外はひかえめだけど中身がスゴい!? ハズし方が絶妙な高性能モデル5選

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おとなしめな外観の内に秘めたパワーがみなぎるモデルを振り返る

 クルマの外観はキャラクターに合わせてデザインされるのが一般的で、高級車は重厚感のある押し出しの強さを表現し、スポーツカーは速さを誇示するかのようなスピード感を表現します。

主張はひかえめだけど中身がスゴいモデルたち

 しかし、そうした王道のスタイルを、あえて控えめにしたモデルが存在。そこで、ちょっとハズした高性能モデルを5車種ピックアップして紹介します。

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●スバル「インプレッサ WRX STI Aライン」

シックな外観が好印象な「インプレッサ WRX STI Aライン」

 1994年に発売されたスバル「インプレッサ WRX STI 」は、世界ラリー選手権に出場するために開発されたスポーツセダンと、ステーションワゴンをラインナップし、登場後は毎年のように性能向上が繰り返されました。

 そして、2000年に第2世代へとフルモデルチェンジして、2006年には「インプレッサ WRX STI Aライン」を追加ラインナップ。

 ベースのインプレッサ WRX STIに比べ、大型のスポイラーが装着されていないことや、シックなカラーリングが設定されるなど、大人のための高性能セダンというコンセプトで開発されました。

 パワートレーンやドライブトレーンはベースと変わらず、エンジンは280馬力を発揮する2リッター水平対向4気筒ターボ「EJ20型」を搭載し、トランスミッションは6速MTのみが組み合わされ、前後の駆動力配分をドライバーが任意に設定できる「DCCD方式 AWD」を採用しています。

 また、走りだけを追求したモデルではなく、アルカンターラと本革を組み合わせた専用スポーツシートや、遮音性を高めるため、厚手のフロアマットやフロントフェンダーのインシュレーターを装備し、ジェントルな高性能車となっていました。

 スタンダードなWRX STIよりも数は少なく、現在ではレアなモデルです。

●ホンダ「インテグラタイプR ローウイングタイプリアスポイラー」

派手すぎないけど、やっぱり速そう!?「インテグラタイプR ローウイングタイプリアスポイラー」

 1995年に登場したホンダ3代目「インテグラ」の高性能版である「インテグラタイプR」は、チューンナップされた専用エンジンや、強化サスペンション、クロスミッションなどを搭載して、サーキット走行も視野に入れて開発されました。

 外観で最大の特徴はリアに装着された大型スポイラーで、一見するだけでスポーティなモデルということを主張しています。

 2001年に発売された2代目インテグラタイプRは、220馬力を誇る2リッター直列4気筒エンジンを搭載し、レカロ製シート、MOMO製ステアリングホイール、チタン色アルミシフトノブ、ブレンボ製フロントブレーキキャリパーなどを備え、当時は「世界最速のFF車」と呼ばれました。

 また、先代と同様に大型リアスポイラーや各種エアロパーツが装着され、見た目からもハイパフォーマンスさがうかがえます。

 一方で、この派手な外観を好まないユーザーのリクエストから、2004年のマイナーチェンジで、ローウイングタイプリアスポイラーを装着したインテグラタイプRを追加ラインナップ。

 小ぶりなリアスポイラーによって外観は「インテグラタイプS」に近く、エンブレムを見ないとタイプRには見えませんでした。

 販売台数はかなり少なく、現在の中古車市場でもわずかな台数しか流通していません。

●日産「スカイライン オーテックバージョン」

まさに大人のための特別なセダン「スカイライン オーテックバージョン」

 1989年に発売された日産8代目「スカイライン」は、16年ぶりに「GT-R」復活となった記念すべきモデルです。

 3代目となるR32型 スカイラインGT-Rはレースに勝つという目標のために、280馬力を誇る直列6気筒ツインターボの「RB26DETT型」エンジンと、可変トルク型の4WDシステム「アテーサE-TS」が搭載され、全日本ツーリングカー選手権では無敵の最強マシンとして君臨しました。

