【THIS IS MY CLUB】心に響く声とともに|城後寿(福岡)

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 DAZNと18のスポーツメディアで取り組む「DAZN Jリーグ推進委員会」が、その活動の一環としてメディア連動企画を実施。Jリーグ再開に向けて、「THIS IS MY CLUB -FOR RESTART WITH LOVE- Supported by DAZN Jリーグ推進委員会」を立ち上げた。サッカーキングでは、アビスパ福岡で在籍最年長となる城後寿選手に“クラブ愛”をテーマに語ってもらった。

インタビュー・文=鳴神亨
写真提供=アビスパ福岡

――今シーズンはリーグ開幕戦を終えた後、新型コロナウイルスの影響により約4カ月に渡って公式戦の開催が中断することになりました。シーズン中に試合が行われない期間をどのように捉えていましたか?

城後 選手としていいコンディションを維持することだけを考えていました。中断しているとはいえ、オフではないですからね。僕の年齢では休んでしまうとベストコンディションを取り戻すまでに時間が掛かってしまいます。常にサッカーを意識していないといい状態を保てないですから。

――4月4日から5月末まで、アビスパ福岡はチーム活動を休止することになりました。その期間、ご自身が取り組んでいたことは何ですか?

城後 ボールフィーリングを落とさないように、人のいない時間を見計らって公園でボールを蹴っていました。一人なので、できることは限られていましたけどね。また、インターネットを通じてサッカーを見ることもありました。日頃から映像でサッカーを見るタイプではないので、新しい発見があったり、新たにイメージできたことがありました。

――城後選手が公園でボールを蹴っている姿を福岡に住むファンの方が見たら、びっくりするんじゃないですか?

城後 帽子を被ってマスクをしていたので、多分、誰にも気付かれなかったと思います(笑)。シーズンオフでもトレーニングをする時は練習場に行っていたので、公園でボールを蹴るなんて小学生の頃以来じゃないですかね。でも、そういう環境であれ、ボールを蹴るために公園へ行ったということは、サッカーを愛してるからこその行動だったのかなと。改めて自分の気持ちを確認できた点は良かったと思います。

――中断期間中はフィジカルコンディションだけでなく、メンタル面のケアにも苦労されたのでは?
城後 正直、モチベーションを保つのが難しかったです。Jリーグ自体の再開のタイミングが分からず、どこに照準を合わせて取り組むべきか、戸惑いがありましたから。また、サッカー選手として給料をもらいながら仕事ができていないことに対して、もどかしさも感じていました。

――先の見えない状況に「心が折れそうになった」という発言をされていました。そういった状況をどのように乗り越えたのでしょうか。

城後 「ポジションを奪う」という強い思いがあったからこそ、モチベーションを維持できていたのだと思います。(ギラヴァンツ)北九州との開幕戦で、僕はスタメンとしてピッチに立つことができなかったんですよ。心が折れそうになった時にはその時に感じた悔しさを思い浮かべて、「この期間にチームメイトと差をつけてレギュラーを奪ってやる」と考えるようにしていました。開幕戦での、あの悔しさがなければ、難しい状況を乗り越えられなかったかもしれません。

――開幕戦で感じた悔しさがご自身を動かしていたと。

城後 そうですね。あの時の悔しさが僕のエネルギーになりました。ベンチからピッチを見て、「試合に出て活躍し、ファン・サポーターに応援してもらってナンボの世界なんだ」と改めて感じたんですよね。あの日は本当に悔しい思いをしましたけど、それが自分にとってはいい刺激になったんだと思います。

――チームとしての練習が再開されたのは6月1日でした。約2カ月ぶりとなるピッチでのサッカーはいかがでしたか?

城後 本当に気持ち良かったですよ。帽子やマスクをする必要もなくなりましたし(笑)。いやあ、「サッカーは楽しい」と改めて感じました。その気持ちが再開に向けて新たなエネルギーになったのは間違いありません。「この思いを忘れずにやっていこう」と強く思いましたね。

――今年でクラブ在籍16年目を迎えました。これまでの15年間、同じクラブでプレーし続けてきたことについて、率直にどう感じていますか?

城後 地元であるアビスパというクラブで、まさかここまで長くプレーすることになるとは思ってもいなかったです。今年、クラブ創設25周年を迎えたクラブで、僕は半分以上の15年間を過ごしている。自分でも驚きというか、そういった感覚がありますね。ただ、僕はまだ何もつかみ取っていないんですよ。このクラブで、タイトル獲得という目標を成し遂げていない。15年に渡ってプレーしてきた中で、何か一つでもタイトルを獲ることができていれば……。そう思うと、やっぱり悔しいですね。

――いろいろな思いの詰まった15年間だったかと思います。

城後 そうですね。この15年間ではJ1昇格、J2降格を3度ずつ経験しました。また、経営難に苦しむクラブの姿も見てきました。改めて振り返ってみると、苦しいことのほうが多かったと思います。でも厳しい経験は、喜びによって一瞬でかき消せることも知っています。そういう意味でも、今シーズンはなんとしてもJ1に昇格したい。もう残りの選手生活はそんなに長くないということは僕自身が一番感じていますから、なるべく早くJ1の舞台に戻って、結果を残したいと思っています。

――クラブとともに15年間を過ごしてきた中で、やはり“クラブ愛”は強いと感じますか?

