【竹内 豊】ある日突然、テレワークが原因で「コロナ離婚」危機に陥る夫たち こういう言動には要注意!

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新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及が加速しています。その結果、夫婦が家で長時間共に過ごすことで、夫婦関係が「過密」になり、夫婦間で性格や価値観の不一致が表面化して、離婚危機に陥る夫婦が出始めているようです。

そこで今回は、妻からコロナ離婚を突き付けられる危険性が高い夫の言動を、民法の観点から浮き彫りにしたいと思います。 もし、心当たりがあるようなら要注意です。では、さっそく見てみましょう。

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「子育て」をめぐる言動

子育てに非協力的な夫は要注意です。 たとえば、テレワークで家にいる時間が増えたにもかかわらず次のような心覚えはないでしょうか。

・妻に子どもの面倒を任せっぱなし。自分から子どもと遊ぶようなことはまずしない。
・自室にこもって終日テレワーク。子どもが近づくと「仕事の邪魔」と追い払う。
・妻から育児の協力を頼まれても、「仕事中」の一言でシャットアウト。

親権共同行使の原則

親子関係から生ずる最も重要な法的効果は、親が未成熟の子に対して、子の利益のためにこれを保育・監護・教育すべき地位に立つことです。 すなわち、親が未成熟の子に対して親権を有するということです(民法820条)。

民法820条(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

親権は、父母の婚姻中は原則として父母が「共同」して行います(民法818条3項本文)。これを「親権共同行使の原則」といいます。 共同して行うとは、父母共同の意思に基づくことであり、一方の恣意的な親権行使を防ぐ意味もあります。

民法818条(親権者)
1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

単独親権のケース

ただし、父母が共同で親権を行使するという法の根本原則も、不幸にしてそれが不可能であるか、妥当でない場合には破られて、父母の一方が単独で親権を行使します(前掲民法818条3項ただし書)。具体的には、次のようなケースがあります。

(1)父母の一方が単独で親権を行使できないとき

成年被後見人(*1)・親権喪失者(*2)のように法律上不能な場合と、行方不明・精神病などのように、事実上不能な場合を含みます。これらの場合には前述のとおり他の一方が単独で親権を行使します。

(*1)精神上の障がいにより、事理を弁識する能力を欠く常況にあるとして、家庭裁判所が後見開始の審判をし、成年後見人を選任された者(民法7・8条)。
(*2)父または母による虐待または悪意の遺棄があるとき、その他父または母による親権の行使が著しく困難または不適当であることにより、子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、その父または母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、停止制度の利用になる(民法834)。

(2)父母が離婚するとき

父母が離婚するときは、その一方だけが親権者となります。いずれの一方だけが親権者となるかは、協議上の離婚では、父母の協議で、また、裁判上の離婚の場合は、裁判所が親権者を定めます(民法819条1項・2項)。

民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)
1 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

もし、単独親権に該当しないのにもかかわらず、親権者としての責務を妻に任せきりで、夫の自分はその責務を事実上放棄しているようであれば、共同親権の趣旨に反すると考えられます。したがって、このような夫は、妻から「親権者としての責務を果たしてくれない」としてコロナ離婚を突き付けられる危険性が高いと考えられます。

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは?

妻が夫に対する愛情を喪失し、夫の行動、性格や生活環境などから、相手の顔を見るのも嫌なほど結婚生活を継続し難いと感じるようになった場合、民法は、抽象的な離婚原因の一つに「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を規定しています(民法770条1項5号)。

民法770条(裁判上の離婚)
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

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「重大な事由」の具体例

この「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するだけの事情があるかどうかについては、相手方が離婚されてもやむをえないだけの、つまり、もし同じ立場に置かれたら、誰でも結婚生活を継続する意思を失うであろうことが必要になると考えられています。具体的には次のような理由が挙げられます。

(1)暴行・虐待(DV)
(2)同居に耐えられないような重大な侮辱
(3)犯罪行為
(4)浪費癖、労働意欲の欠如
(5)性生活の不一致〜性交不能、正当な理由のない性交拒否、異常な性行為の要求など
(6)精神的な事由〜お互いの性格、人生観や生活感覚の不一致、愛情の喪失など
(7)他方配偶者の親族との不和

離婚裁判では、これらの事情に加えて、2〜3年程度の別居があれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断されやすいようです。

テレワークによる在宅勤務によって長時間「密」な環境で夫婦が共に過ごすことで、今まで気付いていなかった(もしくは気付いていても大目に見ていた)お互いの性格、人生観や生活感覚の不一致が露呈することもあるかもしれません。

そのことがきっかけで、妻に対して侮辱するような言動をしたり、最悪の場合暴力を振るうなど、前掲の「婚姻を継続しがたい重大な事由の具体例」に該当するようなことを妻に対して行ったらどうなるでしょうか。きっと、これが引き金となり妻からコロナ離婚を突き付けられる危険性が一気に高まるに違いありません。

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新型コロナウイルスの感染拡大による影響で慣れないテレワークや景気後退による先行き不安などでストレスが蓄積して、「家族のことまで考えている余裕がない」という方もいらっしゃると思います。しかし、そんなときだからこそ、「家族の力」が必要になるのではないでしょうか。

結婚生活をこれからも続けて行く意思があるのなら、「共同親権の原則」と「婚姻を継続しがたい重大な事由」を胸に刻みコロナ離婚を回避していこうではありませんか。私も妻子ある一人としてしっかりと胸に刻んでおこうと思います。