みなさん、生きてますか? ご無事ですか……?
まずはそこを、心からお慶び申し上げます。

さてコロナ禍、それは私にとって先の見えないデスマッチだった。小学校の休校と、保育園の自粛要請により、せまい家のなかで仕事・育児・家事の密接生活を送った。ワンオペは心身を破壊すると知っていたので、それなりの策を講じたつもりだった。が、緊急事態の名のもとに流され、いま思えば自ら退路を断っていた。

普段から余白などない生活を送っている者が、非常時にいっそう苦しくなるのは当たりまえ。これは未来の母親たちのために残す、コロナ禍で一人のアラフォー母がぶっこわれた話である。


■メモリ不足のポンコツPC、最適解を探して疲れはてる


人は何かをジャッジするときに、エネルギーを使うという。AppleやFacebookの創始者たちが、いつも同じ服を着ている(いた)のは、毎日のコーディネートを決める労力を省くため、というのは有名な話だ。

……ならば、なんでも習慣化してしまえば惰性でこなせるのでは?
そう考えた私は、なるべく全方位的な視点のもと、最適解を探そうとした。できるだけコロナの感染リスクを減らし、リラックスして過ごせる方法はなにか。

結果、化粧はしないと決め、服は上にあるものから着ると決め、「どうしても必要なら登園していいけれど」と保育園や学童を休ませると決め、子どもたちに午前は家にいてもらい、ランチは麺と決め、夕方は公園、どうしても仕事が終わらないときは、テレビやゲームで黙ってもらう、というルーティーンを確立した。夫は週2〜3日で在宅+週2外泊。家にいるときは、個室でずっとテレカンだ。

「子ども1人より、2人のほうが一緒に遊んでくれるかも」という期待は半分はずれた。
息子と娘は寄るとさわると喧嘩をし(顔面流血事件)、共犯となったとき遊びはエスカレートした(リビングで水風船爆破事件)。私が部屋に鍵をかけて仕事をしようもんなら、鉄の小型金庫でドアを割ろうとし、外側からガムテでドアを封じようとした(バリ封初体験)。息子は家出をし(探したけどいなかった。どこ行ってたの?)、娘は大きなため息が増えた。

これでも、けっこういい感じに回っていたのだ。教育委員会の動画学習と小学校の宿題がセットになった「時間割」が来るまでは……。細かく指示のある魔の時間割は、あきらかに「日中、手のあいている大人が子につきっきり」でいないと無理ゲーなシロモノだった。

■人は、自主的になら楽しくやれることでも、強制されると苦痛になる


1日「6つ」の新出漢字を練習していた小2息子は、宿題で出される「2つ」の漢字を書けなくなり、泣いて暴れてモノが飛ぶ。当たれば痛くて私も怒る。それを見ている娘も泣きわめく。イライラの悪循環にハマっていると知りつつ、抜け出せない。結局、動画にもつながらなくなり、教科書を一緒に読んで教えるハメになった。

仕事・家事・育児の「三密」生活に、学校のまるなげ教育が加わって4つの密。
その後、分散登校が始まった日に異変は起きた。学校に行きしぶる息子の手をひいていたら、私は涙が止まらなくなったのである。

悪いことをしていないのに、なぜこんなにもモノゴトが前に行かないのか。
なぜに子どもたちは、私のことを「大好き!」と言いながら困らせるのか。

歩道で立ち尽くす私を見て、落ちこみながら無言で怒る息子。
「なんで泣いてるの〜?」と聞く娘。
私は「ママはつらい……」というのが精いっぱいだった。

数日後、久しぶりに友だちと会って、ものすごくうれしいはずが、つらくて泣いた。ベランダから飛び降りて消えたくなり、文句ばかり言う子どもたちを殴ってしまいそうで、外に出た。

思考がヤバい。
これって「うつ」では。

腹を決めて受診するか……そう考えていた矢先、チェーン展開するビジネスホテルのキャンペーンを知った。「1泊2500円」。夫に許可取りしつつ、とりあえず2泊、予約をした。

■2泊の「手当て」で何が変わったか



▲アパホテル「アパ直」で予約。
自分だけの個室は仕事もオンライン飲みも自由!

ホテルに持って行ったものは、着替え、PC、本、ぬいぐるみ。
我ながら、ひくほど本気の手当てである。
ちょうど最終日に友人と会う約束があったので、それまでの48時間ほど繭になろう、休みに専念しようと決めた。

滞在中やりたいことは、ビーサンを履いてぺったんぺったんローソンへ行き、ウワサのPB商品を見ること。我ながら、なんてハードルの低い願望であることよ……!

ところが、である。
偶然クライアントさんも近くにいると聞き、仕事の打ち合わせを自ら申し入れ、さらにそのビジネスパートナーさんとの会食にも入れてもらった。
うっかり提案して、動画を納品した。
オンライン飲みもしたし、生身の友人にも会った。
気付けば毎晩ハシゴし、深夜まで飲んでいた(本来の3密は避けた!)。

おいおい……繭になって休む計画どこいった!?
また壊れるのかよ。

そう危惧していたが、死にたい気持ちは消えていた。だって、ごはんはうまいし、おしゃべりは楽しい。どうやら遊びと仕事だけをしていたら、再起動スイッチが押されたらしい。逆を言えば、「ねえ、ママ来てー!見て―!」と呼ばれない、泣かれない、怒られない、つまり子どもからの圧がないだけで、鼻歌が出るまで回復するのである。

■「4密」は暗黒。まず母親のケアが必要なのでは?


今回のコロナ禍で私の周りをみるに、母親にシワ寄せがいったケースが多い。休校にともなって有給を使いまくった人、仕事を辞めた人までいたし、公園でも子のつきそいは圧倒的に母親だった。夫が在宅勤務だと部屋にこもって仕事しかしないのも「あるある」だ。

そんなシワ寄せに耐え、4密のキャパ越え暗黒生活をしたら……ぶっこわれるのは私だけではないだろう。コロナ禍で疲れた子どものケアも大切だが、私は「お母さんのケア」が最優先だと思う。子どもをケアする人が、まず元気になってほしい。

「責任」などという言葉はいったんワキに置き、外野の声はオフ、アドレナリンも少々止めて、じんわり振り返ってみませんか。……けっこうがんばったよね、と。ムリはしすぎていなかったかな?と。

まだ気持ちがイライラし、なんとなく圧迫されていると感じたら、その3倍は参っていると見積もってほしい。4密中、「まだ大丈夫、まだイケる!」と麻痺していた私からは、くれぐれもそう申し上げたい。

次回また休校・登園自粛となったら、私は「まったく仕事ができないから、子どもを登園/登校させた」というお母さんたちの行動を最適解にすると決めた。緊急事態だからといって、わが身を犠牲にしすぎないことをここに誓います。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。