「MIU404」1話 “野生ばか”綾野剛を一喝する星野源 交わらない二人のただ者じゃない感にゾクリ

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ヒットドラマの立役者がそろった話題のドラマがついに放送開始

「MIU404」(TBS系 金曜よる10時〜)は「コウノドリ」の綾野剛と星野源主演、「アンナチュラル」の野木亜紀子脚本、塚原あゆ子演出、新井順子プロデュースとヒットドラマの立役者がそろったドラマ。主題歌はヒットメーカー米津玄師「感電」で、オールスター感がある。コロナ禍で放送開始が遅れていたが、6月26日、ようやく第1話「激突」がはじまった。

タイトルにある 「MIU」(ミウ)ってなんだ? とまず思う。これは MOBILE INVESTIGATIVE UNIT(機動捜査隊)の頭文字。「機動捜査隊」とは? と検索すると毎日新聞のサイトの「コトバ解説」というコーナーが検索上位に上がってきて、そこには “初動捜査や逃走している容疑者の追跡調査のほか、複数の警察署や都道府県の管轄地域にまたがる広域事件や重大事件の捜査に当たるのが主な役割です”とあった。

“事件が発生したら一目散に現場に駆けつける”役割。それを24時間勤務でやっている、大変なお仕事、それが機動捜査隊。「機動隊」と間違えられやすいが違うお仕事である(その違いも毎日新聞のサイトに書いてある)。「機動捜査隊」という画数の多いゴリゴリした語感を「ミウ」と略すと印象が若干緩和され、親しみやすくなる気がする。

野生の勘で勝負する伊吹と、理屈で説明できることで勝負する志摩

実際はどうなのかわからないが、「MIU404」の世界では、日夜捜査に明け暮れる機動捜査隊にも働き方改革の波が来ていた。24時間働けますか? の時代は遠い昔……。4月から機動捜査隊が3部制から4部制になり、隊員が増員、「3日に一度だった24時間の当番勤務が4日に一度」に変更されることになる。新設された第4機捜に伊吹藍(綾野)と志摩一未(星野)が配属され、バディを組む。二人の乗るパトカーのコードナンバーが「404」。

配属早々、伊吹と志摩は覆面パトカーに乗ってカーアクション。あおり運転の車に遭遇、“野生ばか”で直情型な伊吹がむやみに車を挑発したため、その勢いで、近くを歩いていた老女を転倒させてしまう。あおり運転の事件はこれで解決したかと思ったが、その後また浮上してくる。転んだ老女も行方不明に……。

24時間勤務の間に伊吹と志摩が遭遇する様々な出来事と人々。一見無関係のようなことが東京の街を走る道路のようにどこかでつながっている不思議なめぐり合わせ。複数の警察署や都道府県の管轄地域にまたがる広域事件に関わることのできる機捜だからこそのドラマがそこにある。

あおり運転をしかけようとしている車に「上には上がいるって見せていくスタンス〜」と積極的に絡んで本性をあぶり出していく伊吹を「マウントとらないと死ぬ病にかかっている」と困惑する志摩は、ことなかれ主義で慎重派。ルールに囚われない野生の勘で勝負する伊吹と、ルールを大事にして理屈で説明できないことは信じない志摩。交わらない二人がうまくバディを組んでいけるのか……。

第4機捜には、いかにも昭和生まれのおじさんらしい、班長・陣馬耕平(橋本じゅん)と冷めた現代っ子でキャリアの九重世人(岡田健史)のバディと、彼らを取りまとめる隊長・桔梗ゆづる警視(麻生久美子)がいて、皆、それぞれのスタンスで任務に当たっている。なかなか曲者ぞろいで面白そう。

綾野剛と星野源のカーアクションという意外性 令和の「あぶない刑事」という声も

第1話はなんといってもカーアクション。危ない! と思わず目をつぶりそうになる激しさ。こういう場面は昭和の刑事ドラマではよくあって、車が爆走、ぶつかって大炎上、炎の中から主人公が生還みたいなものが視聴者を喜ばせた。そういうのを綾野剛と星野源が? という意外性。令和の「あぶない刑事」という声も。

綾野剛は「クローズZERO」などの青春喧嘩映画や「パンク侍 斬られて候」などの時代劇でも激しいアクションをやっているが、カーチェイスは新鮮(「ルパン三世」があったか)。星野源はおおよそそういうアクションもののイメージはない。もっとも前述のように、星野演じる志摩は理屈が先行する頭脳派タイプで、野生の伊吹に振り回されていく役割で、そこが令和らしさなのかもしれない。

カーチェイスはワクワクするのだが、綾野と星野は車に乗ってリアクションに徹し、主に活躍するのは車とカースタントスタッフになるわけだが、そこは、伊吹は俊足という設定で、最終的には車から下りて猛スピードで犯人の車を追いかける熱い場面も。アシガールではなくアシボーイ(ちなみに、裏番組の足の速い少女のドラマ「アシガール」〈NHK〉はこの日お休みだった)。

こうなると、みんな大好き野木亜紀子脚本は、特捜刑事たちの楽しい会話劇で見せるお仕事ドラマ部分に生きるのかなと思って見ていたら(みんなで機捜うどんを食べる場面など楽しい)、そんなわけはなかった。「あおり運転」と世間にはびこるマウント取り合いとを重ねていくこと。伊吹のあおりで志摩が熱くなっていくところなどが重なり合って見事。

伊吹は単なる脳みそ筋肉な体育会系ではなく暴走し過ぎると制御不能な危うさがあり、志摩は単なる理性派ではなく、自分も他人も信用していないという極端な冷たさを感じさせて、伊吹にも、志摩にも何かありそう……と思わせる。404というナンバーも意味深……。

綾野剛と星野源のただ者じゃない感

放送を見たあとに私は「きれいにまっすぐ速く飛んでいたボールがふいに落ちるみたいなフェイント技が効いていた」とTweetしたのだが、勢いよくボールがこっちに向かってきてそのまま受け取る気満々だったら、目の前でストンと落ちて、取り逃してしまうような意外性がそこここに用意されていて、それが逆に気持ちいい。綾野と星野は共に、そういうふっと表情が変わる瞬間が佐々木小次郎の燕返しのごとく鮮やか。ただ者じゃない感が漂いゾクリとなる。回数を重ねていくと、おおお? と驚く話に変貌するんじゃないだろうか。謎のナウチューバー(渡邊圭佑)も気になる。
(木俣冬)


番組情報


TBS 金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00〜10:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/