城後 ……どうでしょう(苦笑)。インタビューの際に「“クラブ愛”とは?」と聞いていただくことも多いんですけど、答えが思い浮かばないんですよ。「ただただ、好き」としか言えないんです(笑)。「どこが?」と聞かれても正直、うまく答えられないんですよね。

――では、どのような時に「好き」と感じるのでしょうか?

城後 なんでしょうね。「自分がなんとかしなくてはいけない」と思う時、かな。「アビスパのために何かしたい」と思った時に、「好きなんだな」と改めて感じますね。

――“アビスパ福岡を引っ張っていく感覚”というのは、いつ頃から抱くようになったのでしょうか。

城後 30歳を過ぎた辺りからだと思います。はっきりといつから、とは言えないんですけどね。

――とはいえ、30歳を迎える以前も「クラブのために」という思いは持っていたかと思います。

城後 もちろんそうですけど、若い頃というのはクラブ全体のことに関してなかなか気を配ることができていなかったんですよね。そんな自分が年齢を重ねるうちに、自分のことよりも「チームがうまくいくために」と考えるようになった。自分自身の行動や言動を正していくべきだと思うようになっていったんです。周りからの見られ方が変わったことも影響していると思います。

――キャプテンを務めたことも影響しているのでしょうか?

城後 それも影響していると思います。キャプテンに就任した際、年上の選手たちやクラブ関係者を始め、いろいろなアドバイスをもらったんです。その時に周囲からの期待を感じて、「自分には“そういう力”があるんだ」と思いました。とはいえ、僕は言葉を発してチームをまとめるようなタイプではありませんから、「とにかくがむしゃらに体で表現していかなきゃ」と。キャプテンに就任したことも含め、年齢を重ねるにつれて、少しずつ自分の意識が変わっていったという感じですかね。

――城後選手にとって“アビスパ福岡”というクラブはどのような存在ですか?

城後 良くも悪くも、なくてはならない存在です。生活の一部になっていると思います。

――“悪くも”というのは?

城後 うまくいかない時も含めて、という意味です。先ほども言ったように、やはり苦しいことのほうが多かったので。でも、つらい経験も僕の力になっているんですよね。そういう意味で、アビスパ福岡は自分にはなくてはならない存在だと思っています。

――公式戦が中断していた時間を経て、アビスパ福岡への思いに変化はありましたか?

城後 より強くなったと思います。クラブが苦しい状況にある中、「アビスパに関わる人を大事にしたい」という思いがクラブスタッフからすごく伝わってきました。アビスパはサポーターやスポンサー、その他多くの皆様の存在があってこそのクラブだと再認識し、あるべき姿というか、目指すべきところを改めて感じることができたと思っています。そういったクラブの姿勢が、「アビスパのために」という僕の気持ちをさらに強くしてくれたと思います。

――活動休止期間中にはインターネットを通じたイベントやSNSの発信を始め、クラブとともにさまざまな取り組みを行ってきました。5月25日には福岡市と久留米市へのマスク寄贈も行いましたが、どのような思いで行動に移されたのでしょうか。

城後 多くのスポーツ選手がそういった行動をしている中で、自分にもできることがないかと考えました。ただ、マスクの寄付に対して「マスクが不足している状況でどうやって手に入れているんだ」とか、「買い占める人がいるから、多くの人にマスクが届かなくなる」など、いろいろな意見があったことも知っていました。それでも、少しでも力になれるのであれば行動を起こすべきだと感じて。クラブスタッフに相談をして実施することにしたんです。子どもたちを始め、たくさんの方々から「ありがとう」という感謝の言葉をいただき、「やって良かった」と心から思いました。勇気づけなければいけない立場にありながら、メッセージを通じて逆に勇気をもらってしまったんですけどね。改めて「もっと頑張らなくてはいけない」と感じました。クラブに対してはもちろん、僕には「生まれ育った福岡のために」という思いもあります。自分にできることがある限り、今後も力になっていきたいと考えています。

――城後選手はアビスパ福岡の魅力について「ファン・サポーターと気軽にふれあえること」と語っています。活動休止期間には直接的な関わりを持てない中で、オンラインでの交流会を行いました。久しぶりにファン・サポーターとふれあってみていかがでしたか?

