「半袖シャツは邪道」とも言えなくなってきています(写真:Yokohama Photo Base/PIXTA)

7月に入って一段と暑さが増してきました。新型コロナウイルスの影響を受けて在宅勤務(リモートワーク)を主体にしている人もいると思いますが、オフィスに出勤するようになったビジネスパーソンも多いでしょう。

この季節は「クールビズ」が推奨され、ノーネクタイのほか半袖のワイシャツを着るケースが出てきます。一方で、半袖のワイシャツは「選び方」「着こなし」を間違えると途端にダサく見えます。ファッション意識が高いビジネスマンの中には「半袖のワイシャツは邪道だ!」と考える人もいるほどです。

その背景には、ヨーロッパで「シャツは下着というスタンスから、ワイシャツ1枚の着こなしをあまり見かけない」という逸話が関係しています。ワイシャツを1枚で着る文化がさほど浸透していないため、日本に比べると半袖が普及していません。この情報を鵜呑みにし「半袖シャツは邪道だから、夏でも長袖を着る!」と考える人が一定数います。はたして高温多湿の日本においても、長袖シャツは本当に有効なのでしょうか。

半袖・長袖の賛否については分かれるところですが、機能的視点から半袖シャツという選択肢は欠かせません。ノージャケット姿でも好印象になる「半袖シャツの視点」について、延べ4600人のビジネスマンの買い物に同行してきた服のコンサルタントがお伝えします。

「半袖or長袖」論争に終止符を打つ

結論から言えば、日本のクールビズは半袖シャツに軍配が上がります。言い換えると「サマージャケットの有無でシャツ袖が変わる!」、これが正解です。来客時にサマージャケットを羽織るならば、ジャケットの袖裏に皮脂が付くことを防ぐため長袖を選びます。一方、ノージャケットならば、長袖は避けたいところです。

取引先との打ち合わせにおいて、たくし上げたシャツ袖はだらしなく見えます。とはいえ、半袖シャツを着た群衆の中では、長袖は暑苦しいのです。しかも、たくし上げた袖を元に戻したとき、腕に入ったシワが悪目立ちします。

ノージャケットの長袖シャツは、だらしなく見える原因になるからです。ノージャケットならば半袖シャツがお勧め。ですがこのとき、「選び方」「着こなし」に工夫が求められます。

半袖がやぼったく見える人は「シャツのアームホール」を見落としています。首のサイズが合っていても、腕のサイズが合っていない人は、半袖シャツ姿がやぼったく見えるからです。これはサイズを選ぶとき、首周りにのみ意識が向いている人が陥る盲点です。

半袖なので裄丈を合わせる必要はありませんが、代わりに「アームホールの太さ」を意識します。半袖と長袖の違いは、「袖の長さ」のみならず「腕周りの太さ」に表れるからです。

長袖シャツは、構造上、袖口にかけテーパー(徐々に細くなる)が効いています。一方、長袖と同じ型紙で作られた半袖シャツは、袖口に絞りが効いていないため、腕に対しムダな空間が生まれます。

このだぶついた半袖の印象を変えるためには、シャツの型紙を意図的に選ぶ必要があります。ところが、スーツ量販店に並ぶ半袖シャツに、アームホールの表示を見かけません。実は、多くの人が意図せず、その表示を誤解していた可能性が高いのです。

半袖は、首周りより腕周りを優先させるとうまくいく

「スリムフィット」や「レギュラーフィット」。店舗ごとに呼び名は変わりますが、この表示はシャツの型紙を示しています。そして、この表示には「身幅の違い」と「アームホールの違い」も含まれることは意外と知られていません。当然、スリムフィットを選んだほうがアームホールも細いわけです。

これまで誰もが自分のお腹周りを基準として、盲目的にシャツの型紙を選んでいたのではないでしょうか。半袖シャツに限っては、お腹に加え、腕の太さを意識して選びたいところ。なぜなら、第1ボタンを開けて着るからこそ、首より腕を優先させても違和感がありません。むしろ、半袖に限っては、腕をすっきり見せたほうが体に合っている印象です。しかも、スリムフィットといっても、どの量販店もLLサイズまで用意しています。

例えば、スリムフィットのMサイズが少し窮屈だと感じた人は、これまでレギュラーフィットのMサイズを選んでいたかもしれません。もちろん、腕が太い人にとっては最適なチョイスですが、スリムフィットのLサイズが合う体形の人もいるでしょう。半袖を選ぶときは自分のお腹周りのみで型紙を決めつけず、スリムフィットの試着もお勧めします。

腕周りをスッキリさせても、半袖姿が学生っぽく見える人がいます。髪型や顔立ちの影響も否めませんが、半袖シャツを選ぶとき、反射的に白色を選んではいないでしょうか。

「ビジネス=白いワイシャツ」という印象が日本では根強いですが、これはジャケットに合わせた姿を想定しています。一方、白の半袖シャツは学生服でよく見かけるため、イメージの差別化がそもそも容易ではありません。

私は半袖シャツに違和感がある人には、白ではなく、うっすら淡い色物をお勧めしています。ノージャケットの半袖という軽装に限っては、白より淡色・柄物のほうが爽やかに見せやすいからです。とくに、ブルー系の淡い色物やギンガムチェック柄に合わせたグレースラックス姿は、暑い夏に清涼感を与えてくれます。

また、リモートワークの会議においても、淡色・柄がアクセントになるため、モニター越しに存在を印象づけられます。実際、スーツ量販店のクールビズ売り場を見渡してみるとさまざまなバリエーションがあることに気づくはずです。

それでも長袖シャツを着たい人へ

それでも長袖を着たい人は、極薄のサマージャケットを折りたたみ傘感覚でバッグに忍ばせておくことをお勧めします。化学繊維で織られた極薄のサマージャケットは、百貨店から量販店までさまざまなショップで見かけるはずです。取引先に会うときだけ着用し、社内ではノージャケットという活用法であれば、ビジネス的に印象面で損をすることはないでしょう。

社内でジャケットを脱いでいるとき、腕についたシャツのシワから相手の視線を逸らすコツがあります。ボディーの色に対して、襟とカフスの色が切り替わった配色の「淡いブルーのクレリックシャツ」です。淡い水色に清涼感がありますし、襟とカフスの生地が白く切り替わっているため、相手の視線が切り替えしに向かうため、白い長袖シャツを着ているときに比べ、腕のシワに目が行きません。

これまで私自身、半袖シャツを邪道だと考えていました。ところが、時代背景も踏まえると、ノージャケット姿の長袖シャツ姿はマイノリティーでしかありません。「郷に入れば郷に従え」という言葉どおり、夏のビジネスシーンでは、半袖シャツをスタイリッシュに着こなすのも大人の男のたしなみです。