無観客で行なわれた東京V対町田。スタンドには緑の袋を被せて”ホーム感”を演出。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[2020年6月27日 J2リーグ第2節 東京V1−1町田 味の素スタジアム]

 飛田給駅で降り、味の素スタジアムに向かう道中に、ユニホームを着たサポーターの姿はひとりも見当たらなかった。

 普段なら試合前にチームのグッズを身に纏ったサポーターと電車で乗り合わせ、スタジアムへと向かう。しかし駅にも、いつもはサポーターでごった返しているスタジアム最寄りのコンビニにもサポーターの姿はない。

 約4か月ぶりのJリーグの取材は、今までとは様々な面が変わっていた。無観客試合、新名称「リモートマッチ」は、まさに“新様式”である。

 試合の2週間前から体温を測定し、問診票とともに取材の申請を送った。試合当日には、スタジアム入場前に検温&アルコール除菌。さらに、これまで紙に社名と名前を記入していた受付の方法が、モニター越しによる形式に変わっていた。これは東京Vが独自に実施した方法だという。
 
 社名と名前を伝えて“リモート受付”を済ませ、記者席に直行。普段ならメディア控室で試合までに時間を過ごすのだが、“新様式”では開放されていない。記者席でも他の記者たちと間隔を開けて陣取った。

 選手たちのウォーミングアップを見ていても、今までとは異なる雰囲気を感じる。例えばシュートが決まるたびにゴール裏のサポーターから拍手が起きたりするものだが、当然スタンドには誰もおらず、閑散としている。

 ただし、その代わりにサポーターからのメッセージが大型ビジョンに映し出されたのは一興だった。大人数での声援には迫力は及ばないものの、ビデオメッセージがそのまま流されるので、一人ひとりの想いが伝わり、これはこれで趣深い。また観客席に緑色の袋を被せて“ホーム感”を演出。バッグスタンドの1階席が緑で染まった。

 選手が入場する際には整列はせず、散り散りにピッチへと入っていく。エスコートキッズは不在。さらに集合写真の時も“ソーシャルディスタンス”を確保していた。

 スタジアムのスピーカーから録音されたヴェルディサポーターのチャントが流れるなかでキックオフ。試合中にはCKなどのチャンスの場面になると、度々チャントが流れ出した。
 
 用意されていた応援歌は決まった数パターンではあったものの、それでも選手たちへの影響は少なからずあったようだ。

 東京Vの井上潮音は試合後に「結構大きい音量だったので、すごく聞こえていました。サポーターがいるような感覚で試合をさせてもらった。直の声ではなかったですけど、声援は背中を押してくれるなと思いました」と話している。

 ピッチの外に目を向ければ、ボールボーイがマスクと手袋を着用。また飲水タイムには選手個別の給水ボトルが配られるという徹底ぶり。

 こうしたピッチ内外で変更点は多いが、もっとも大きな違いは、スタジアムが静かな分、選手や監督の声がはっきりと聞こえる点。DAZNなどの中継を通しても想像以上に選手たちの声をマイクが拾っている。
 
 東京Vの永井秀樹監督は言う。

「不思議な感じの試合でした。我々の仕事からすると、指示が直接伝わるので、やりやすさは感じました」

 一方で選手も声の通りやすさを感じていたようだ。井上は「選手、監督の声がすごく通るので、プラスになることも多かったかなと思います」と話す。

 もちろん戦術的な指示も相手に筒抜けだが、逆に「わざと相手に聞こえるように言っている時もある」(永井監督)。観る側はそうした駆け引きを楽しむのも良いだろう。

 永井監督の具体的な指示、ボールを呼ぶ藤田譲瑠チマの甲高い声、町田のディフェンスリーダー深津康太のチームを締める声、ポポヴィッチ監督の激昂……選手や監督の声に耳を傾けると新たな発見がある。リモートマッチ、思ったよりも楽しめそうだ。

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)

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