3大都市圏に出店数が多く、コロナの影響も大きく受けたファミリーマート

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 全国で5万5000店超の店舗数となり、頭打ち感が出始めているコンビニエンスストア。コロナ禍の今後はますます真価が問われそうな情勢だが、主要コンビニチェーンの中で唯一元気がないのがファミリーマートだ。その要因はどこにあるのか。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。

【写真】ドンキと親密になるファミマ

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 ローソンと生活雑貨「無印良品」を展開する良品計画が提携し、6月17日から「久が原一丁目店」(大田区)、「新宿若松町店」(新宿区)、「南砂二丁目店」(江東区)の3店で無印良品の試験販売を始めた。店内には無印の専用棚を設けて肌着や化粧品、文房具などを陳列。販売期間は3か月を予定している。

「ここまでやりますか」──。店を訪れたローソンの取引先関係者は、そう驚きを隠さない。なぜなら、ローソンが1店舗で取り扱う商品アイテムは約3500点。最大500品目を無印良品に置き換えたからだ。無印の商品が並ぶ陳列スペースは売り場のおよそ15%を占め、存在感を放つ。

 今後は国内約1万5000店舗でも立地や顧客動向を見極めながら無印良品を扱うかどうかを検討するという。さらに次のステップとして、店舗での売れ行きの分析を基に、プライベートブランド(PB)商品を共同開発する。新型コロナをきっかけに売り上げが増えている洗剤やレトルト食品などが候補に挙がる。PB商品だけを並べた実験的な店舗展開も視野に入れている。

 SNSでは歓迎の声があがる一方で、こんな投稿があった。「無印の“元カレ”はどんな気持ちだろうね??」。

 良品計画は同じ旧セゾングループだったファミリーマートに商品を供給してきたが、2019年1月に契約を終了した。ファミマ向けの商品供給額は2018年2月期に82億円あったが、良品計画は新たな販路を探しており、品揃えを拡大したいローソンと思惑が一致したという経緯がある。

 ファミマと無印良品の“離婚”はファミマの親の事情によるところが大きい。ファミマは現在、伊藤忠商事の子会社。「外部に利益をやることはないだろう」との岡藤正広・伊藤忠商事会長兼CEOの意向が強まり、良品計画との関係は希薄になったといわれている。ファミマでの無印ブランドの販売終了を受け、SNSでは惜しむ声が広がった。「ファミマに行く理由がなくなった」。

 ローソンの関係者はこう証言する。

「竹増貞信社長は世界で『MUJI』ブランドを確立し、根強いファンを抱える無印から学ぶことが多いと考えていた。例えば、化粧品。資生堂などナショナルブランドではなく、無印の化粧水を選ぶ女性が多いのはなぜなのか、ずっと関心を持っていた」

 ローソンの親会社で、良品計画の第5位の大株主(3.8%を保有)でもある三菱商事が両社の提携を後押しした。「ローソンの新しい目玉に無印がなるような気がする」(三菱商事の関係者)

◆無印と別れたファミマはドンキと親密に

 一方、ファミリーマートは「ドン・キホーテ」などを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)と2017年8月に資本業務提携を発表。2019年8月16日時点で4.88%だったPPIH株の保有比率を2021年8月までに最大15%まで引き上げるとした。6月9日現在で10.02%まで保有比率を高めている。

 ファミマは2018年6月から都内3店舗(「立川南通店」、「大鳥神社前店」、「世田谷鎌田3丁目店」)で実施していたドン・キホーテの運営手法を取り入れる共同実験を今年2月29日に終了した。商品をうず高く積む圧縮陳列など、ドンキ流のノウハウを採用したほか、多数のドンキ商品を含め取扱品目を1.5倍〜1.7倍に増やした。

 その結果、菓子や日用品などが好調に推移し、売り上げや客数、客単価が伸びる効果が確認されたため、実験の成果を店舗運営に取り入れるという。

 この時、話題をさらったのがドンキ名物の焼き芋だった。2019年12月末から都内の一部店舗で、国産紅はるかを使用した焼き芋(税込み198円)の販売をはじめたところ、実験店の売り上げランキングの扱い個数で6位、販売金額で5位になったこともあった。

