■最近増えた50代フリーランス女子

新しい、「年収1000万円の稼ぎ方」をしている「新型・年収1000万円層」が誕生しています。年収1000万円と言えば、大企業に勤めている一部の人口だというイメージが、いまだに強いでしょう。しかし、50代・女性がスタートアップや上場企業を複数社兼任し、自分の専門性を強みに渡り歩いています。そして、Slack、チャットワーク、テレグラム、LINEワークス、などあらゆるコミュニケーションツールとその企業ごとに導入されているITツールを使いこなす。

写真=iStock.com/xavierarnau
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

彼女たちは、“お決まりの言葉”を会議でただ述べるために存在するのではなく、リアルの実務の現場を守っています。「理念に共感した企業だけをサポート」するといった自由な働き方で年収1000万円以上を稼ぎ出すのです。そのような、働き方を実現しているのは、1人や2人ではなく、数多く存在しており、現代社会に閉塞感を感じている人たちは彼女たちの力強い存在を知ることで、間違いなく新しい「働き方」と「価値観」に触れることができるでしょう。

彼女たちに共通している点は「専門性」と「信頼」です。

■大企業に勤める、年収1000万円のリアル

前回、年収8000万円が語る「年収450万円から1000万円に駆け上がる時期が最も幸せだ」という事実に迫りました。多くの読者の方々からは、「全くその通りで、年収1000万円あたりからいろいろと不満出てくる」という意見を数多くいただきました。では、現在、年収1000万円の人たちはどのように、日々を感じて過ごしているのでしょうか?

まず、最初は、誰もが想像しやすい「大企業に勤務している人たち」のリアルに迫りましょう。キーワードは「年収1000万円は、富裕層の最貧困層」です。

年収1000万円となり、自分が富裕層に入ったことを意識しだすと、たとえば「楽天カード」ではなく年会費1万1000円の「楽天プレミアムカード」を利用したり、「武蔵浦和」ではなく「武蔵小山」に住まいを求めたり、食事は「安楽亭」ではなく「游玄亭」で堪能したり、少しだけアップグレードした生活を始める人が多いように感じます。しかしこの消費が家計を圧迫してしまいます。

■富裕層の自覚が目覚め、「ブランドマンション」に住み始める

一人単価3万円の鮨店に行くようになりますが、その一方で”一番貧乏”とも言えてしまうのが、年収1000万円クラスなのです。自身も年収1000万円以上で、年収1000万円以上のエリートの数多くの交流がある恋愛コンサルタントの鈴木リュウ氏は「富裕層へのアクセスは多少、開かれますが、その中で一番ランクの低い消費をする、やせ我慢の生活が続く」とは述べます。では、住む場所には、どのような変化があるのでしょうか。立地で言えば埼玉浦和に住まずに、武蔵小山に住むようになり、アクセスが便利で家賃の高い場所に住むようになります。

その変化は、交通の利便性の側面からだけではなく、「富裕層の自負」からの変化です。年収1000万円になると富裕層の自覚が芽生え、ラ・トゥール、ブリリア、パークハビオといった高級ブランドマンションに住み始める傾向があるようです。「年収1000万円になり、嫁がブランドマンションに住みたがるようになりました。本来、年収1000万円だと普通は住めないようなブランドマンションに、福利厚生が分厚い大企業だと住めるので、ラ・トゥールシリーズに引っ越しました」と30代・大手商社勤務の男性は話します。

■妻の想いをかなえたくて無理をする年収1000万円の末路

住友不動産の高級賃貸マンションである、ラ・トゥールシリーズは「代官山」だと、2LDKでも家賃が約190万円になります。最上級を旨とするラ・トゥールの中でも屈指のラ・トゥールが「代官山」です。その圧倒的な“ステータス”に憧れる妻の要望にできるだけ添いたいと、代官山ではないけれど、「神楽坂」を選択すれば、約35万円と約6分の1の家賃となります。そこに、福利厚生の手当を当てれば、収入の3分の1を家賃に充てる理論が当てはまります。最高級ではないけれど、同じブランドを選ぶという消費行動の典型例です。インタビューの中で感じることは、年収の高まりとともに、周りの期待にも応えていこうとする、サラリーマンの姿がそこにはあります。“やせ我慢の生活”と言われつつも、「幸せ」の形を垣間見た気がします。

