神奈川県視覚障害者福祉協会理事長の鈴木孝幸さん=同県座間市で、木下翔太郎撮影

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 道路や公園で歩きながらスマートフォンや携帯電話を操作する「歩きスマホ」を禁じる全国初の条例が神奈川県大和市議会で成立し、7月1日に施行される。他の歩行者や車と衝突したり、階段から転落したりする事故を防ぐのが狙い。違反者に対する罰則は設けていないため、実効性は未知数だが、視覚障害者などからは歓迎の声が上がる。【木下翔太郎】

【図解】接触確認アプリの使い方

 「条例は大歓迎だ。条例が他の自治体に広がってほしい」。視覚障害がある県視覚障害者福祉協会理事長の鈴木孝幸さん(63)は、条例がきっかけで歩きスマホ禁止の動きが広がることに期待を寄せる。

 視覚障害者にとって点字ブロックは「安全地帯」だが、2〜3年前から歩きスマホをしている人とぶつかることが増えたという。「ぶつかった後に『見えなかった』と言われたことがある。見えないのはこっちなのに。非常に危険だ」と憤る。

 違反者に対する罰則の導入には慎重な考えで「罰則がなくても自主的にやめようと思ってほしい」と話す。そのうえで「大事なのは条例を作るだけでなく、どう周知・啓発していくかだ」と今後に注目している。

 専門家は条例の効果をどうみるか。

 歩きスマホの危険性を研究している徳田克己・筑波大教授(バリアフリー論)は「全国に先駆けて条例で啓発することは大きな意義がある」と評価する。

 徳田教授は歩きスマホが減らない理由を「相手の立場を考えて行動できなくなっている」と分析。「歩きたばこが条例で減ったのと同様に、歩きスマホも条例で規制するしかない」と指摘する。

 一方で、罰則規定がなければ、抑止効果は低いともみており「施行後に効果がない場合は次の段階を考える必要がある」と述べた。

 大和市は施行後も実態調査を進め、罰則の導入を検討するとしており、施行でどのような抑止効果が生まれるか注目される。

ポスター設置で啓発

 歩きスマホは、画面を見ながら歩くため、視野が狭まり周囲への注意がおろそかになってしまい、衝突や転落事故につながる危険がある。東京消防庁によると、2018年までの5年間に都内で165人が救急搬送された。「ポケモンGO(ゴー)」などの位置情報を使ったゲームや地図アプリの普及も、歩きスマホを生む要因になっている。

 神奈川県大和市内でも歩きスマホによる歩行者と車両の事故が報告されており、本格的に対応策の検討に乗り出していた。市は1月、平日と土曜にそれぞれ昼と夕方に2時間ずつ独自の歩きスマホに関する実態調査を実施。小田急江ノ島線の中央林間駅で平日に11%、大和駅で土曜に13%が歩きスマホをしていた。市は6月定例会に条例案を提出し、25日に可決・成立した。

 条例では「屋外の公共の場所でスマホなどを操作する時は、他の歩行者の通行の妨げにならない場所で立ち止まった状態でなければならない」と規定している。市の担当者は「まずは啓発から始める」としており、市の交通安全巡視員が注意喚起するほか、ポスター設置などを通じて条例の啓発や周知を進める。【木下翔太郎】