 こうした成功事例を積み重ね、伊藤忠=ファミマ陣営は今後ドンキをグループに取り込む長期戦略を立てている。一方、PPIHはファミマが切り捨てた総合スーパーユニーを傘下に収め、ドンキのやり方で“再生”を図っている。ファミマが扱いに困ったユニーの既存店がコロナ禍で業績が急回復。ドンキとの共同店への業態転換を抑制する方針を打ち出した。ファミマが切り捨てたユニーが戦力になってきたわけで、PPIHにとっては嬉しい悲鳴である。伊藤忠とPPIHは同床異夢なのではなかろうか。

◆セブンと日販で10万円の大差

 ローソンが店内に無印良品を置き、ファミマがドンキ化する背景には“10万円の壁”があり、この差を縮められなければ生き残れないとの危機感がある。

 コンビニ業界でセブン−イレブン・ジャパンとファミマ、ローソンでは稼ぐ力に歴然とした差がある。1日の1店舗当たりの売上高(日販)はセブンが65.6万円。ローソンは53.5万円、ファミマが52.3万円(2020年2月期)。日販の差は10万円以上あり、その差はなかなか縮まらない。いかにして客数や買い上げ点数を増やして日販を底上げするかが喫緊の課題なのである。そこで、日販アップへのローソンの回答は、女性や若者に人気の無印を戦列に加えることだった。

◆コンビニ3社の中でファミマが大苦戦

 だが、コロナウイルスの感染が拡大する中で、コンビニ大手3社の売上高はいずれも厳しく、5月は3社とも既存店売上高で前年実績を下回った。4月に比べて回復傾向があるものの、ファミマは前年同月比11.0%減、ローソンは10.2%減った。セブン-イレブンは5.6%減だった。

 特にファミマは人口が集中する三大都市圏の出店がライバル2社に比べて多く、3月、4月、5月の3か月連続でファミマの減少率が最も大きかった。

「在宅勤務の広がりを受けてビジネス街や駅の近くの店舗の利用客が減った。昼メシはオフィスの近くのコンビニで買い、夕刻には自宅近くの店で缶ビールとつまみを、ついで買いするサラリーマンが激減した」(コンビニ担当アナリスト)

 ファミマ「一人負け」の状態は、2020年2月期決算の1日当たりの平均売上高「日販」にも表れた。ファミマの日販は前期比2000円減の52.8万円。ヒット商品が出なかったことによる客数の落ち込みが痛かった。

 最大手のセブン-イレブンのそれは65.6万円と前期並みを維持。おにぎりの値上げ効果に加え、総菜やデザート、店頭でいれるコーヒーの売り上げが伸びたという。また、ローソンの平均日販は4000円増の53.5万円。2019年3月発売のチーズケーキ「バスチー」を中心にデザートでヒット商品が相次いだ。

 ファミマだけが平均日販を大きく落とした。しかも、ファミマの21年2月期の平均日販の予想は前期比7000円減の52.1万円である。さらに売る力が弱まるということだ。敗因はいろいろな理由が複合的に絡み合っているが、決定的なのはファミマの商品力の弱さだ。

「おにぎりのご飯の味は改善されたが、サンドイッチのパンでは、まだまだセブンに劣る。総菜の種類でもセブンに軍配が上がる。ローソンはデザートで強みを発揮しているが、ファミマにはポイントゲッターとなる商品が少ない」(前出のアナリスト)

◆拡大路線から一転、リストラ加速

 ファミマが掲げていた拡大路線も裏目に出ている。2009年にam/pm・ジャパン、2016年にサークルKサンクスを買収したことにより、店舗数は1万7500店を超えた。10年で2倍以上の規模となり、ついにローソンを抜いた。勢いを得たファミマの次の目標は「2万店体制」の確立だった。

