オリオン座の赤色超巨星ベテルギウスは明るさが変わる変光星のひとつで、2019年10月から2020年2月にかけての急激な減光は大きな注目を集めました。この減光の原因はベテルギウスの表面に生じた黒点(恒星黒点)だったのではないかとする研究成果が発表されています。


■表面の半分ほどを覆う巨大な黒点が減光をもたらしたか

巨大な黒点が生じたベテルギウスを描いた想像図(Credit: MPIA graphics department)


Thavisha Dharmawardena氏(マックス・プランク天文学研究所)らの研究グループは、2019年から2020年にかけて観測されたベテルギウスの減光は表面温度の低下にともなう現象であり、その原因はベテルギウスの表面に生じた巨大な黒点だった可能性が考えられるとした研究結果を発表しました。


通常時よりも40パーセントほど暗くなった今回の減光については、ベテルギウスが放出した塵によって光がさえぎられたことで生じた可能性が指摘されています。そこで研究グループは、チリの「アタカマ・パスファインダー実験機(APEX)」やハワイの「ジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)」といった、塵の観測に使われるサブミリ波を利用する電波望遠鏡の観測データを参照しました。


その結果、ベテルギウスがサブミリ波でも20パーセントほど暗くなっていたことが判明。観測データを分析したところ、サブミリ波の明るさの変化はベテルギウスを取り巻く塵の増加に由来するものではなく、ベテルギウスの直径が10パーセントほど小さくなったか、あるいはベテルギウスの表面温度が平均して摂氏200度ほど下がったことで生じた可能性が示されたといいます。


ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」によって2019年の1月と12月に撮影されたベテルギウスを比較すると、12月の画像ではベテルギウスの一部が暗くなっていることがわかります。研究に参加したPeter Scicluna氏(ESO)が「表面の50〜70パーセントを覆う、周囲よりも温度が低い巨大な黒点の明確な兆候です」と語るように、この黒点によってベテルギウスの表面温度が低下し、減光につながったものと研究グループは考えています。


Dharmawardena氏は「今後数年間の観測によって、急激な減光と黒点の周期の関連性が明らかになるでしょう。ベテルギウスはこれからも刺激的な研究対象であり続けます」とコメントしています。


超大型望遠鏡(VLT)によって2019年1月(左)と2019年12月(右)に撮影されたベテルギウスの比較画像(Credit: ESO/M. Montargès et al.)


 


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Image Credit: MPIA graphics department
Source: MPIA
文/松村武宏