一般的なサラリーマンの平均年収の5倍にあたる、2000万円が平均年収を誇る、電子機器関連の企業で働く30代男性は、「地方勤務なので、都内でお金を使わない分を車にお金を充てています。そのため、ポルシェマカンを新車で買いました。同僚もジャガーXJに乗っています」と述べる。

■5年落ちのBMW3シリーズを残価設定ローンで購入…

年収がUPすると外車に乗り換える人たちがいるようです。また、年収1000万円と言っても、都内と地方勤務では、違いが伺えます。富裕層の自覚の芽生えから「外車」へ乗り換えるものの、都内勤務の方では、車を中古で買うケースも見られます。「国産車から乗り換えて、5年型落ちのBMW3シリーズを残価設定ローンで購入しました」(30代・広告代理店)と、まさに“やせ我慢消費”の姿を述べてくれた方もいました。

外車は国産車と比較すると修理代、メンテナンス代が高くなりがちで、場合によっては国産車の2〜3倍の金額がかかることも珍しくありません。修理・メンテナンスに必要な部品を海外から取り寄せなければいけないことが多く、部品代に輸送費が含まれるため修理・メンテナンスが高くなるのです。購入時の金額だけでなく、維持費も高い外車をあえて選ぶ方々は、「小さい頃からの憧れ」「デザイン性が気に入っている」と自分の趣味嗜好を謳歌しているように感じた。

所有にこだわらない「シェア」を好む若者が増えてきていると感じていましたが、若い世代にも「所有すること」を大事にして生きている人たちもいるのです。

■子供の教育費用にもお金がかかる

年収1000万円の高所得の人は、自分自身が高学歴のケースも多く、子供の教育にも非常に熱心な人が多いです。塾や習い事にお金を惜しまず、小学校までは公立に通わせても中学からは私立に入れる傾向があります。ざっくりいうと、中学3年間で私立中学は300万、公立中学は100万と3倍もの学費の差があると言われています。これに塾や習い事の費用を含めると、子供1人当たり、年間100万〜150万円の支出が発生することになり、子供の数が増えれば、その数字は2倍、3倍と膨らみます。ボーナスも学費に消えてしまうのです。

年収1000万円くらいから、自分のやりたかったことや、欲しいものを少しずつ買えるようになる一方で、妻や子供、親戚など、周りの期待と要望も大きくなります。その中で、バランスを取るためにも、自分の欲望を少し横に置かなければならない状況も多くあるのでしょう。それに加えて、税金が重くのしかかり、年収1000万円のサラリーマンの方々は、不条理・不満を最も多く感じる層なのでしょう。だからこそ、年収1000万円は富裕層で最も貧乏な人たちなのです。

■やっぱり50代フリーランス女子最強説

ここまで述べた、「大企業型・年収1000万円」とは全く異なる「新型・年収1000万円」の層の話に移りましょう。最初に述べたように、スタートアップや上場企業を複数社兼任し、自分の専門性を強みに渡り歩いている50代の女性は、「30代の頃から今と同じようなフリーランスとしての働き方をしていた」と話す。実績の積み重ねが「信頼」となり、20年間、仕事は引く手あまた。20年前は、今よりもフリーランスや個人の活動には、理解が乏しかった時代を考えると、われわれの想像を超える苦労があったでしょう。しかし、今の彼女たちは、心から携わりたいと思った企業で自分の専門性を発揮する。力強い生き方をしている姿は輝いていた。

「サラリーマン・男性・大企業」と「フリーランス・女性・50代」、どちらも年収1000万円の働き方です。取材を通じて、現代社会は、やはり、ずいぶんと価値観が多様化し、一人ひとりが持つ、自由な価値観の中で生きることが許されるようになってきていることを、あらためて感じました。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。
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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)