 しかし、コンビニを巡る経営環境は激変した。人手不足に伴う24時間営業の見直しや廃棄ロス対策など、コンビニの成長は踊り場にさしかかった。いや、下り坂を下っているのかもれない。こうなると社員の余剰感だけが強まる。サークルKサンクスを買収する前には、本部社員に占める40歳以上の比率は41%だったが、2019年末には55%にまで上昇した。そこで危機感を強めたのが2018年8月にファミマを子会社化した伊藤忠商事だ。

 伊藤忠主導でリストラに乗り出したファミマは早期・希望退職者800人を募集したが、3月末に1111人と想定以上の社員が応募した。ファミマの将来に見切りをつけた社員が多かったということなのだろう。「いなくなっては困る人も多数いた」(関係者)ことから、慌てて慰留した結果、1025人の退社となった。

 澤田貴司社長は「コンビニは飽和状態だ。店舗を減らす」と明言。実際に3300店舗近くをクローズして、新規出店を抑制した。2020年3月からは「店舗再生本部」を新設、低い収益力の店を直営化し、稼ぐ力をつけた後に再度フランチャイズ化する作戦だ。

◆「加盟店ファースト」で時短営業を開始

 ファミマの2021年2月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる営業収益は微増の5190億円を見込む。本業の儲けを示す事業利益は前期比32%増の850億円、純利益38%増の600億円と超強気の見通しを明らかにしているが、コロナ禍で30%を超える増益を計画することについて、「コロナの影響を、きちんと決算に織り込んでいるのだろうか?」(ライバル企業のCFO)との声も聞こえてくる。

 コンビニはフランチャイズオーナーとの関係が重要だが、どうもこちらもうまく機能していないようだ。

「われわれは加盟店さんファーストだ」──。2019年11月に行われた新たな加盟店支援を発表する記者会見の席上、澤田社長は大見得を切った。しかし、「旧・サークルKサンクスのオーナーとの関係が悪化し、契約を更新せず経営から退くオーナーが増えている」(ファミマの関係者)といわれている。

 加盟店支援策に年間110億円の資金を投じ、複数店舗を経営するオーナーに奨励金を出す。本部が経営維持の努力をする店主に報いることを率先してやらなければ、加盟店の脱落に拍車がかかる。

 5月25日に緊急事態宣言が全面解除された後、ファミマは6月1日から787店舗の時短営業を開始した。時短営業をやれば日販は落ちるが、「加盟店ファースト」の立場なのだから、時短営業の申請があれば本部は拒否できない。

 澤田氏は社長就任以来、大胆なオペレーション改革を断行してきたが、ここにきて「リストラ疲れ」(同)との指摘も聞こえてくる。ファミチキの広告宣伝で澤田社長自身がファミチキの袋に入って大暴れしたように、イベントなどでは異才を放つが、中・長期の経営戦略を立てることに長けているとは言い難い。成長戦略が見えてこないことが最大の問題点なのだ。

「コンビニは売り上げが1割減れば多くのオーナーの利益がゼロになる」(別の小売り担当アナリスト)といわれるほど競争が激しくなっている。コロナ禍、コンビニの経営者は海図なき海原(うなばら)に漕ぎ出している。だから、余計、羅針盤が必要になる。小売業では経営トップが羅針盤なのだ。

 タイミングの悪いことに、レジ袋が7月から有料になった。ふらっと立ち寄ることが多いコンビニでレジ袋にお金を払う顧客は少ない。片手で持てる1、2品目しか買わなくなる、といった予測もある。ナチュラルローソンは作家の文章を印刷した“読むレジ袋”を配布したところ、これを求めて長い行列ができた。話題作りでもローソンのほうが積極的だ。

 リストラによって本部の現場力が弱くなったといわれるファミマ。商品開発部門以外の責任者は基本的に伊藤忠出身者が占めているが、「総合商社の高給取りに、コンビニの日銭商売ができるとは思えない」と言った、商社業界を代表する名経営者がいたことを憶い出した。

「2万店体制」など夢のまた夢。セブン-イレブンを倒すどころか、商品開発力で勝るローソンにも抜かれ、「再び万年3位の座が待っている」(前出のコンビニ担当のアナリスト)との厳しい見立てもあるが、果たして。