伝説のスーパー派遣、大前春子(篠原涼子)が十三年ぶりに帰ってきた。

 前作では彼女によって再生したS&F社だが、時代に対応できずにまたしても業績は低迷。かつて春子と仕事をした課長の里中(小泉孝太郎)が、(あの人なら会社を救える)と派遣会社にオファーした。

 初めての顔合わせで、ニコリともしない無表情で春子に「この人、なんで挨拶しないの」と威張る塚地武雅が演じる営業事業部長。「私を雇って後悔はさせません。三か月間お時給の分を、しっかり働かさせて頂きます」。格好いいね。


篠原涼子 ©文藝春秋

 誰ともつるまず、クールに仕事をこなしていく春子とは対照的な女性ハケンが二人。ハケンも五年目、いつ契約を打ち切られるかと脅える福岡亜紀(吉谷彩子)と、入社試験すべて落ちてハケンになった新卒の千葉小夏(山本舞香)だ。

 若さゆえの正義感と無鉄砲さをもつ小夏。それとは反対に、ハケン切りの恐怖から、サービス残業も嫌な顔せずやる亜紀。そんな亜紀に好色な無能上司が目をつけ、むりやり食事に誘い、さらにはセクハラ行為に及ぼうとして拒まれる。

 その現場をたまたま目撃した小夏が、社内に設置された人事部の目安箱に告発したから、さあ大変。人事部は二人の聞き取りと称して社の保養所に監禁する。

 小夏からSOSの連絡を受けた里中が、春子に助けを求める。ロシア企業との重要な商談の場にいた春子だが、ダメ部長に代わり契約をまとめると、すぐに社の保養所を目指す。

 人事部の陰湿かつ高圧的な査問がつづく部屋は施錠され、開かない。春子は屋内からチェーンソーを発見。おお、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスだ。

 チェーンソーで二人が閉じこめられていた部屋をぶち破る。いいねえ。保身と改ざんしか頭にない人事部員は顔面蒼白だ。多くの視聴者がカタルシスを覚えたのだろう。初回の視聴率は十四・二%に達した。

 ところがね、ネットには“チェーンソーで扉を壊すって器物損壊だ”とか、“ハケンは納得して契約してるんだろ。現実を無視した時代錯誤ドラマ”なんて書き込みも溢れていた。

 あれから十三年。この国の劣化は止まらない。こういう鈍くて狡い連中を覚醒させるためのチェーンソーだけど、彼らは『悪魔のいけにえ』さえ知らず、ジェイソンと勘違いしている。

 それともうひとつ。春子がいつも手にしている小説は小松左京『日本沈没』だ。このままだと、あなたたちも私たちも沈没して死ぬ。そう春子は呟く。小松の『復活の日』そっくりのパンデミックが起きたのはドラマの収録後だろうが、脚本家、中園ミホの勘の鋭さが証明された。内閣支持率の急落と、初回の高視聴率は連動している。

INFORMATION

『ハケンの品格』
日本テレビ系 水 22:00〜
https://www.ntv.co.jp/haken2020/

(亀和田 武/週刊文春 2020年7月2日号)