 この高性能なスカイラインGT-Rのコンポーネントを流用して、1992年にオーテックジャパンが「スカイライン オーテックバージョン」を発売。

 ボディは2ドアクーペのスカイラインGT-Rとは異なる4ドアセダンで、スタンダードな「GT系」と同じ5ナンバーサイズです。

 外観はフロントにスタンダードなモデルとは異なるエアロフォルムバンパーが装着されるに留まり、派手なエアロパーツは装着されていません。

 エンジンはRB26DETT型からターボを外して2.6リッター直列6気筒自然吸気に作り変えられた「RB26DE型」で、最高出力は220馬力を発揮。インテークとエキゾーストマニホールド、カムシャフト、ピストン、制御コンピューターなどを、オーテックジャパンが開発した専用品に変更しています。

 パワーは控えめながら、6連スロットルを装備する自然吸気エンジンならではの鋭いアクセルレスポンスと、リニアな出力特性を実現。

 駆動方式はアテーサE-TSを継承し、足まわりには専用チューニングされたサスペンションと、スカイラインGT-Rのブレーキシステムが搭載されています。

 なお、スカイライン オーテックバージョンのコンセプトは、スポーツカーを卒業した大人のためのセダンで、余裕のあるロングドライブを楽しむというキャラクターから、トランスミッションは4速ATのみの設定とされました。

 現在は中古市場に出ることも滅多になく、かなり貴重なモデルです。

プレミアムブランドでも主張が控えめな高性能モデルがあった!?

●アウディ「RS2アバント」

アウディの高性能モデル「RSシリーズ」の第1弾として誕生した「RS2アバント」

 アウディとポルシェは1970年代から緊密な関係にあり、技術的な交流が盛んにおこなわれてきました。そして1994年に、アウディはポルシェとコラボレートしたステーションワゴン「RS2アバント」を発売。

 開発工程の多くをポルシェが担当し、生産もポルシェの工場でおこなわれました。

 現在もRSシリーズは、アウディのラインナップのなかで特別に高性能なモデルとして展開されていますが、RS2アバントがシリーズ初のモデルです。

 ベースになったのは「A4アバント」の前身にあたる「80アバント」で、セダンは設定されていません。

 最高出力315馬力を誇る2.2リッター直列5気筒ターボエンジンを搭載し、トランスミッションは6速MTのみとされ、駆動方式はフルタイム4WDシステム「クワトロ」を採用。0-100km/h加速4.8秒、最高速度は260km/hに達する、まさにスーパーワゴンに仕立てられました。

 外観では派手なエアロパーツなど無く、当時のポルシェ「911」と同じデザインのドアミラーやホイールと、フロントバンパーにあるターンシグナルとフォグランプが装着され、「PORSCHE」のロゴが刻まれたブレンボ製ブレーキキャリパーを装備するなど、随所に高性能さをうかがわせるアイテムを装着。

 なお、RS2アバントは日本に正規輸入されませんでしたが、わずかな台数が並行輸入されており、ごくまれに中古車が市場に出ることがあります。

●メルセデス・ベンツ「500E」

ポルシェ謹製の大排気量スポーツセダン「500E」

 1991年に発売されたメルセデス・ベンツ「500E」(後にE500に改名)は、Eクラスセダンにスポーツモデルの「500SL」のエンジンを移植した特別なモデルです。

 Eクラスに500SLのV型8気筒エンジンを搭載するためにフロアパネルが変更され、トランスミッションや前後のサスペンション、ステアリングギアボックスなども、500SLのものが搭載されました。

 ボディは前後のトレッドを拡大したことでワイド化されたフェンダーと、専用デザインのバンパーが装着されている以外は、派手な演出はありません。

 しかし、330馬力を発揮する5リッターV型8気筒エンジンによって、0-400m発進加速タイムは14.8秒、最高速度は250km/hと、まさにスーパーセダンといえる性能を誇っています。

 前出のRS2アバントと同様に開発はポルシェが担当し、なかでも初期モデルはポルシェの工場で作られたことから日本で人気が高まり、バブル景気という背景もあって、高額ながら日本には正規輸入車だけでなく数多くの並行輸入車も上陸。

 現在はネオクラシックブームの影響から世界的に価格が高騰し、日本の中古車市場でも高額な価格で取り引きされています。

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 昔は控えめな外観のクルマに、高性能なエンジンや足まわりを搭載したモデルを「羊の皮を被った狼」と呼んでいましたが、今回紹介した車種は、少なくとも「羊」と呼べるほどおとなしい外観ではありません。

 控えめながらそれなりに主張しており、クルマに詳しい人からすれば、すぐに高性能車とわかります。

 しかし、現在はもっと「わかりやすい」モデルが好まれるためか、こうしたモデルは少なくなってしまいました。