この夏、グーグルが「反トラスト法違反」で提訴される可能性 トランプ大統領が働きかけたとの見方も

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グーグルが反トラスト法(米国の独占禁止法)違反で訴追される可能性が出てきた。米司法省は早ければ今夏にも同社を提訴するかもしれない、と米メディアが報じている。

もしも訴追されることになれば、その影響は単にグーグルだけにとどまらず、同社が一角を占めるGAFAなど巨大IT企業の繁栄にも影を落とすと見られている。

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90年代の対MS訴訟と同じ構図

現在、グーグルの提訴を検討しているのは司法省だけではない。テキサスをはじめ多数の州の司法当局がグーグルへの法的対抗措置について司法省と協議中とされる。これは1990年代終盤に、当時全盛を誇ったマイクロソフトが同じく反トラスト法で訴追されたときと同じ構図だ。

1998年に司法省と19の州、ならびにワシントンD.C.は、マイクロソフトが基本ソフト(OS)市場における独占的地位を悪用して同業他社の競争力を阻害し、消費者の利益を侵しているとして同社を提訴した。

2000年の連邦地裁による判決ではマイクロソフトが敗訴し、同社を基本ソフト(ウィンドウズ)部門とアプリケーション部門に分割せよとの命令が下された。しかし連邦高裁がこの判決を差し戻し、2001年11月に司法省とマイクロソフトの和解が成立した。

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この和解には「マイクロソフトが自社と競合するミドルウエア製品を採用したハード/ソフト・メーカー等に報復することを禁止する」等の条項が盛り込まれたが、予め必須条件とされた「OS(ウィンドウズ)とブラウザ(I.E.)のバンドル(抱き合わせ提供)禁止」が見送られるなど、事実上、マイクロソフト勝訴と見る向きが強かった。

それでも、この訴訟がマイクロソフトに残した傷は意外に深く、その後、グーグルやアマゾン、フェイスブックなど新興勢力が台頭する契機になったとの見方もある。つまり同訴訟がIT業界の世代交代を促したとする説である。

今回、司法省や州政府が当時と同じ事を狙っているのかは不明だが、多くの企業が「グーグルがウエブ検索等の独占的地位を悪用して自分たちのビジネスを阻害している」と訴えているのは事実だ。つまり司法当局の調査を取り巻く構図は、当時と現在とで非常によく似ている。

ウエブ検索とオンライン広告に照準

今回の件で司法省が調査(捜査)に着手したのは、昨年の秋頃と見られている。当初はグーグルのみならず、GAFAなどIT業界で独占的な地位を固めた巨大企業をターゲットにした調査だった。

その際、司法省はFTC(連邦取引委員会)と共同で捜査を進め、GAFAの同業他社や新興企業等から広範囲の聞き取り調査を行った。その途中でテキサスなど複数州の司法当局も協議に加わった。結果、最終的には捜査対象をグーグルに絞り込んで提訴を検討することになった。

ただ彼らが訴訟で何を目指しているかは定かでない。かつての対マイクロソフト訴訟では一旦、連邦地裁から同社の分割命令が下されたが、今回、司法省などがグーグルに対して、そこまでやろうとしているのかどうかは分からない。それはあくまで可能性の域に止まっている。

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そうした中で、まず間違いないと見られている点が一つある。それはグーグルが手掛ける多数のビジネスの中で、今回は「ウエブ検索」と「オンライン広告」という2本の柱に絞り込んで訴訟に持ち込む構えということだ。

特にウェブ検索はグーグルが世界市場で9割程度のシェアを握るなど圧倒的な独占力を誇るだけに、それと密接に結びついたオンライン広告も含め、司法当局が狙いを定める領域としては最も妥当な線とされる。

トランプ大統領の意向も反映

他方、今回の動きには政治的な側面もある。

トランプ大統領は以前から、グーグルやフェイスブックなどが保守派の意見を黙殺していると批判してきた。大統領はまたアマゾンのジェフ・ベゾスCEOと犬猿の仲であることもよく知られている。つまり、これら政治的あるいは個人的な動機から、GAFAなど巨大IT企業への法的措置を検討するよう司法省に働きかけたのではないか、と一部の米メディアは見ている。

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もしも、その通りだとすれば、反トラスト法本来の趣旨から明らかに逸脱している。それはまた合衆国憲法が保証する「言論の自由」という大原則を脅かすと法律の専門家は批判する。

もっとも今回の司法当局による捜査が、最終的にグーグル提訴に結び付くかは未だ確かではない。が、ここまで捜査を進めた以上、今更、訴追を見送ることになれば、逆に「独占を容認している」と非難される恐れもある。

実際、2012年にFTCが反トラスト法違反でグーグルを捜査し、最終的に証拠不十分で提訴しなかったときには、そうした批判が浴びせられた。

また恐らくはトランプ大統領の意向を汲んだウィリアム・バー司法長官が、自ら捜査の陣頭指揮をとるなど並々ならぬ意欲を見せているので、グーグルが提訴される可能性はかなり高いと見られている。

提訴の有無を含め、グーグルに対してどのような措置が施されるか、その決定は今年の夏か秋頃には下される見込みだ。