城後 話すことで何かを伝えられるタイプではないので、あまり出たくなかったんですけどね(笑)。それは冗談として、イベントはすごく楽しかったですよ。選手の素顔が見られるし、いわゆる“ギリギリの発言”みたいなものも飛び出しましたし。直接的にふれあえなくても、やり方次第でいろいろなことを伝えられるんだと感じましたね。

――交流会で特に印象に残っていることは?

城後 チームメイトの山ノ井(拓己)をイジりまくって盛り上がった場面が最も印象に残っています(笑)。ファン・サポーターは普段見られないような選手たちのやり取りや姿を見ることができて楽しんでくれたんじゃないですかね。画面をとおした交流だからこそ見られたものがあったと思います。

――アビスパ福岡の「Instagram」で、城後選手がふざけている動画をたくさん見ました。非常に珍しく貴重だなあと思ったのですが、距離が離れていても選手の素顔が見られるのはいいなと(笑)。

城後 ふざけていたのは自分を動画で使われたくなかったからですよ(笑)。変な発言をすれば、配信されることはないだろうと思ったんです。でも、音声をカットして投稿するなど僕の行動を逆手に取られて、クラブスタッフにうまく使われてしまいました。クラブスタッフには敵わないことがこれで分かったので、そういう悪さをするのはもうやめようかなと(笑)。

――ファン・サポーターの方も楽しんでくれたんじゃないですか?

城後 確かに、クラブスタッフは「喜んでもらえたよ」と言っていましたね。ファン・サポーターが楽しんで見てくれていたのであれば、今後も少しぐらいはふざけてもいいのかなと思ったりしています(笑)。

――城後選手の意外な一面を楽しみにしている方々がいる中で、最も期待されているのはやはり選手としての活躍だと思います。

城後 そういった期待に応えられなければプロとしては失格だと思っています。いかに期待を寄せてくれるファン・サポーターを喜ばせることができるか、スタジアムに訪れた人たちに楽しんで帰ってもらえるかを考えながらプレーしているつもりです。

――城後選手のチャントには「Oh My城後 届いているかい 俺らの熱い声」という歌詞があります。ファン・サポーターの声、期待は届いていますか?

城後 しっかりと届いていますよ。ファン・サポーターの期待を肌で感じています。その期待に応えられるかどうかは自分次第です。ピッチで活躍した分だけ、ファン・サポーターは僕のチャントを歌ってくれます。チャントを聞くと、本当に熱くなるんですよ。それがモチベーションの一つにもなっているので、一生懸命プレーして、たくさんのゴールを届けたいですね。

――ご自身が語る“アビスパ周期”で言えば、今シーズンはアビスパ福岡がJ1に昇格する年です。

城後 クラブ創設25周年という節目の年に、その目標を達成できれば言うことナシだと思います。こういう時期だからこそ、J1昇格の喜びは何十倍にもなるはずですから、“アビスパ周期”という勢いも味方にして戦っていきたいですね。今シーズンは監督が代わり、選手が大幅に入れ替わったので難しさもあると思いますけど、戦力は十分にそろっています。あとは自分たち次第だと思います。(長谷部茂利)監督には「勝つために何ができるのか。自分の個性を出してほしい」と言われているので、自分の個性を出しながらJ1昇格を果たしたいですね。選手が活躍することで、新たにスタジアムに来てくれる人は増えていくと思います。満員のスタジアムで戦えるように、いいプレーを見せていきたいと思います。

――ファン・サポーターに見てほしいご自身の武器・プレーとは?

城後 相手の裏への抜け出し、クロスへの飛び出し、アクロバティックなシュートが自分の武器です。FWとしてのプレーに注目してもらえたらと思います。

――そういったプレーを試合で見せるためには、チーム内競争を勝ち抜く必要があります。ポジションを勝ち取るために示していきたいことは何でしょう?

城後 開幕戦でスタメンから外れてしまった僕は、レギュラー陣の一歩後ろにいると思っています。日頃のトレーニングにおいて「試合に出たい」という思いをしっかりと表現できるかどうかが重要だと感じています。まずはトレーニングでアピールを続けていきたいですね。また、チャンスをもらったとしても、それを生かすことができなければ次はありません。その時に備えて、常に試合をイメージしながら準備をしていく必要があります。新加入選手の存在も含めて、すごく厳しい競争になりますけど、自分自身“まだまだできる”と思っています。チーム内競争に勝って、監督の構想に入っていけるように取り組んでいきたいと思います。

――「行け、撃て、魅せてやれ」というファン・サポーターの声に応える準備はできていますか?

城後 バッチリですよ! あとは自分らしいプレーを見せて、ゴールを決めるだけです。スタジアムで会う日が来るまでもう少し時間が掛かると思いますけど、皆さん、楽しみに待っていてください。