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コロナショックによって資生堂は、1〜3月期に純利益96%減という最悪の事態に陥った。しかしそれ以前から国内市場で弱体化が見られるなど、課題に直面していることは明白だった。復興と本当の意味でのグローバルな成長を賭けた「新ビジョン」の成功を左右するのは、減収の要因となっている根本的な脆弱性の解決ではないだろうか。

■資生堂の純利益とコロナショックの影響

2019年12月期の連結決算は、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益が過去最高値を更新するなど、総体的には好調な業績を記録したものの、実際は国内と国外での温度差を反映する結果となった。

米国事業の営業利益は前年比5.1%増の1,138億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同比19.8%増の736億円だった。中国事業は「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポーボーテ」「イプサ」を含む高価格帯ラインに加えて、日本製ブランドである「エリクシール」や「アネッサ」の売上が大きく伸びたことなどが追い風となった。さらにデジタルマーケティングの投資強化や売上増に伴う差益増もあって、営業利益は同比19.2%増の292億円となった。

一方、国内の営業利益は同比0.3%減の911億円、売上高は同比0.6%減の4,516億円と、いずれも下降している。同社は、円高による影響や中国の電子商取引法施行にともなうインバウンドバイヤー需要の減少、天候不順、増税後の消費マインドの冷え込みを要因に挙げているが、2012年の時点で国内事業が6年連続減収するなど、国内の需要縮小は今に始まったことではない。

■コロナショックで国内・国外の温度差がさらに浮彫に

これらの状況が、コロナショックで一気に加速した。2020年1〜3月期連結決算は、売上高が前年同期比17.1%減の2,268億円、営業利益が83.3%減の64億円、経常利益が84.7%減の60億円、純利益が95.8%減の14億円と大幅に減収減益となった。

3月後半には9割以上の小売店が再開した中国事業の売上高は15.2%減の445億円、2019年に買収した米プレステージブランド「ドランク・エレファント(DRUNK ELEPHANT)」のオンライン販売が好調だった米国事業の売上高は15.9%減の232億円にとどまった。

これに対して、小売店の営業時間短縮や臨時休業の影響をもろに受けた日本事業の売上高は、21.2%減の856億円となった。

■減収の理由は中国消費者への依存?

資生堂に限らず、海外でも化粧品やアパレルの売上は著しく落ち込んでいる。

しかしここで懸念されるのは、前述した通り、資生堂が国外事業、特に中国市場への依存度が高い点だ。同社はグローバル事業の強化や市場変化への迅速な対応を掲げているが、単一の市場に依存しているようでは本当の意味でのグローバル化の実現は難しいだろう。

免税店での自社製品の販売を主な収益源とするトラベルリテール事業も、国内に次いで中国の代理購入者が多く、その割合も年々増加傾向にある。2019年12月期の売上高の約30%は、中国およびトラベルリテール事業が占めており、さらに国内での売上高の約2割は、中国人旅行客が多いインバウンドによるものだ。

■今後の展望 「Japanese Beauty」の原点となる国内市場にも注力

資生堂では、このような課題を認識している。2015〜17年には「事業基盤の再構成(ブランド強化、マーケティング・R&D 投資の拡大など)、2018〜20年には「成長加速の新戦略(新ブランド・M&A、ビジネスモデルの見直しなど)」を成長戦略に掲げ実施してきた。

「インバウンド需要への依存」は「国内の消費者の価値観・購買行動の変化への対応不足」とともに2019年の課題に組み込まれている。今後これらの課題にどのように対応して行くかが、23年の新ビジョン実現のカギを握っているものと推測される。

国際的な知名・信頼度は高いが、国内では近年、新たな顧客を獲得する決め手となるようなヒット商品がない。日本市場が占める割合が1%程度と小規模であることから、高い売上成長を目指すよりも、量より質の向上を追求するという考えに基づき、日本市場向けの開発に注力するなど、原点となる「Japanese Beauty」に重点を置いた戦略を打ちだしている。

■2023年の新ビジョン実現を目指す

同社では、2020年も「中国・トラベルリテールの事業拡大」や「国内事業の見直し・基盤再構成」を継続するとともに、「ITシステムを強化、グローバル標準化」や「イノベーションの加速」などを目指している。2021〜22年には「事業やポートフォリオの組み換えやキャッシュフロー重視の経営」「デジタルを駆使した事業モデルへの移行」を経て、2023年の新ビジョンにつなげるという戦略だ。

気になる新型コロナによる経済的影響については、魚谷雅彦社長兼CEOは「早期回復を目指す一方で、影響が長引くことを前提に改革を進める」意向を示している。今後、取り組みが必要な課題は山積みだが、こうした戦略を着実に成果につなげていくことが、復興と新生資生堂の構築につながるのではないだろうか。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)