような世界観を目指すのかということを、この2台の走りに乗ると「味づくり」の重要性がよく理解できると思います。

 ちなみに従来のハリアーは日本専用モデルでしたが、新型ハリアーは北米でも「ヴェンザ」という車名で販売されると発表されました。

 ハリアーとして継承したモノ、逆に新型で変えたモノは何でしょうか。

「継承したのは『高級だけど豪華じゃない』、『ちょっと頑張れば手が届く高級車』という日本人ならではの価値を詰め込んだモデルであること、逆に変えたのは『いい意味で欲張らなかった』ことですね」(佐伯氏)

 従来ハリアーは、トヨタのミドルクラスSUVを一人で背負う必要がありました。しかし、今回はRAV4と2トップ体制にすることで、棲み分けができたということでしょう。

トヨタの社長が示す考えとは…

 カッコいいデザイン、後席/荷室の割り切り(といっても十分なスペースを持つ)などは、そのひとつの例だと思います。

「ハリアーは『高級だけど豪華じゃない』という日本人のバランスのいい所が凝縮されたモデルだと思っていますが、そのような価値観を持つハリアー(北米名:ヴェンザ)を北米市場はどう評価するのか。これは我々のチャレンジでもあります」(佐伯氏)

 レクサス「RX」の日本版として登場した初代/2代目のハリアー、日本専用モデルとなった3代目ハリアーに対して、新型ハリアーは日本の価値を武器に再び世界に挑戦するというわけです。

 日本では、RAV4とハリアーの2トップ(北米はハイランダーを加えた3トップ)で戦うわけですが、すべての部分において各々の役割が棲み分けされているのがわかると思います。似たような兄弟車がたくさんラインアップされていた昔のトヨタとは大違いです。

「社長の豊田は『クルマは愛が付く工業製品』といっていますが、ユーザーが10人いれば10通りの人生、価値があります。

 すべての人を満足させようとすると、どこか嘘をつかなければならなくなります。それぞれの価値に見合うもの、お気に入りと感じてもらう商品が必要だと考えています。そのひとつがRAV4でありハリアーなのです」(佐伯氏)

元祖ラグジュアリーSUV「ハリアー」は走行性能も大幅に進化を遂げている

 ちなみにRAV4の2019年のグローバル販売台数は100万台に迫るセールスを記録していますが、それでも攻めの姿勢をやめないのはなぜでしょうか。

「本当に大事なことは“未来”です。となると、既存のままではダメで、常に“挑戦者”である必要があるということです。

 もちろん、ときには失敗もあるかもしれませんが、それを恐れていてはダメだということです。豊田は『バッターボックスに立ったら見逃すのはダメ、常に振っていけ!!』という考えで、我々にはっぱを掛けています。つまり、トヨタの挑戦はこれからも続きます!!」(佐伯氏)