新型コロナの影響で、私たちの暮らしも大きな変化に直面しています。仕事を失ったり、収入が少なくなったりした方も多いと思います。ボーナスも今後とどうなるか分かりません。大切なことはこうした時代の変化にいち早く対応することなのです。

それでは変化に対応するとはどのようなことなのでしょうか。ボーナスに頼りすぎることの問題点、時代の変化に負けない家計や暮らしのリスク管理方法を中心に考えてみましょう。

ボーナスに頼りすぎる家計、改善するには


そもそもボーナスとは

ボーナスは半年ごとに支給されるのが一般的です。半年間の会社の収益とその後の予測をもとに、社員に余剰益を還元するものです。

余剰金の社員への分配というと聞こえが良いですが、なぜそうしたシステムになったかというと、企業のリスク管理の一環という側面があります。毎月の給与は低く抑えておき、今回のような新型コロナの影響で会社の収益が低減したらボーナスの額で調整すれば良いのです。全く支給されないケースも当然考えられます。

そうした会社としてのリスク管理システムに対して、働く側が何のリスク管理がなくて良いわけがありません。一番の対処方法は、ボーナスはあくまで「臨時収入」なので無いものと考え、支給されたなら今後の不測の事態に備えて蓄えることにつきます。

とは言っても、今までボーナスに頼ってきた家計を変えるのは簡単ではないでしょう。健全な家計を実現する際に一番大切なことは、自分たちにとって何がリスクなのかをしっかり把握することなのです。子供の教育、老後の生活、病気やケガ、リストラや社会状況の変化、災害などリスクはいろいろあります。

リスクを正確に把握して、必要な保険や貯蓄などの対策をしっかり着手していくことが肝心なのです。今回の新型コロナの問題でも分かるように、経済の影響は社会全体にわたります。この機会に自分たちが持つリスクを見つめてみましょう。

ボーナス頼みの家計は、社会経済の変化に弱く、あっという間に家計の破綻につながりかねません。

家計のリスク管理とは

今までボーナスが支給されてきたということは、月々の給与は一般的に考えればそれだけで生活が賄える額であるはずです。もちろん潤沢な方もいればギリギリの方もいるでしょう。

それでも本来はそれで生活できるはずで、たまたま会社が高収益だったために支給されたボーナスを頼りにすることは、それだけ生活が広がってしまっていることであり、リスク管理上危うい道に踏み入れたことになります。

ではボーナスに依存するケースにはどのようなタイプがあるでしょうか。

ケース1 : 趣味やレジャーにボーナスを分不相応に散財する

収入には不釣り合いな高級な車の購入、趣味に使う高価な道具を買ってしまうなど、目先の楽しみに散財してしまうタイプです。

ケース2 : クレジットで買い物をしてしまう

特にリボ払いやボーナス払いにしているタイプや月賦でものを頻繁に購入するタイプで十分な管理がないと、思わぬ大きな支出になることもあります。

ケース3 : 住宅ローンの返済にボーナスを併用している

高度成長期にはボーナス併用はごく普通に利用されていました。しかし、低成長期には経済の低迷がローンの破綻に直結します。大手企業の社員でも、対応を間違えると破綻につながるケースもあります。またこれからの時代は転職も普通に考えられます。転職した当初はボーナスがないか、ごく僅かが一般的でしょう。

ケース4 : 月々の給与では足らず、ボーナスで補填している

前述にもあるようにボーナスが支給されるのであれば月々の給与は一定水準の確保されているはずで、その範囲で生活できるはずです。不足するのは支出に無駄があるか、贅沢が多くなってしまっていることを意味します。

どう脱却する? ボーナス頼みの生活スタイルと家計

では、どうすればボーナス依存体質から脱却できるのでしょうか。ポイントはいくつかあります。

・変わり身の早さが問題を大きくしない

とにかく問題があると感じたら、直ちに対策に着手することが、問題を大きくしない最善の手段です。後手に回れば回るほど対処が難しくなります。

・短期決戦が功を奏する

直ちに対処するとともに、短期決戦が問題を小さく抑えられ、ストレスが少なく対処できる方法です。ダラダラ対処していては、目的達成が遅れ、問題を大きくし、何よりもストレスが大きくなります。家計改善を始めて1カ月間の集中力が大きな成果を生むはずです。

・先送りは破綻の元!

