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第13週「スター発掘オーディション!」 63回〈6月24日 (水) 放送 作・嶋田うれ葉〉



63回はこんな話


コロンブスレコードの社運をかけた新人歌手オーディションに久志が応募することになった。そこへ強力なライバルが登場。豊橋から音の声楽の先生・御手洗がオーディションを受けに上京してきた。プリンス久志 VS スター御手洗が火花を散らす。

「ウインクは危険だよ」


コロンブスの敏腕社員・杉山は今度のオーディションには、バンツマこと阪東妻三郎のような「存在感のある顔立ち」を求めていた。もちろん顔だけでなく実力も伴っていないといけない。「知性と品性とたくましさと3オクターブが難なく出せる天才を求めています」と杉山は裕一に言う。会社の総意と言うが、どうやら自分の趣味らしい。

阪東妻三郎とは、古畑任三郎でおなじみの田村正和を三男とする俳優田村三兄弟(田村高廣、田村正和、田村亮)の父であり、当時の剣戟4大スターのひとり。ただ、ドラマの時代設定の昭和11年は一度、阪妻時代は終わりかかっていて、阪妻プロは解散している。だがその後また復活する。

阪妻を求める杉山は、プリンス久志の顔を見てもなんの反応もしない。淡々と応募書類を受け取るのみ。残念。久志、阪妻には叶わずか。ウインクしなかったからか。でも杉山はポーカーフェイスなので、内心「あら美形(ハート)」とときめいていたかもしれない。

ここで重要なのは、廿日市の記憶のよさ。久志と会ってから4年も経過しているのに「ひらひらシャツ男」と久志を覚えているとはすごい。

音は「ウインクは危険だよ」と警戒している。なぜなら、音楽学校時代、誰彼構わずウインクして女子生徒を虜にする罪な男だったから。歌の仕事がなく、いつのまにか芸者になった藤丸にも「僕がコロンブスに所属した暁にはデビュー曲のB面でデュエットしよう」とウインクして、ふたりだけでおでん屋を出ていく。少年の頃はあれほど利発だったのに、なんでこんなに軟弱になったのか……。

「回っちゃ なんでダメなのよ」


久志は受かる気満々だったが、音の先生・御手洗がオーディションを受けにやって来て、事態は急変する。
御手洗は、最後のチャンスと思い、声楽教室を辞めて東京にやって来た。

簡単に、御手洗のことを振り返ると、トランスジェンダーの音楽教師で、偏見に傷ついたことを抱えながらも明るく振る舞っている。ドイツ留学経験もあり、音に音楽を教えていた。東京に出てきた音は、久志に真っ先に根本的な欠点を指摘されたほか、どうも基礎的なところができてないようであったが、御手洗はいったい何を教えていたのか気になるところでもあった。

喫茶バンブーで初めて出会ったふたりは「プリンス佐藤久志です」「スター御手洗です」と自己紹介。バッチバチに火花を散らしはじめる(CGで目からビームを出す場面もあった。これは後に裕一のモデル古関裕而が怪獣映画の音楽も作る暗示であろうか)。


久志「何を回ってるんだ」
御手洗「回っちゃ なんでダメなのよ」
とメンチをきる。

華「スターとプリンス、へんなの」
音「素敵だね」

クローズZEROや HiGH&LOWなどで不良たちが互いに牽制しあう場面がよくあるが、久志と御手洗のそれは新しい喧嘩の形である。
それはこれだけでなく、朝、発声練習によってバトルする。この一連のアイデアは良い。63回、もしくは13週はこのアイデアがすべてかもしれない。

正直なところ、おでん屋でいつもの三羽ガラスがつるんでいるところに藤丸が来た場面では、鉄男も裕一も見せ場がなく、もっと4人で会話を回してほしかったし、自宅で音とそのときの報告をしているときの裕一が、人形をもってウインクの練習をしているのは、人形を使わないと間がもたないのだろうと感じさせた。

冒頭の「字が違う」「字が違う」と久志の履歴書作業に茶々を入れるのも無意味。これはあかんか……と思っていたところの、ミュージカル俳優対決。山崎育三郎と古川雄大の“ミュージカル俳優”という個性を生かして面白く見せた。

ミュージカルファンとしては、こういうふうにミュージカル俳優を笑いにされるのは好まないかもしれないが、彼らはこうしてミュージカルファンを増やしていこうと努力しているのだと思うから、応援しようではないか。とりわけいま、コロナ禍でミュージカルもたくさん中止になっている。

本来、山崎と古川は帝国劇場で「エリザベート」のトートをダブルキャストで演じるはずだったのが中止になってしまった(大阪、名古屋、福岡では井上芳雄も入ったトリプルキャスト)。テレビドラマだけでも山崎、古川の対決が見られてよかったと思いたい。

やっぱり八丁味噌


プリンスとスターは古山家で、別々に夕飯を食べる。
裕一と久志、音と華と久志と別れて、互いに敵の情報を得る。

御手洗はお財布をすられたため、古山家に泊まることに。古山家謎の2階を使わせてもらうことになる。
ここで食べ物ネタ。裕一の好みの白味噌を使っていることを咎める豊橋の御手洗。そのかわり納豆は許していないと音。夫婦はこのように譲り合っているのであった。でも、御手洗のために八丁味噌にしてたちまち裕一に文句を言われる。

食べ物ネタは無難であるが、財布をすられた御手洗の古山家への頼り方が甘えキャラになってしまっているのが気になる。もっと誇り高い人だったと思うのだが……。久志も御手洗もずいぶんキャラ変してしまった。まあそれはそれでいいけれど。山崎と古川の俳優としての個性とパワーで押していくほうにかじを切ったということだろうから。

そしてふたりは書類選考には合格。はたしてどうなる?
(木俣冬)