●意識調査から浮かび上がる「2020年新入社員」像は?

リクルートマネジメントソリューションズは6月26日、「2020 新入社員意識調査」説明会を開催し、ニューノーマル時代の新入社員の特徴と育成のポイントを説明した。

初めに、リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 研究員 小松苑子氏が新入社員意識調査の結果を発表した。同調査は2020年3〜4月の期間に、同社新入社員導入研修「8つの基本行動」の受講者350名を対象に調査したもの。

リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 研究員 小松苑子氏

働くうえで大切にしたいこと n=350(3つまで複数回答可) 資料:リクルートマネジメントソリューションズ

「働くうえで大切にしたいこと」という質問に対する回答は、「仕事に必要なスキルや知識を身に着けることが」49.1%と過去最高だった一方、「何事にも率先して真剣に取り組むこと」「新しい発見や行動で、職場に刺激を与えること」は調査開始(2010年)以降下がり続けて過去最低となったという。

小松氏は「新入社員は、挑戦的・物資的な豊かさによる物質・金銭的欲求や挑戦することへのモチベーションが低下している一方、ほしい描法に容易にアクセス可能な情報社会で育っている。こうした社会的背景い加えて、実用的なスキル・知識への関心の向上、近年の働き方の変容などが、この結果を生んだと考えられる」と説明した。

理想の職場 n=350(3つまで複数回答可)  資料:リクルートマネジメントソリューションズ

次に「理想の職場」についてでは、「お互いに助け合う」「アットホーム」「お互いに個性を尊重する」がトップ3を占めた。一方、「活気がある」「お互いに鍛えあう」という回答は年々下がり続けており、鍛えあい活気のある職場よりも、助け合うアットホームな職場を求めていることが分かった。

その社会的背景には、近年の競い合うことではなく多様性を尊重する教育、サービスを選ぶ側としての経験が多いといった個人最適な消費活動へのパワーシフトなどが考えられるという。

上司に期待すること n=350(3つまで複数回答可)  資料:リクルートマネジメントソリューションズ

また「上司に期待すること」の質問に対する回答は、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」が57.3%と一番高いほか、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が46.9%と、調査開始以来14.9%も増加していることが分かった。逆に、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」「周囲を引っ張るリーダーシップ」という回答は大きく低下している。

こうした回答の減少の要因としては、コーチングやカウンセリングなどの存在や、怒られて失敗しながら成長する体験の減少、逆評価の体験の増加などが起因していると考えられるとのこと。

身につけたい力 n=350(3つまで複数回答可)  資料:リクルートマネジメントソリューションズ

さらに「身につけたい力」に関しては、「コミュニケーション力」が62.6%と圧倒的だが、「文章力」が年々伸びており、「語学力」や「リーダーシップ」はそれぞれ過去最低で下落し続けているという結果が得られた。

「文章力」の需要が高まっている要因として、チャット型のコミュニケーションが一般的になり、メールや手紙でのコミュニケーション機会が減少していることや、また、欲しい情報に容易にアクセス可能になり、自身でゼロから文章を考える機会が減少したことなどが考えられる。

仕事・職場生活をする上での不安 n=350(3つまで複数回答可)  資料:リクルートマネジメントソリューションズ

「仕事・職場生活をする上での不安」に関する質問では、「先輩・同僚とうまくやっていけるか」と「生活環境や習慣の変化に対応できるか」の不安が高まっていることが明らかになった。

「不安の高まりについては、新型コロナウイルスの影響で、対面での関係性の構築や想定していた仕事への取り組みが困難になったことも起因していると考えている」(小松氏)

調査結果から、近年の新入社員は、新しいものに対して恐れず、率先して挑戦することへの関心が低い傾向があると分かった。

小松氏は「新たな価値を創造するために企業に求められることは、『仕事を依頼する時は、本人への期待、なぜ任せたいのか、仕事の意味や目的についても伝える』『本人の発送行動を観察・認知し、それらによる成功体験を本人に振り返ってもらうことで、自信を持ってもらい、次のチャレンジにつなげる』『個人のチャレンジを奨励する制度・仕組みをつくる』といったこと」と説明した。

また、新入社員に対するフィードバックについても、「言葉や態度など表面的な厳しさの衣をつけない」「フィードバックする基準やその意味や重要性などを伝え、それらに相手が納得している状態をつくる」「普段から本人をよく観察し、特性を理解した上で伝える」ことが重要であるという。

●After/Withコロナ時代における新人育成のニューノーマルとは?

続いて、リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員 桑原正義氏が「After/Withコロナ時代においての新人育成のニューノーマル」について説明した。

リクルートマネジメントソリューションズ HRD事業開発部 主任研究員 桑原正義氏

桑原氏は「昨今の新型コロナウイルスの影響により、正解がなく不確実なVUCA(※1)環境は加速された。新入社員の育成において、マネジメントのアップデートの最大の機会となっている」と述べ、「発想のアップデート」と「育成のアップデート」の両方を同時に行っていくことが重要であるとした。

(※1)Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた造語。現在の社会経済環境が予測困難な状況に直面しているという意味。

○発想のアップデート

「若者は未熟だ」「若者を組織に適応させる」「教育とは教えるものだ」といった考えを重視しているマネジメント層は少なくないはずだ。しかし、コロナによって加速されているVUCA環境においては、「若者の個性を十分に生かす」「逆に若者のから学ぶ」というスタンスを持つことが重要とされるという。

桑原氏は「若者から学び生かすべき具体的なポイントとしては、世の中の役に立ってるかどうかを重視するソーシャルインパクトの視界、デジタルネイティブの知識・リソースなどが考えられる」との分析を示した。

新人育成におけるニューノーマルの方向性

○育成のアップデート

「何を育てるか」に関すの考え方もアップデートしなければならない。以前までは、「言われてきたことをできる力」や「正解を遂行する力」が新入社員に求められていたが、今後は「自分で考え学び、探究する力」を育てていくべきだという。

Try & Learnサイクル

その具体的な手順として、同社は「Try & Learnサイクル」を推奨している。「(1)Focus:目的・相手の期待を具体化する→(2)Action:自分なりに試行錯誤し、考えを深めていく→(3)Reflection:失敗・成功経験から内省し、次に生かすといったサイクルを繰り返すことで、自身の成長と仕事の成果につながるとしている。

同時に「どう育てるか」のアップデートも必要だ。従来の育て方では、「上司から部下へ」「これまでの経験・正しいやり方を教える」が主流であったが、VUCA環境においては「自律的な学びを支援し、ともに考え学びあう」受信・共創型の育成が求められるという。

具体的には、以下のようなことが有効だそうだ。

答えは言わずに考える視点だけを提示する

本人の素直で率直な思考・感情を妨げない(忖度させない)

意見を伝える場合は、材料・選択肢を渡すイメージ(決めるのは相手)

すぐ答えが返ってこない場合は、じっくり待つ

桑原氏は「新入社員の行動を阻害するのは、やる気や能力よりも『不安と恐れ』。不安や恐れを取り除き、心理的安全を築き上げることで、新入社員の挑戦を促すことができる」と話した。自分自身がありのままでいられる環境が、個々人の能力を最大限に引き出すということだ。