住宅ローンやクレジットのボーナス返済リボ払いなどは問題の先送りです。また各種ローンも同様です。学生時代に勉学にアルバイトに目いっぱいだったケースもあるかもしれませんが、奨学金を返済できないケースの増加も問題になっています。

住宅ローンの場合は住まいという「資産」が残り、資産として売買も可能ですが、問題が大きいのは「消費」にローンを使うケースです。住宅ローンはボーナス返済を見直し、その他のローンや月賦販売での購入はコツコツと資金を貯めてから購入するように転換しましょう。コツコツ貯めた資金は、本当に必要なもの以外には、もったいなくて簡単に支出する気になれないものです。

ボーナス依存脱却の目標を設定しよう

着手にあたって、目標を定めましょう。例えば、「冬のボーナスを乗り切る」を目標にしてみたとします。前年度の冬のボーナスは何に使ったかを振り返ってみましょう。ボーナス返済を行っていたのであれば、今から冬のボーナス返済分を月々の収入からプールし始めます。

旅行や大型家電などに費やしたのであれば、お金を使わないレジャーなどを考えて消費を見直したり、どうしても必要な家電であれば、今から少しずつ資金を準備したりと、ボーナスに依存しない家計づくりを半年かけて準備していきます。

新型コロナの収束が見えない中、冬のボーナスが支給されるかどうかさえ不透明です。今から準備しなければ間に合いません。この機会に目標を立てて、ボーナス依存家計から脱却しましょう。

住宅ローンの破綻の大きな要因がボーナス返済

住宅ローンは年収の数倍の借金を負うことなので、万一の対策は必須です。頭金に貯蓄をつぎ込んで、月々の支払いも発生するので余裕がないかもしれません。それでも万一に備えて収入が少なくなっても1年間くらいは返済し続けられるだけの貯蓄は早急に確保しておくべきだと思います。

1年間持ちこたえられれば、生活を立て直すこともできるでしょう。それでも無理と判断する事態なのであれば、早急に売却などで、住宅ローンの負担をなくす対策を考えざるを得ません。

実際に、住宅ローンの破綻の大きな要因がボーナス返済です。または頭金2割を用意できなかったケースや収入に比べて過度のローンを組んだなどのケースです。頭金を2割用意できたということは、住宅取得に向けてコツコツ貯蓄ができたことであり、それだけの計画性があったことを意味します。そうした方はなかなか破綻しないものです。

・次回のボーナス返済分を毎月貯めておく

いきなり毎月返済に変更しても大丈夫であれば良いのですが、ボーナス依存体質であればそれを改善しなければ、増額した月々の返済に窮する事態も発生しかねません。前述したように当面は支出を絞って、数カ月間ボーナス返済分を6等分し、月々プールしておく方法もあります。十分大丈夫であれば、ボーナス返済を取りやめる手続きを行ってください。

・返済期間を延長する

ボーナス返済を取りやめると、月々の返済額が一気に増額となります。返済期間を延長できれば、月々の支払いは抑えられます。フラット35で30年返済の場合、条件を満たせば5年間返済延長することは可能です。それ以外でも状況によっては延長できるケースがあるかもしれません。それぞれのケースで異なりますので、借り入れている銀行に相談してみてください。

ただし返済期間を延長すると、現役時代で完済できないケースもあり、別のリスクも発生します。ボーナスをしっかり貯蓄し、必要に応じて繰り上げ返済等で、リタイアする時には完済できるように工夫することが大切です。下記の表は新規に借り入れるケースで、ボーナス返済の有無、返済期間による毎月返済額の違いを示したものです。

住宅ローンの見直し


ボーナス返済をやめても返済期間を延長すれば、月次の返済はさほど増えません。その分ボーナスを貯蓄していけます。大切なことは、別のものに散財してしまわないように、ボーナス返済不要になった額をしっかり貯蓄することなのです。



○筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。